カフェモンマルトル

text:高野雲

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「あまちゃん熱」がまだ冷めない。

      2017/05/31

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sanriku

あまロス症候群

どうやら私、典型的な「あまロス」らしい。

「あまロス」とは、「あまロス症候群」の略で、その意味は「2013年度上半期放送のNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の放送終了後に視聴者が覚える喪失感の深さを、ペットロス症候群にかけて表した造語」(kotobankより)だ。

先日も、あまちゃんのDVDを全156話をぶっ通しで3日ほどかけて観てしまった。

その際は、1.5倍速で再生して観たのだが、この速度で鑑賞すると、さらに躍動感がアップして、ただでさえクドカンの情報量多くスピード感のある脚本の内容が、さらに拍車がかかって脳のなかをグルグルとかけめぐり、まるでチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーが繰り広げた複雑かつ高速テンポで高度でありながらも熱狂的に熱いビ・バップの演奏を聴いているかのような興奮を脳内で味わうことが出来た。

当時の音楽記録媒体(=シングルレコード)の収録時間の制約の関係で、演奏時間の短いものが多いバップの演奏に比べ、あまちゃんのDVDのボックス1つ分を観終わるには、たとえ1.5倍速であっても数時間を要する(通常速度で、だいたい半日かかる)。

ということは、数時間の間、脳の中を躍動感のあるストーリーがものすごい勢いでグルグルと駆け巡り、さらには目も疲れるというオマケもつくのだが、その疲れが妙に心地よいのだ。目薬は必須だけど。そして、随時チョコで脳に栄養を補給しながら、集中力を持続させるためにコーヒーを間断なく飲み続けていたため、おかげで何となく体重が増えたような気がしないでもない。

うーむ、ここまで書いて客観的に読み返してみると、かなりの重症ですな。
┐(´~`)┌
↑この顔文字の表情って「無頼鮨」の梅頭大将(ピエール瀧)の表情に似てますネ。
↑と書いているあたりからも、自分の「あまちゃん」熱中度に呆れております。



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北の国から

私がこれほどまでにドラマに熱中したのは、おそらく『北の国から』以来のことだと思う。

『北の国から』の本編はリアルタイムで観ていなかったのだが、社会人になって、北海道に何度か出張しているうちに仲良くなった取引先の女の子たちと飲みに行くたびに、居酒屋での会話が必ず『北の国から』になり、彼女たちだけで盛り上がっていたので、「これは観ねば会話についていけない」と感じ、レンタルビデオ屋で最初は数巻借りた程度だったのだが、面白くて結局、全話分を追加でレンタルして一気に鑑賞してしまった。

それでも飽き足らずに、スペシャルドラマの「'83冬」「'84夏」「初恋」「'89帰郷」「'92巣立ち」「'95秘密」も貪るようにして鑑賞し、ようやく「'98時代」からリアルタイムで観れる段階に追いついた。

そして、今だに時折思い出したようにレンタルDVD屋で好きな回をチョイスして借りては観ている。

ちなみに、特によく借りて観ているのが

「子供がまだ食ってんでしょうが!」

の『'84夏』と、

「見てみろ、ピン札に泥がついている。お前の親父の手についていた泥だろう。オラは受け取れん。お前の宝にしろ。貴重なピン札だ。一生とっとけ」

の『初恋』で、うちの子供もこの2作が好きなようだ。

『あまちゃん』と『北の国から』の共通点と相違点

さて『北の国から』と『あまちゃん』。

この2つにハマる自分っていったいなんなんだろう?
と少し考えてみたら、

1、主人公が親に連れられて東京から親の故郷(地方)で生活することになる。

2、親の故郷は東京よりも北の地方である。

3、主人公は親の故郷に馴染むが再度上京する。

4、主人公は東京での生活をやめ、再度帰郷する。

と、滅茶苦茶大雑把ではあるが、主人公を描く舞台の変遷は同じだということはコジつけることは出来る。

しかし、当然ながら主人公の「移動」の受け止め方と、それに伴う行動パターンはまったく違う。

1、『北の国から』の主人公(以下、純くん)は、親の故郷(富良野)に馴染み順応するのに時間がかかったが、『あまちゃん』の主人公(以下、アキちゃん)は、その日のうちに地元(北三陸)に馴染み、すぐに順応してしまった。

2、純くんとアキちゃんの上京のモチベーションが違う。

3、東京での生活。純君は髪を染めバイクに乗りと、富良野とは随分と違う生活スタイルになり、しかも1年半帰郷をしなかった。一方、アキちゃんの場合は、高校に通いながらアイドルグループの下積みや、女優の付き人と生活環境が激変したにもかかわらず、その激変ぷりが感じられないほど、アキちゃん自身のキャラはブレずに本質的な変化はまったくなかった。

などなど、主人公のキャラクターの違いか、あるいは主人公が持つエネルギー量の差か、昔の村上龍がよく言っていた「女は強い」なのか、はたまた脚本家の個性の違いか(たぶんそれが一番大きい)、同じ「東京→地方→東京→地方」と生活拠点が変われども、心の中での受け止め方は対極にあるといっていい。

『北の国から』は重く、『あまちゃん』は気持ち良いほどに軽い、いや「軽やか」なのだ。
たぶん、この似て非なる(というか両極端な)二つのドラマが、自分の中では両輪としてうまくバランスを保っているのかもしれない。

あまちゃん 動画

さて、まったく話変わって、YouTubeにアップされている幾多の「あまちゃん」動画の中で、もっともよく観たのは、やはり2013年末の「紅白」の映像だろう。

もはや「紅白ジャック」と揶揄されても仕方がないくらいの尺の長さだ。しかし、あまちゃんファンにとっては涙が出るほど嬉しい企画、そして内容でしたね。

あまちゃん 紅白

私は紅白が放送されている間は、テレビを観れない場所で忘年会に参加していたので、年が明けてしばらくした後に、紅白ではじつはこんなことが行われていたのだということを知ったのはYouTubeでだった。

内容は多くの「あまファン」はご存じのとおりだと思うので書かないけれど、まだ観ていない人は一見の価値、いや、二~三見の価値はあると思う。

いつ削除されるかわからないので、ここには貼り付けませんが、Youtubeで「あまちゃん・紅白」と検索すればすぐに出てくるはずだし、もし出てこなかったとしたら、残念!きっと削除されてしまったのでしょうと諦めるしかないですね~。

この時の模様もソフト化して販売すれば、きっと私みたいな人は買うのではないだろうか。

あまちゃん キャスト

『あまちゃん』の魅力の一つに、個性豊かなキャストがある。

とにかく、一人ひとりの個性、キャラが強力で(強烈な人も多い)、しかも「この人は〇〇の人」と短い一言に集約できるほどわかりやすいキャラ設定が施されたところも、このドラマの成功の大きな要因だと思う。

一人ひとりの個性の魅力を書き出すとキリがないので割愛するが、これだけ多くの登場人物を魅力的な人物に造形した宮藤官九郎のセンスは素晴らしいと思う。おそらく役者一人ひとりの個性も吟味したうえでの配役とキャラ設定だと思うが、だとすると、これはもうデューク・エリントン楽団におけるエリントンの作曲とアレンジに近いものを感じざるを得ない。

というのも、エリントンは、自分の楽団員の音色や個性までをも頭に入れた上でアレンジを施し、色彩豊かなアンサンブルに仕上げていたからだ。時折生じる不協和音や濁りの成分までをも楽曲の魅力として包括してしまう力量、これをそのままドラマの脚本に置換して考えれば分かりやすいと思う。

もちろんクドカンの脚本はエリントンの音楽ほど重厚長大でもないし(むしろポップ)、芸術家チックな佇まいでもないので(むしろライト)、クドカンは脚本界のエリントンであるといいたいわけではない。しかし、最初に譜面(脚本)ありきで、役者(演奏者)がそれに近づけるよう努力させるのではなく、役者(演奏者)ありきで、物語のディティール(アレンジ)を組み立てていったのではないかと思わせるところは、もしそれが本当だとしたら、エリントンのバンド運営に近いものを感じるのだ。

ちなみに左上に貼ったCDジャケットは、最高のメンバーを擁していたと言われる時期のエリントン楽団のオススメCDです(・∀・)b。興味のある方は、ぜひ聴いてみて下さい。演奏者の「個性」という素材を知り尽くし、適材適所に配置をし、料理をすると、こんなにも素晴らしいサウンドが生まれるということが分かると思います。そして、まったく同様なことを私は『あまちゃん』に感じているのです。

あまちゃん 続編

さて、多くのファンから切望されている『あまちゃん』の続編だが、ネットには様々なことが書かれてはいるが、決定打となるような情報はなく、今のところ具体的な話にはなっていないようだ。ただ、以前も朝ドラの『ちゅらさん』が「4」まで続編が制作されたように、天野アキの「その後」を描いたストーリーを作って欲しいと思っている。ま、今年は無理でも、来年あるいは再来年でもいいので、気長に待っていたい。

それまでの楽しみとしては(まだ続編をやると決まったわけでもないが)、やはり「シナリオ集」を読むことなんじゃないでしょうか?

え? ストーリーは知っているのに何をいまさらシナリオ集?
それはですね、シナリオ集を読みながら、ときおりDVDを再生しながらシナリオをめくるんですよ。すると、どのシーンがアドリブなのか、俳優の皆さんは、どう言い回しや感情をこめているのかが、ありありと分かるんですね。

これ、結構楽しいですよ。重箱の隅をつつく楽しみ方かもしれませんが、ただ観るだけでは気づかなかった発見もたくさん出てくると思う。
「続編」を待ちきれない「あまロス症候群」の人にとってはささやかでありながらも意外とハマる楽しみ方なんじゃないかと思うので、一度お試しあれ!

NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部 (単行本)完全シナリオ集 第1部

記:2014/05/06

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