カフェモンマルトル

text:高野雲

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追悼 菅原文太

      2017/05/19

text:高良俊礼(Sounds Pal)

菅原文太―野良犬の怨念 (シネアルバム (95))菅原文太―野良犬の怨念

菅原文太さん 逝去

「ほら、こういうのが男っていうんだぞ」と、映像を通してその雰囲気や佇まいから感じさせる。

役者とは、映画やドラマ、舞台の上で、登場人物という虚構を演じる訳だが、演じる役者もやはり人間、どう役柄を作っていても、人間性というものはどうしてもどこかしらか滲むものであり、作品を通じてその俳優と長く付き合っていると、演技に対する姿勢や「役者人生」とよく言われるその生き様などに、人は惚れるものである。

先月高倉健が亡くなった。

追悼番組やDVD、インタビュー本などをしみじみと読みながら「あぁ、カッコイイ男が逝ってしまったんだなぁ・・・」と、しみじみ感涙にふけっていたが、その心の涙も乾かぬうちに、私の憧れだった「もう1人の男」菅原文太が逝ってしまった。



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広能昌三 星桃次郎

菅原文太といえば、内に熱いものを秘めた健さんとは対照的な「ギラギラした男」である。

とにかく『仁義なき戦い』の広能昌三であり、『トラック野郎』の一番星こと星桃次郎なのだ。

両者は「渡世人の美学」などとは程遠い、現代ヤクザの生々しい謀略と暴力を描いた群像劇に、どこまでもバカバカしくて痛快至極な娯楽大作という両極端な作品の主人公であるが、広能昌三も一番星も、映画の中で喜怒哀楽を「これでもか!」とあらわにし、野望や欲望が巻き起こすあれこれに躊躇なく、時に爆発しながら突っ込んでゆく様が、とにかくギラギラしていてカッコ良かった。

ギラギラしたイイ男

近年は、俳優業をスッパリと引退し、あらゆる社会問題に真剣に取り組んでいたという。

追悼番組で、関係者だった人たちの話を今しがた聞いてきたばかりであるが、それらの話を総括すると「とにかく菅原さんは、役者である前に“人としてこれはするべき”と思ったことはすぐに実行して、人として”それは違う!”と思ったら、すぐさま抗議する人だった。」という、頑固で生真面目、そして直情型の「ギラギラしたイイ男」だったということになるだろうか。

その生き様は、パトカーに「止まれ!止まれ!」と言われても、大事なヒロインを目的地に送り届けるために走るのをやめなかった一番星、そして広島抗争が全て終わった後「死んでいった若いモンらに申し訳が立たんけぇ」と、かつての盟友であり宿敵であった武田明(小林旭)の「一緒に呑もうや」という誘いを頑として断った、広能昌三そのものではないか。

何てカッコイイんだろう。

男の教科書

考えてみれば、菅原文太も高倉健も、私にとっては「男の教科書」みたいな存在であったが、健さんのビデオを観る時は、自室で一人黙々と観ていたが、『仁義なき戦い』や『トラック野郎』は、友人らとレンタル代を出し合って、みんなで鑑賞した後に、興奮して宴会を開いていたっけ(当時未成年)。上手くいえないが、私たちが憧れた2つの巨星は、きっとそういう人達だったのだ。

トラック野郎

最後にひとつイイ話を。

「グル・グル」等でおなじみの、ジャーマン・サイケ/プログレッシブ・ロックを代表する名ドラマー、マニ・ノイマイヤーが来日した時「トラック野郎」を観たらしい。

その時彼は「何てバカげた映画だ!面白い!!」と興奮して絶賛していたらしい。

そして「やもめのジョナサン」こと愛川欽也のことを「貧乏で子だくさんで、かわいそうに・・・」と、同情していたそうである。

マニ・ノイマイヤーという人も、ロックからジャズまで、それこそ何十年もいろんな現場で体を張って音楽をやってきた、私に言わせれば「男の中の男」である。

その彼が「トラック野郎」を観て菅原文太にシンパシーを感じたというこのエピソードが、はなむけになればとささやかに思う。

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text by

●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル

記:2014/12/02

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