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ジャズと映画と本の日々:高野雲

69 sixty-nine/試写レポート

      2016/04/29

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69 sixty nine [DVD]69 sixty nine

村上龍の人気作品『69』を映画化したもの。

この小説が好きな人にとっては、小説のツボが心地よく映像化されているので、非常に快活かつ面白い内容に感じられることだろう。

この小説が苦手、あるいは嫌いな人にとっては、小説のエッセンスがそのまま映画になっちゃっているので、あまりお勧め出来ない。

私はどちらかというと後者。

面白い、痛快だという評価の高い村上龍の『69』という小説。私の周囲にも爆笑しながら読んだ、面白かったという感想を漏らす人は多い。
しかし、私の場合は、どうしても彼らのように楽しめなかったし、好きになれる内容ではなかった。
村上龍の他の作品は好きなものが多いのだが、『69』はなぜだか苦手なのだ。

「~というのは嘘で」という表現が出すぎでクドいぞ!といった細かいところも気になるが、なんというか、この小説の底流に見え隠れする「俺はおもろい青春をすごしただろ?な?そう思うだろ?感受性とパワーあっただろ?」という、押し付けがましさのようなものが暑苦しく、鬱陶しく感じるのだ。
「昔はワルでワイルドだった」と深夜の飲み屋のカウンターや、クラブのソファでいきがる中年オヤジのメンタリティと変わんねぇじゃん、というのが、この小説に対する正直な感想。
もちろん、そのへんのところは、露骨に表面には出ないようにうまくオブラートはかかっているけどね。
「ま、そうは言っても、このオレだって、若い頃は、そんなにカッコいいものじゃなかったけどね」というフォローがちゃんと後ろについてくるから。
しかし、さらにその後に、オヤジの説教にありがちな、「ま、結局は楽しんだもの勝ちだよ、人生、要はどれだけ楽しんだかってことだから」という説教もくっつきそうな雰囲気もムンムンしているところが暑苦しい。

このような“龍節”が気にならなければ、ストーリー自体はつまんないわけじゃないから、多くの人から『69』は面白い小説だと支持されるのだろう。

もっとも、程度の差こそあれ、押し付けがましさと説教臭さは、どの村上作品にも共通して見られる作風だし、私だってこのテイストゆえに好きな作品もたくさんあるわけだから、これをもってして『69』をクサすつもりはあまりないのだが。ただ、個人的に肌の合わない小説だったというだけの話。

じゃあ、映画のほうはというと、先述したとおり、この小説のエッセンスは綺麗に映像化されている上に、主役の妻夫木聡の演技も軽快でパワフルなので、単純に楽しめる内容なのではないかと思う。
全然退屈しなかったし、映画としては素直に面白い作品だと思う。
実際、いたる箇所で笑い声が試写室に響き渡っていたし(それも女性の笑い声のほうが多かった)、良くも悪くもキャッチーな宮藤官九郎の脚本も、この作品にスピード感を与えている。

ただ、時代設定が1969年のわりには、あまり「69年の時代観」が感じられなかったのはどういうことだろう?
「平凡パンチ」とか「11PM」とか「ベトナム戦争」といった時代のキーワードがちりばめられているにもかかわらず、どうしても私には21世紀の現代劇に見えてしまう。
妻夫木聡や安藤政信といった役者が現代風だからか、それとも、監督も脚本家も69年に青春時代を送っていない若い世代だからか。
もちろん、時代背景云々よりも、快活でコミカルな青春活劇として鑑賞すれば、別に何時代だろうが関係ないことではあるが。

鑑賞後に「けっこう面白かったよね」と彼女に言いたい映画をデートコースにお探しの学生諸君には、迷わず安心してお奨めしたい映画だと思う。

観た日:2004/06/08

movie data

製作年 : 2004年
製作国 : 日本
監督 : 李相日
出演 : 妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、太田莉菜、柴田恭兵、村上淳、井川遥、新井浩文、水川あさみ、加瀬亮 ほか
配給・宣伝 : 東映
公開 : 7/4よりロードショー

記:2004/07/08

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