カフェモンマルトル

text:高野雲

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チューブ/試写レポート

      2016/04/29

tube

『シュリ』の脚色家が監督を務めている映画ということが売りの映画のようだ。

ま、私にとってそんなことはどうでもよく、私がこの映画で楽しみにしていたのは、 ペ・ドゥナにつきる。

ペ・ドゥナは可愛い。
ペ・ドゥナの表情、演技は素晴らしい。

『子猫をお願い』で初めて彼女を見てからというものの、彼女のファンになった。

で、今回の映画は、ものすごく簡単に言うと、韓国の前大統領に、家族を殺され、国家に復讐を誓うテロリストが、地下鉄を暴走させるというお話。

地下鉄の暴走シーンや、冒頭での空港の銃撃シーン(空港を閉鎖して撮影したそうだ)はなかなかの迫力。

でも、やっぱり私は、気が強いんだけれども、主人公の刑事にメロメロな女スリを演じるペ・ドゥナのほうに私の目は釘付けだった。

もちろん、ペ・ドゥナは、女スリの役を見事に演じきってはいるが、正直、このような気丈なんだけど一途な女スリの役は、別にペ・ドゥナじゃないほかの女優でも演じられるんじゃないかと思う。

なんというか『子猫をお願い』のテヒの役は、ペ・ドゥナ以外の女優では演技不可能なところがあったので、どうも、ペ・ドゥナならではの役なんだろうか、このスリは?とも思ってしまうんだな。

だってさ、彼女の実力からしてみれば、“荷が軽すぎる”役柄なんだもん。

もっとも、彼女にしか出来ないことも彼女はやってのけてもいる。
主人公の背負う悲しみや痛みを主人公自身ではなく、ペ・ドゥナが表現してしまっているのだから。
主人公の刑事の背中(肩)を見てつぶやくモノローグ、刑事を見つめる目。

正直、主役のキム・ソックンは熱血漢な刑事を見事に演じてはいるが、その裏にある悲哀さまでは彼一人の演技では表現しきれていない。
しかし、ペ・ドゥナの視線という素敵なサポートを得ることによって、はじめて、熱血だけど寂しい人という人物像が浮き彫りになったのだ。

そういった意味では、この映画における彼女の貢献度は高い。

ちなみに、冒頭の物憂げな4ビートに乗って囁くような彼女のモノローグは、フランス語に聴こえた。

なんだか、前衛シャンソン歌手のブリジット・フォンテーヌが、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの演奏をバックに呟いているニュアンスとそっくりなのだ。

へぇ、韓国語ってフランス語にも聞こえるのか、と思ってほかの登場人物のセリフを注意して聞いたら、やっぱり韓国語は韓国語。独特のアクセントと抑揚は、当たり前だけれどもフランス語のニュアンスとはほど遠い。

彼女のアンニュイな喋り方が、フランス語っぽい呟きを想起させるのだろうか?

映画そのものは、なかなか迫力には満ちてはいたし、手に汗握るシーンは確かにあるが、やはりB級感は否めない。

「シュリ」のような奥深さや、登場人物が背負うバックボーンが足りないからなのか… おそらく、「シュリ」の主人公たちの背後に抱えているのは「国家」だった。

一方、「チューブ」の刑事にしろテロリストにしろ、背後に背負っているのは“私怨”のみだ。この違いが、ストーリーの厚みの差なのかもしれない。

しかし、ペ・ドゥナを見れるというだけでも、この映画の価値は限りなく高いことは確かだ。

観た日:2004/09/16

movie data

監督:ペク・ウナク
製作国 : 韓国
製作年 : 2003年
出演:キム・ソックン、パク・サンミン、ペ・ドゥナ、ソン・ビョンホ、チョン・ジュン、キ・ジュボン、イム・ヒョンシク、クォン・オジュン ほか

記:2004/09/17 
加筆修正:2004/12/31

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