『劇場版 マジンガーZ/INFINITY』試写レポート

      2021/02/24

かつての熱き血潮が蘇る

♪魔人ゴー、魔人ゴー!
うーむ、熱き血潮がよみがえってきた!

マジンガーZ。

ジャンボマシンダーに超合金。
懐かしい!

というか、好きなんですよ、マジンガー。
学生時代には、架空のマジンガーを勝手に脳内で妄想してノートにストーリーを書き、さらに社会人になったら、それにサントラをつけてバンドで演奏したこともありますから。

参考記事:ジェット・マジンガーのテーマ

それはともかく、来年1月13日より公開される劇場版『マジンガーZ infinity』は、40代後半から50代のおっさんだったら、ほぼ全員、水木一郎アニキの「マジンゴー、マジンゴー、マジンガーZ!」にノックアウトされることでしょう、いや、ノックアウトされてください。

Z!

オープニングで現れる、スクリーンいっぱいの「Z」の文字。
もうその「Z」を見るだけでも、ああ、俺の心は「Z」に還ってきた~と思っちゃいますから。

もうマジンガーの「Z」の前には、ゼータの「Z」も、ももいろクローバーの「Z」も格というかスケールが違うというか。

そういえば「ももクロ」といえば、ビューナスエースを操縦する、統合軍所属の4人組セクシーアイドルが登場していたけど、きっと、ももクロを意識したに違いないな。

あと「統合軍」といえば「マクロス」を思い出すんだけど、そういえば、今回の「劇場版マジンガー」に登場する軍隊も「統合軍」と呼ばれていましたね。

ちゃんと現代風(?)というか、昭和の時代を単に焼きなおしているだけじゃないんですね、平成によみがえった劇場版「マジンガーZ」は。

乗り込み操縦ロボットの原点

横山光輝原作の「鉄人28号」や「ジャイアントロボ」などは、巨大ロボットもの始祖といえますが、これらのロボットは外部から操縦する兵器でした。「鉄人」はリモコンで、「ロボ」は時計で命令をしていました。

人間がロボットに搭乗して戦うというコンセプトは、おそらくは「マジンガーZ」が元祖でしょう。
原作者の永井豪氏も、ロボットものに新しいコンセプトを吹き込むべく考えに考えた結果「ロボットに搭乗して操縦して戦う」というコンセプトに行きついたとこの映画のパンフレットのインタビューで語っていますから。

しかし、その後「ロボットを操縦する」は、ロボットものにおいては、当たり前になり過ぎてしまった。
あたかも、チャーリー・パーカー以降のサックス吹きは、皆、パーカーのように吹くのが当たり前になってしまったかのように。
(このことは、チャールス・ミンガスが《ガン・スリンギン・バード》という曲で風刺していますね)

つまり、マジンガーZは、後に続く「操縦系ロボット」の元祖であり、原点でもあるのです。

映画のキャッチコピーが「原点にして頂点」とありますが、そうそう、まさに原点なんですね。

ゲッターロボ、ガンダム、エヴァ、そして原点回帰

その後に続く、エポックメイキングなヒーローロボットといえば、ゲッターロボでしょうね。
これは、「合体」という新しいコンセプトを確立させた画期的な作品ですが、あ、そういえば、ゲッターロボも永井豪でしたね。

しかし、ゲッターロボの合体を実際に立体で表現しようとすると無理がある。

実際に玩具で再現可能になった画期的な合体ロボットは「コンバトラーV」の登場を待たねばなりません。

あと、それとは前後しますが、変形ロボットという概念も生まれましたね。
そう、勇者ライディーンのゴッドバードね。
この超合金は、皆、持っていたなぁ。

で、基本として、主役が操縦する合体か変形をするロボットアニメが昭和の時代は数え切れないほど登場したのだけれども(あたかも50年代のハードバップのように)、この風潮を打ち破ったのが「機動戦士ガンダム」だと思っております。

主役メカのガンダムは、操縦者が乗る飛行機(コアファイター)が「変形」して、上下のパーツと「合体」するという、変形+合体の要素はあるものの、エポックメイキングだったのは、地球を征服しようとする悪の手から守るロボットという設定ではなく、戦争の中の「兵器」という概念が当時は新しかった。

その後、さらにミリタリー色の強い「太陽の牙ダグラム」や「装甲騎兵ボトムズ」などが登場しますが、これはガンダムがあってこその作品でしょうね。
そういえば、ミリタリーよりもさらに泥臭い「建機」としての概念をロボットに持ち込んだ『戦闘メカ ザブングル』は個人的には大好きな作品でした。
また、これらと同時期に、「戦艦」の要素と「変形」の要素と、さらに「スペースオペラ」の要素がミックスされた「超時空要塞マクロス」という名作も生まれております。

それから時を経て、ロボットではないけれども、人が中に乗って操縦する人造人間エヴァンゲリオンという汎用人型決戦兵器という概念も登場しました。
エヴァもメカ的な面でももちろんそうですが、それ以外にも後世のアニメに多大なる影響を与えまくったエポックメイキングな作品でしょうね。

無理やりジャズに例えれば

このように、ルイ・アームストロングのような力強くてシンプルな「マジンガーZ」からジャズが、いやロボットものが始まり、変形や合体など、ジャズでいえばハードバップやモード奏法のような概念が生まれ、さらには、ミリタリー色が強いファンキージャズやジャズロックのような概念が生まれ、さまざまな要素がごった煮なマクロスやエヴァのような作品が新主流派的というか、いや、それ以降の多様化したジャズのように百花繚乱のロボットアニメ時代が20世紀末ぐらいから続いておりまして、現在はロボットアニメのポストモダン時代ともいえる時期でしょう。
最近の多様化したジャズをなかなかひとくくりに定義するのが難しくなってきているように。

そんな進化と変遷を遂げてきて、「ロボットアニメなんでもござれ」な時代に、ドドーンと原点回帰したのが、「マジンガーZ」なのではないでしょうか。

エヴァの影響

ロボットアニメの元祖に近いマジンガーZは、後に登場した、ガンダムをはじめとしたロボットアニメに多大な影響を与えていつつも、今回上映されるリニューアル版は、本作品から影響を受けたロボットアニメから、逆に影響を受けている箇所も随所に散見されています。

たとえば、劇中に登場する軍隊は統合軍といいます。
この響き、『超時空要塞マクロス』を思い出しますね。

また、富士山麓にある光子力都市の風景なんかは、エヴァのネルフがある第三新東京市を思い出さずにはいられない。
そうそう、アニメで電信柱や鉄骨や建機類がカッコ良く描かれるようになったのって、それって、エヴァ以降のアニメだと思うのですが、都市や建機の描写がカッコいいのは、明らかにエヴァの影響でしょう。

あと、操縦席などのモニターにディスプレイさえっる文字も、エヴァ以前はほとんど英語だったんだけど、エヴァ以降は漢字(日本語)が使われることが多くなった。
『宇宙戦艦ヤマト2199』なんかもそうでしたよね。
劇場版「マジンガー」も、例に漏れず冒頭で大活躍をしていたグレートマジンガーの操縦席にも「承認」などの文字が表示されておりました。

レイ的、長門的キャラ

それと、今回の新キャラクター、リサの存在なんか、もろエヴァの綾波レイですな。
というより、綾波的キャラ、あるいは『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希的なキャラは「ポストエヴァ」のアニメには登場しまくりな感があります。

髪が青系、もしくは薄青系でショートカット、寡黙だが人間の存在を超える何か(力)を持っているというような設定の女の子のキャラが多い。
『デート・アライヴ』の鳶一折紙(とびいち・おりがみ)あたりになると、もはや、アニメ作品の中においては綾波的造形の女の子は、「寡黙・何かを秘めている・不思議なキャラ」の記号と化してしまったなぁと個人的には思ったものです。

そして、劇場版マジンガーにも、綾波的造形のキャラが登場するんですね。
もっとも、綾波や長門のように寡黙ではなく、むしろ明るく元気で快活に喋りまくるんですが、謎のマジンガーへのアクセスコードを保有するコンピューター人間という設定は、なんとなく長戸的ではあります。

長門は宇宙人、というか情報統合思念体が作ったロボットという設定でしたからね(対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース)。

このように、エヴァの直接的影響なのか、間接的影響なのか、孫引き影響なのかはわかりませんけれども、とにかく、エヴァ以降のアニメは、それ以前のアニメと俯瞰して比較すると、明らかにテイスト、作風ががらりと変わっているわけで、今回の劇場版『マジンガーZinfinity』も例に漏れず、といった感じです。

自分が影響を与えた後輩から逆に影響を受ける(後輩が作り出した新しい価値を積極的に取り入れる)。

これって、まるでジャズでいえば、デクスター・ゴードンですな。
彼は、自分が影響を与えたソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンの要素を謙虚に演奏スタイルに取り入れてましたから。

オジさん興奮必至の要素が満載!

そんなわけで、今回の劇場版『マジンガーZ infinity』は、いたるところに現代風なアニメの要素が盛り込まれつつも、それはあくまでディティールの面において。

メインのストーリーやバトルは、非常に骨太かつ単純明快。
こせこせした小細工なしの、昭和的骨太ガチンコバトルが楽しめるので、昭和の単純明快だった頃のロボットアニメが好きなオジさんにも十分に楽しめる内容であることには間違いない。

光子力ビーム、ブレストファイヤー、ロケットパンチ、大車輪ロケットパンチ、アイアンカッター、ミサイルパンチ、ルストハリケーン、スクランダーカッター、サザンクロスナイフ……。

いちいち武器や技の名前を連呼しながら豪快に惜しげもなく発射しまくるマジンガーの雄姿は、ヘタなジャズを聴くよりもカタルシスっす。

さらに、後半の展開なんかは『ドラゴンボール』好きにも、ね。
詳しくは書かないけど、あれってもろ悟空vs魔人ブーの戦いだよね。

『ドラゴンボール』にしたって、コミックの連載が終わったのが1995年だから、リアルタイムで読んでいた人はオジさんの領域に足を踏み込んでいる人も少なくないでしょう。

そういった意味においても、劇場版『マジンガーZ』は、オジさんが喜ぶアニメに違いないのであります。

記:2017/11/13

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>>劇場版マジンガーZ INFINITY 2018/01/13 日本公開

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