幸村の名前の決め方は、まるで『spec』の戸田恵梨香~『真田丸』

   

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幸村になった信繁

真田幸村の「幸村」という名前は、関ヶ原終了後60年後の史料に初めて登場しているのだそうだ。

しかも、その史料の数は少ないにもかかわらず、そして真田「信繁」が本名であるにもかかわらず、庶民の間には「幸村」というニックネームの方が広まっていた。
というより、既に定着してしまっていた。

なぜ本人が名乗ってもいない名前が、かくも江戸時代に広まり定着したのかについては諸説さまざまだが、兎にも角にも、現代人の我々にとっても、「ノブシゲ」という本名よりは「ユキムラ」という名前の方が圧倒的に通りがよい。

なので、映画やドラマなど、彼が登場する作品は、最初から幸村という名前になっていることが多い。

クライマックス前のお膳立て

さて、現在放映中の大河ドラマ『真田丸』だが、この作品の脚本家であり歴史オタクも自認する三谷幸喜がそのことを知らぬわけがない。

とはいえ、やはり「真田幸村」という名前は劇中に使いたいと考えたのだろう。このドラマでは、蟄居していた九度山を脱出し大阪城に入場する前に、信繁の名を幸村に改名するという物語を創作している。

それまで活躍らしい活躍をしてこなかった信繁がいよいよ一世一代大活躍をする大阪の陣、つまりクライマックスに差し掛かるドラマの流れを彩るにふさわしい一つの区切りだ。

つまり、彼の生涯におけるクライマックスにふさわしいお膳立てをするとともに、「幸村」「大阪の陣」「真田丸」「大活躍」「日本一の兵 (ひのもといちのつわもの)」という構図を作るための下準備とも言える。

まるで『SPEC』

さて、では、このドラマでは、幸村という名前をどのような経緯で名乗るようになったか。

『スペック』なんですよね、これが。
戸田恵梨香主演の。

正確には『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』というドラマですが(長っ!)、特殊な事件を捜査するために警視庁公安部が設立した未詳事件特別対策係(未詳)の刑事、当麻紗綾(戸田恵梨香)が事件解決の糸口を閃かせるための方法。

つまり、事件に関連するキーワードをひたすら筆で半紙にに書きまくる。書きまくった後は、これらの紙全てを細かく破いて、自らの頭上にふりかけ、事件の謎が一気に閃くのです(凄っ!)。

これと全く同じ構図なのが、今回の『真田丸』第40話。

自らの生涯に関係あるキーワードをひたすらわしに書き綴った信繁は、嫡男の大助(浦上晟周)に切り刻ませる。

切り刻んだだ文字を壺の中に入れ、その中から1枚だけをおみくじのごとく息子に引かせる。

息子が引いた一文字は「村」。

そう、蟄居している九度山村の「村」だ。

兄が失った「幸」の文字と、関ヶ原の戦いで石田方についたため、徳川家康より蟄居を命じられた九度山村の「村」を合体させて、幸村と名乗るようになったというのが今回の大河ドラマの設定。

もちろんフィクションではあるが、『spec』を見ている人はニヤリとするようなストーリーではあった。

記:2016/10/10

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