家族のかたち/試写レポート

   

家族のかたち [レンタル落ち]家族のかたち

劇中後半に流れる、ノラ・ジョーンズが効いている。

ファースト・アルバム『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』に収録されている《シュート・ザ・ムーン》という曲だ。

ノラ・ジョーンズノラ・ジョーンズ

正直言って、この曲が流れなければ、私にとって、この映画は退屈かつ数ヵ月後には綺麗さっぱり忘れらてしまう映画の一つとなっていたことだろう。

感情を込めすぎずに、あくまで淡々と抑制した歌声に終始するノラの歌唱だが、彼女の歌は、周囲に独特な雰囲気を及ぼすし、ノラの曲が流れた瞬間、映画の雰囲気が一瞬にして変わってしまうのは、やはり彼女の音に「力」があるからにほかならない。

まるで、部屋の中の淀んだ空気を入れ替えるために、窓を空け、新鮮な空気が入り込んだときのような気分。

ちょっと前に『離婚弁護士』というドラマがあったが、このドラマでも劇中後半の物語の転換となる箇所で、ノラの歌が効果的に挿入されていた。
彼女の歌が流れ出たとたん、ドラマの中の空気が入れ替わるのだ。
ゆえに、1話完結のドラマの終盤に向けての、起承転結で言えば、ほどよい“転”の部分の役割をしていた。

『離婚弁護士』というドラマは、私にとっては100点満点でいえば55点ぐらいのドラマだったが、ノラの歌のために20点底上げされ、一気に75点ぐらいの点数にアップされていた。

それと同様、ストーリーにしろ演技&演出にしろ、私の中では60点ぐらいな印象の『家族のかたち』も一気に80点にアップしちゃったのだから、劇中に流れるBGMの選曲はあなどれないし、それだけノラの音楽の効果は大したものだともいえる。

さてさて、肝心な映画のお話。
一言で言ってしまえば、“雨降って地固まる”なお話。
舞台は、イギリスのミッドランドはノッテンガムという町。

人は良いが気が弱い主人公のデックは、恋人のシャーリーと彼女の娘と一緒に暮らし、楽しい家庭を築くことを望んでいる。

血はつながってはいくても、娘のマーリーンも、家出した実の父のジミーよりは彼がお父さんならいいなと思っていた。
ある日、家出した父ジミーが町に戻ってきて…。

平和に見えた彼らの生活の中に突然訪れた小さな嵐。そして彼らの選択は……?

軽くもなく重くもなく、さりげなく“理想の家族のかたちとは何か?”というテーマを我々につきつける映画だ。

人物描写がとても丁寧、かつ、イギリスの一地方都市の空気感が見事にスクリーンに再現されている映画といえる。
子役のフィン・アトキンスの演技がポイント高い。何種類もの不機嫌な顔を作り出す表情の変化には特筆もの。

ほのぼのと暖かい気持ちになれる映画だった。

観た日:2004/06/01

movie data

製作年 : 2002年
製作国 : イギリス
監督 : シェーン・メドウス
出演 : リス・エヴァンス、ロバート・カーライル、シャーリー・ヘンダーソン、フィン・アトキンス、キャシー・パーク、リッキー・トムリンソン ほか
配給・宣伝 : クレストインターナショナル、エレファント・ピクチャー
公開 : 2004/07/10公開

記:2004/07/28 

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