ワルツ・フォー・デビー/モニカ・ゼタールンド

   

「BIG BOY」のマスターのお気に入り盤

神保町のジャズ喫茶「BIG BOY」のマスターは、このアルバムのこと、ほんっとーに好きだ。

まだ、彼がジャズ喫茶を開店する7~8年前に、私はこのアルバムを林さん(現マスター)からプレゼントされた。

「モニカ・ゼッターランド(セッテルランド)っていいですよね?僕大好きなんです」

「す、すんません、誰ですか、それ?」

この一言で、林さんは、翌日CD屋に行って『ワルツ・フォー・デビー』を買ってきて、これ聴いてください、聴いてください、聴け、聴くんだ!とってもいいんだから、だってピアノ、ビル・エヴァンスだからっ!と、私にCDをくれたのだ。

《ワルツ・フォー・デビー》や、《カム・レイン・オア・カム・シャイン》といったエヴァンスお馴染みのナンバーが歌われていたり、ビル・エヴァンスが照れながら《サンタが街にやってくる》もラストに入っていたりと、なかなか親しみやすい内容だ。

猛烈にかけまくる

普通に好きになった。

ただ、あっさり気味なテイストは、たしかに日本人好みと言えるかもしれないが、ガツンとくる要素があまりないので、自然とあまり聴かなくなってしまった。

ところが、今年になってから、このアルバムをもう一生分聴いてしまったのではないかと思うほど、たらふく聴いて、今ではゲップが出ている。

というのも、かけるんだよねぇ~マスターが。

「BIG BOY」を開店したのが、昨年末だから、じつに半年強の間、私が「BIG BOY」に行った中で、5回に3回は聴いているのだ。

あと、アンバートンの『ブルー・バートン』。


Blue Burton

これも林さん大好きでさ、1日に6回もかけたことがあるのだという。

確かに、このアルバムいいけど、1日に6回は飽きないか???

全然飽きないんですよぉ~

……はぁ、そうですか。

嬉しそうなマスター

アン・バートンもモニカ・セッテルランドも、林さんは、ニッコニッコしながら、ほんっと~に、嬉しそうな顔をしてかけるんだよねぇ。

イジワルないい方をすると、若い女性を前に、鼻の下を伸ばしたデレデレとした初老紳士の姿。

ちょっと呆けた表情は、きっと頭の中がお花畑状態なのだろう(笑)。

でも、なんだか、とても微笑ましい。

好きなものを前に、ほんとうにいい表情をしている人を見ると、こちらの心もほのぼの気分になってくる。

……ただ、あと半年はモニカもバートンも聴きたくないが(笑)。

モニカのために店を開店した?!

林さんの嬉しそうな陶酔顔を見ていると、林さんは、モニカを大きな音で心行くまで聴きたいがために、経営していた会社をたたみ、日本バーテンダー協会のスクールに半年通い、数ヶ月もの間ジャズ喫茶をオープンさせるための店舗探しをし、やっと見つけた神保町の一等地の地主が「水商売なら貸さないよ」と言われたことにもメゲずに、熱意のこもった企画書を書きまくってプレゼンし、「BIG BOY」という店をオープンさせたんじゃないかと思うほど。

「BIG BOY」開店までの長い道のりと、並々ならぬ苦労は、すべてモニカのためにあったんじゃないかと思ってしまう。林さんのモニカ・セッテルランドをかけているときの表情を見ていると。

モニカが好きな方、どんなアルバムなのか興味をもたれた方、マスターの恍惚の表情を観察したい方(笑)は、是非、神保町の「BIG BOY」に足を運んでみましょう。

リクエストすれば、店でかかっているレコードをストップしてでも、かけてくれますよ(笑)。

さらに、一言「いいですねぇ」と言ってみましょう。

きっと、アイスティーかビール一杯ぐらい、無料で出してくれるかもしれないよ。

記:2007/08/06

album data

WALTZ FOR DEBBY (Philips)
- Monica Zetterlund

1. Come Rain Or Come Shine
2. Jag Vet En Dejlig Rosa
3. Once Upon A Summertime
4. So Long Big Time
5. Monicas Vals
6. Lucky To Be Me
7. Vindarne Sucka Uti Skogarna
8. It Could Happen To You
9. Some Other Time
10. Om Natten

Monica Zetterlund (vo)
Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Larry Bunker (ds)

1964/08/29 Stockholm, Sweden

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