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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

BEST/中森明菜

   

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BEST

ジャンプ放送局

私は中学、高校時代は歌謡曲ぎらいの生意気坊やだった。

しかし、例外的に中森明菜は聞いてみようかなという気分になった歌手の一人だった。

それは、当時の『週刊少年ジャンプ』がキッカケだった。
巻末に「ジャンプ放送局」という読者投票のコーナーがあったのだが、これの投稿している人物に「あすなろ明日菜」と言うペンネームの人物がいたのね。
6代目のジャンプ放送局の優勝者だったと思う。
その前の小平小平というチャンピオンも面白かったので注目していたのだけれど。

この人、私が通っていた高校の同級生だったんだよね。

違うクラスだったので、直接話したりしたことはないのだけれども、クラスの友人が、彼の友人でもあったので、彼にまつわる話は覚えている。
明日菜というのは、たしか、彼のお母さんが経営していたという英語塾(違っていたらゴメン)が、「あすなろ塾」というような名前であったことと、当時注目されていた明らかに中森明菜のもじりからつけていたとのこと。

それから、ジャンプ放送局のアンケート集計で、たしか3年連続か4年連続か5年連続か忘れたけれども、毎年、アイドルのアンケートで常時1位をキープしていたのが中森明菜だったこともあり、じゃあ中森明菜ってどんなんだっけという興味が湧いた。

もちろん、「ジャンプ放送局」に限らず、当時は人気の人で歌謡曲の番組では常に上位にランクインをしているという歌手ぐらいの知識がなかった私は、ろくすっぽ彼女の歌を知らなかった。

なので、これを機会に中森明菜の歌をちょっと真面目に聞いてみようと思い立ち、歌謡曲に詳しい友人から借りたレコードが中森明菜の『ベスト』だったのだ。

SAND BEIGE -砂漠へ-

1曲目の《スローモーション》。
おっ、聞き覚えのあるメロディと歌声。

2局目の《セカンドラブ》も聞き覚えのあるメロディだ。

「ザ・ベスト10」のような番組は嫌いだから見ていなかったんだけれども、当時、店などのBGMとしてよくかかっていたんだろうね。《北ウイング》や《サザンウインド》などの聞き覚えのあるメロディが続く。

今まで、じっくりと聴いたことはなかったんだけれども、「きちんと聴こう」という意思を持って彼女の歌を聞くと、案外歌がうまいんだなということに気がつく。
……いや、案外だなんて失礼だよね。
同時代の若手女性歌手と比較すると抜きんでた歌唱力でした。

そして、年代を重ねるに連れて、おそろしいほどの勢いで歌唱力がアップしていることがわかる。

《北ウイング》あたりから歌い方がちょいと変わったかなと思っていると、次の《サザンウインド》からは完璧に低音域にシフトした歌い方に変化している。
おそらくこの曲を境に大人の女性度を表出させる方向性にシフトしたのかな?なんて思いながら聴いていくとなかなか興味深い。

ふむふむ、ベスト盤を聞くのって、このような歌手の変化ぶりをかいつまんで追いかけることができるメリットがあるんだなと思いながら、A面のラストを耳にしてのけぞった。

曲は《SAND BEIGE -砂漠へ-》。

エキゾチックなサウンドと、低くためを聞かせた明菜の歌唱に完全にノックアウトされた。

もっとも、このエキゾチックなテイストって今思えば結構、歌舞伎町のパブが似合うようなチープなエキゾチカではあったけれども。

しかし、高校生だったころの私にはとても新鮮な響きに聴こえ、「これは細野さんの《シムーン》と双璧をなすエキゾミュージックじゃっ!」なんていいながら、この曲だけ、LPの6曲目の溝に針を戻して何度もリピートして聴いていたものだ。

B面には井上陽水が作詞作曲をした《飾りじゃないのよ涙は》などのヒット曲も収録されていたが、もうそんなのそっちのけ。《サンドベージュ》ばっかり狂ったように聴いていましたね。

そして、ちょうどその頃『不思議』が新譜として発表されたので、これも最初は友人からレコードを借りて聴いてみると、もうなんというか、「摩訶不思議心地よきサウンド」ではないですか。

さらに、次作の『クリムゾン』の音楽的クオリティの高さにノックアウトされたという。

今でも、私は『不思議』と『クリムゾン』の2枚が、明菜の最高傑作だと思っているけれども(YMOの最高傑作が『BGM』と『テクノデリック』であるように)、この2枚に向けての橋渡しをしてくれたアルバムが『BEST』だったのですね。
そういった意味でも、思い入れのあるアルバムです。

……なんてことをつらつら書いたのは、先月再発された高音質CDを聴いているうちに、昔の記憶が解凍されたから。

久々に聴く明菜の歌声、それにバックのアンサンブルは、まったくもって色褪せていない。

むしろ、昨今の世を席巻している「量産型美少女部隊」が黄色い声で合唱する楽曲に比べると、ポップス、歌謡曲といいながらも、ひそやかに重厚、かつ隠微な要素もまぶされており、まるで存在感の重さが違うなと思った次第。

記:2018/08/21

収録曲

1. スローモーション
2. セカンド・ラブ
3. トワイライト-夕暮れ便り-
4. 北ウイング
5. サザン・ウインド
6. SAND BEIGE -砂漠へ-
8. ミ・アモーレ
9. 飾りじゃないのよ涙は
10. 十戒(1984)
11. 禁区
12. 1/2の神話
13. 少女A

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