17歳の風景/試写レポート

      2016/05/11

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17sai

2000年に岡山県で、17歳の少年が母親バットで撲殺。

その後少年は、自転車でひたすら北に向かい、事件発生から16日後、1300km離れた秋田県で少年は逮捕された

……という予備知識をまったく持たずに観たのが、かえって幸いした。

おそらく、事件についての多少なりともの関心を抱いた上で、この作品を見たら、
「何も説明してないじゃん」
「何も答えてないじゃん」
という不満を抱えていたに違いない。

「十七歳の“風景”」。

これは、文字通り、風景の映画だ。
少年と少年の風景を描いた映画だ。
しかも、暴力的なまでに鋭い風景の映画だ。

エッジの利いた、まるで津軽じょんがら節のような、友川カズキのギターとヴォーカルは、こちらのぬるま湯につかった神経を、曇りガラスを引っ掻くように逆撫でする。

暴力的な風景と、鋭いサウンドが合わさり、受け手のマインドを深くエグる。

人によっては、音と映像による暴力と感じるかもしれない。

富士山、渋谷のセンター街、三国峠、六日町、柏崎、象潟、男鹿半島……。

少年の目に映る風景は、どこまでも殺伐としている。

冒頭に登場する富士山と少年の映像は、インパクトだった。

あんなに攻撃的な富士山は見たことがない。
殺伐としすぎている。あの富士は。
まじで「富士に殺されるかもしれない」という恐怖感を抱いた。

母親殺害の事件の意味とか、理由とか、なぜ北へ自転車なのかといった、そういうことなど一切考え(られ)ずに、私はただ、少年とともに、荒涼とした風景の中を旅していた。
不意に、アイラーの『スピリチュアル・ユニティ』や、阿部薫と高柳昌幸による『解体的交感』から受ける同質の肌触りを感じた。

彼らの放つ打撃力の強いサウンドが、映像とシンクロした。

なぜ、彼は自転車で北に向かったのか?

なぜ、彼は一日100キロ近くも自転車で走り続けたのか?

このような問いには、この映画は応えてくれない。

あえて思考停止をしているようにも感じるし、最初から結論を出すこと自体を放棄しているかのようにも感じる。

監督が感じたドロドロを、グチャッと丸めて、鑑賞者に投げつけているようにも感じる。

この力強い映像を前にすると、アイラーがなぜテナーサックスを吹くのかを問うのが無意味なように、事件や少年の内面に意味を問うことがバカバカしくなってくる。

これは犯罪映画ではない。
少年の犯した犯罪は、あくまでモチーフなのだ。

少年の眼前に広がる荒涼とした風景や、旅先で出会った人々と我々はどう対峙するか。
若松監督は、きっと我々に映像による挑戦状を叩きつけているのだ。

不快指数は高いが、インパクトもまた高く、さまざまな角度から我々の五感を挑発する作品だ。

観た日:2005/06/20

movie data

十七歳の風景
監督:若松孝二
出演:柄本佑/針生一郎/関えつ子/小林かおり/井端珠里 /不破万作/田中要次/鳥山昌克/丸山厚人
プロデューサー:志摩敏樹
脚本:山田孝之/出口出/志摩敏樹
撮影:辻智彦
照明:大久保礼司
音楽:友川カズキ
配給:シマフィルム

記:2005/06/22

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