久々にアート・オブ・ノイズの1枚目を聴いた

   

古びぬインパクト

先日久しぶりにアート・オブ・ノイズを聴いた。
聴いたのは、1枚目の『誰がアート・オブ・ノイズを……』だ。

誰がアート・オブ・ノイズを・・・

個人的に一番好きなアート・オブ・ノイズは、プロデューサーであり、このユニットの仕掛け人でもあるトレバー・ホーンの元を離れてからの『インヴィジブル・サイレンス』なのだが、音楽的に洗練されたこの作品に比べ、「とにかく音のインパクトで勝負!」という、ある種潔いコンセプトのファーストアルバムも久々に聴くと、当時の光景がよみがえってきて、充分にインパクトを感じさせていただいた。

音をレイアウトするセンス

今になって振り返ると、もうサンプリングなんて当たり前の技術になってしまっているし、このサンプリングの技術をこれ見よがしに多用する手法は、古いんだろうけれども、いまだ色褪せて聴こえないのは、それをたんなる「ギミック」にとどまらせずに、デザインのセンスにも通ずる、音を配列する類稀なるセンスに彼らは溢れていたからなのだろう。

音楽的な素晴らしい下地は、後々キーボーディストのアン・ダドリーが発揮していたということが判明するが、この段階での彼らのセンスの発揮のしどころは、「音楽」のセンスよりも「音の配列」、つまりレイアウト(=デザイン)のセンスだった。

いってみれば、タイポグラフィーやコラージュにも通ずる、素材を活かすデザイナー的発送と、あるときは、別のニュアンスや意味合いをも生み出すユニークな切り口と、アイロニカルな視点。

これが、幸せな形で音に封じ込められ、なおかつ勢いを失わずに鮮度を保ったまま21世紀へと送り届けられてきているのだ。

大胆なサンプリングの使用法

今聞くと、《ビート・ボックス》などで使われているドラムマシンの音抜けの良さと、心地よい重たさが非常に気持ち良いことに気が付く。

このドラムの音色とインパクトも当時はかなり重要だったと思われ、彼らが衝撃的なデビューを遂げた際のプロモーション映像で印象に残っているのは、コラージュされた映像よりも、パンチの効いたドラムの音だったりするのだから。

以降の音楽では、どちらかというと「隠し味」的な用いられ方をされることが多いサンプリングの技術だが、それを大胆かつ前面に押し出して骨太なサウンドを作り上げていたアート・オブ・ノイズのグループワークは、音楽家の集まりというよりはむしろ、芸術家の集団によるコラボレーションに聴こえるのだ。

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