『○○妻』の「後味の悪さ」について

      2018/08/25

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2015年1~3月期ドラマの感想

2015年の1月から3月にかけてのクールで、一番面白かったドラマといえば(全部チェックしたわけではないんですけど)、『マジすか学園4』を除けば、やっぱり『○○妻』だったかな。

もちろん月9の『デート』も悪くなかったんだけど、いささかコミカル過ぎるというか、見て楽しんでスッキリ。

あとは見事なまでに何も残らない!って感じでしたね。

あと、『ゴーストライター』も毎週面白く見たんだけど、なんだか、ツメが甘いというか、出版社の内情や編集者の仕事内容をよく取材しないまま、あるいはストーリーの流れ上、仔細に描く必要なしと判断されたのか、いささかリアリティの欠いた別の国、別の星での話しのように感じました。

もちろん、各出版社によっても、編集者の仕事内容は大きく異なりますが、どうもドラマ内の出版社は、文芸書や文芸誌を中心に展開しているところにはどうしても思えないところがあります。

あと、田中哲司が、あまり悪者にみえない、なりきれていないというところも、なんかユルいかな?とも感じました。

つまらなくはなかったんだけどね。

水川あさみは適役だったと思いますし。

『銭の戦争』は、展開が急というか、どんどん話が進んでいくので、毎週チェックしていましたが、なぜか最終回だけ録画できていなかったので、これはDVDが出たら見直そうと思っています。

『問題のあるレストラン』。
これも、毎週チェックしていましたが、面白いと思える反面、どうも紋切り型というかステレオタイプな価値観とモラルを視聴者に強要しているかのような脚本、演出でしたね。

それが、脚本家or演出家の力量不足によるものなのか、あるいは「敢えて」余白を設けているのかは分かりませんが……。

もっとも、そこが、このドラマの良いところだったのかもしれません。

いずれにしても、すごく好き嫌いが別れる内容だったんじゃないかと思います。

ただ、このドラマによって、高畑充希と松岡茉優の評価と知名度は確実にあがるでしょうね。

○○妻 ラスト

そして、『○○妻』。

結局、最後は「ひかり」(柴崎コウ)が死んじゃうんで、「後味悪い結末」という声も多いのでしょうが、私は「罪を背負っている」という、ある種平凡な人々の中に投げ込まれたドラマの中では「触媒」的な役割を果たしていた柴崎コウが去っていくという点では、「ドラマ」という作品の終止符としては「アリ」だったのではないかと思います。

捉え方は人それぞれですが、これは東山紀之と柴崎コウのラブストーリーという見方もあるのかもしれませんが、私は、すぐに「手のひら返す」人間の醜さと浅ましさ、そして悲しさ、仕方なさを、うまく表現した作品だと感じています。

何かの拍子で(たとえば人の過去を知ったことで)態度を変え、対応ぶりも豹変する悲しき人間たちの一人一人の姿を描くには、「過去に罪を犯した人間」を登場させるのが分かりやすい。

それを気付かせ、周囲の人間の態度の変化を浮き彫りにさせるための「触媒」が柴崎コウであり、平泉成だったわけです。

夫も、夫の家族も、夫の職場の人間も、病院の患者さんたちも、みーんな手のひら返すじゃないですか。

態度を変えたり、戸惑ったり、反応は様々ですが、知らなかった「昨日」とは同じ態度で接することが出来なくなる。

昨日まで感謝していたくせに、「過去に自分の子どもを死なせた経験がある女」ということを知った瞬間から。

この描写が、それぞれリアルというか、「あなたならどう?」と問いかけられているようでしたね。

ドラマ前半は、東山演じる久保田キャスターのある種、子どもっぽいところに親近感を抱くと同時に、自分のイヤな部分を見ているようで、ちょっと恥ずかしい気分もあったのですが(もちろん久保田正純キャスターと私とでは、まったく人間的にも仕事的にもスケールは違いますが)、後半からは、豹変する人間、豹変せざるを得ない人間の悲しさや愚かさを、見せ付けられているようで、なんだか辛く、切ない気分になってきましたね。

自分自身も、まったく彼ら彼女らと同種の人種だから。

だから、私の場合の「後味の悪さ」は、ヒロインが死んだということではなく、基本は皆善人であるにもかかわらず、時折見せてしまう浅ましさや愚かさのようなところを垣間見てしまうと同時に、それが悲しき人間の姿であり、このことを認めながらも生き続けていかねばならないという現実を突きつけられたような「後味の悪さ」でした。

だから、このドラマが前回のクールの中では、いちばん面白い、というと語弊があるかもしれないけど、注目してみていましたね。

huluでも全話観れるようなので、もう少し時間が経ったら、今一度観返してみようかと思います。

記:2015/03/01

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