ミッドナイト・ブルー/ケニー・バレル

   

テナーが演奏に厚みをもたらす

テナーサックスが抜けた軽妙なギタートリオ+コンガの《ミッドナイト・ブルー》に若い頃は魅せられていた。

スピード感のある演奏だったか上に、ケニー・バレルのしゃかりきコードカッティングも、なんだかスリリングだったからね。

それに加えて、その1曲前のギターソロの《ソウル・ラメント》も哀感とバレル特有の憂いが込められていて好きだった。

つまり、両曲ともテナーサックスが抜けた演奏だ。

しかし、今では違う。

やっぱりテナーが加わった演奏が良い。

特に1曲目の《チトリンス・コン・カーネ》が良い。

軽やかな《ミッドナイト・ブルー》とは異なる重くさてコクがある。
フィーリングも、まさに漆黒の夜を彩るかのようなミッドナイトな演奏だ。

だから良い。

スタンリー・タレンタインのテナーが重量感を付加し、レイ・バレットのコンガが重さにうねりをもたらしている。

独特のこぶし回しを効かせたタレンタインのテナーが、まさにブルージーな夜の気分を盛り上げており、非常にバレルのギターとは相性が良い。

いや、コールマン・ホーキンスやティナ・ブルックス、ジュニア・クック、フランク・フォスター、J.R.モンテローズ、グローヴァー・ワシントン Jr.など他のテナーサックス奏者とも共演し、そのどれもが素晴らしい演奏を残しているバレルのこと、タレンタインのみならず彼はテナーサックス奏者と相性が良いのだろう。

おそらく、アルフレッド・ライオンはそのことをわかっていたに違いない。

だから、ブルーノートのバレルのリーダー作にはギタートリオがないのだろう。
もちろん、『イントロ・デューシング・ケニー・バレル』のような「限りなくギタートリオに近いフォーマット」のアルバムもあるが、このアルバムの演奏のほとんどにコンガが加わっている。
このアルバムの《ミッドナイト・ブルー》のように。

ジャズ、というよりもブラックミュージック、ブルースやソウルのフィーリングを求めたライオンならではの人選、布陣は、結局のところ、演奏に厚みをもたらし、結果的にバレルのギター単体のプレイの素晴らしさはもとより、それ以上に、音楽としての価値の底上げに貢献したのではないかと考えられる。

だからこそ、1曲目の《チトリンス・コン・カーネ》が染みてくるのだろう。

記:2019/12/09

album data

MIDNIGHT BLUE (Blue Note)
- Kenny Burrell

1.Chitlins con Carne
2.Mule
3.Soul Lament
4.Midnight Blue
5.Wavy Gravy
6.Gee, Baby, Ain't I Good to You
7.Saturday Night Blues

Kenny Burrell (guitar)
Stanley Turrentine (tenor saxophone)
Major Holley (bass)
Bill English (drums)
Ray Barretto (conga)

1963/01/08

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