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ジャズと映画と本の日々:高野雲

ソルトの死に様は、松田優作の死にっぷりに匹敵するカッコ良さかもしれない

   

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『マジすか学園5』の1話ラストで、いきなり銃弾3発を喰らって死亡したソルト(島崎遥香)ですが、その死に様は、なかなかカッコの良いんじゃないかと個人的には思いました。

スローモーションの中、あの目の演技で衝撃度を高めているところが、なかなかなのです。

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死に様のカッコ良さといえば、松田優作を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

『太陽にほえろ!』のジーパン刑事の殉職シーン。

「なんじゃこりゃ~!」のセリフで有名ですが、私の場合は、どちらかというと『探偵物語』の最終回の死に様のほうがカッコいいと思っています。

松田優作が演じる私立探偵・工藤ちゃんが暴漢にナイフで刺されるところが(足の長さも含めて)カッコいいと思っています。

しかも、本編の事件とは関係のない、単なるアタマがイカれたスーパーの店員が、いきなりナイフを腹に刺すのです。

最終回の前半で、スーパーのレジで工藤ちゃんに文句をつけられたことを根に持った男が、工藤ちゃんに襲いかかるんですね。

死んだ仲間の復讐を完遂し、一件落着と思っていた矢先の出来事。

しかも、暴力団の組員のような「強敵」ではなく、想定外のザコキャラにやられてしまうという脇の甘さが良いのです。

その後のラストシーンでは表参道に傘をさして登場するので、工藤ちゃんの生死は不明ですが、いちおう死んだものと解釈すると、「死に様」としては、なかなかのものです。

最終回の松田優作は、いままでのコミカル路線とは打って変わってシリアスな面が前面に出ていてカッコいいので、是非見てみてくださいね。

それともう一人、「死に様」がカッコよかった人はといえば、沢田研二かな。

歌のプロモーション映像、何の曲か忘れてしまったんだけど(たしか《サムライ》か《LOVE ~抱きしめたい~》だったか……)、小学校の頃に一度だけ何かの歌番組で見たときに、沢田研二が撃たれて倒れるシーンもカッコよくて記憶に残っていますね。

カッコいい死に方をした男は(あくまで私にとってはですが)、いずれもオトコ。

撮影された時代は、いずれも70年代。

いずれも「昭和」。

しかし「平成」の現在、2010年代は、女性、しかも刑事でも探偵でもない、単なる(?)ヤンキーの親分格(=ソルト)が、カッコいい死に方をしているというところが興味深いですね。

以前、マジすか学園とセロニアス・モンクにも書きましたが、アナログ感覚でヒリヒリとした「痛み」を伝えてくれるのは、70年代は刑事であったり、探偵であったり、あるいはヤクザだったのでしょうが、どうも現在の日本のオトコのヒーローはツルッとしたデジタル感覚というのかな、「血」であったり「汗」であったりと、泥臭い「肉体」を感じさせる要素って希薄になってきているような気がします。

元・仮面ライダーフォーゼのツルッとした福士蒼汰であったり、ツルッとした小顔の向井理だったりと、このようなテイストが、今の時代の女性が求める理想のオトコなのでしょうか。

それに対して女性はどうなのかというと、「カッコいい北川景子」が炸裂しまくる『探偵の探偵』や、『マジ女』のように、オンナたちのほうが血と汗を流しまくって必死に生きているような気がします。

眉が濃くて、ギラギラしていて、汗ばんでいて、髪を振り乱しながら車を追いかけて走る。

このような汗臭いオトコ、泥臭いオトコ、濃いオトコよりも、今はクールでスマートでさわやかなオトコのほうが、時代が求めるオトコ像なのかもしれませんね。

あるドラマの主演に斎藤工が候補に挙がったところ、顔が濃すぎるから視聴率が取れるのだろうか?というような意見も出ていたくらいですから。

やっぱり、田中康夫の『なんとなくクリスタル』(1980年)や、村上春樹の『ノルウェイの森』(1987年)の80年代あたりから、少しずつ日本のカッコいいオトコ像が変わってきたのかなぁ。

『マジすか5』の2話で、ヤンキー女子高生たちをボコボコにした後に、さくら(宮脇咲良)は、やり場のない怒りで絶叫しますが、最近のドラマで雄叫びを上げる姿がサマになるオトコはどれだけいることか。

たしかに、少し前の『銭の戦争』の草薙くんは、それに近いものがあったのかもしれませんが、仲間を思う心が根底にある叫びではなく、個人的な怒りからの「ぶち切れ」に近かったような。

どうも、スマートかつツルリンとした昨今のオトコよりも、最近の日本のドラマは、オンナのほうが、傷つき、汗と血を流しながら、痛みと怒りと悲しみを視聴者に伝えているような気がします。

記:2015/08/26

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