バード・イン・パリ/ドナルド・バード

   

アンサンブルへの眼差し

熱狂的な観客の歓声と勢い溢れるバードのMC、それと相反するかのような、柔らかく丁寧な演奏のギャップが面白い。

そう、《ディア・オールド・ストックホルム》と《ポールズ・パル》だ。

曲を慈しむかのように丁寧な吹奏と、たっぷりと情感を込めるだけの緩やかなテンポ設定。

ライブ演奏にありがちなエキサイトぶりは陰を潜め、どちらかというとニュアンスを大切にしたような丁寧なアンサンブルが印象的なライブ。

ボビー・ジャスパーのプレイも、バードのプレイにあわせているのか、とても滑らかで落ち着いている。

しかし、それ以上に抑制を効かせた吹奏をするドナルド・バードのトランペットを聴いていると、あることに気付く。

彼は、本質的にジャズマンとはちょっと違う地点にいるのだな、ということを。
いや、ジャズじゃないといっているわけではない。
それにジャズプレイヤーとしても一流だ。

しかし、このライブの演奏に対するまなざしは、確実にプレイヤーとしての気概以上に、アンサンブルに気を配るアレンジャー。

と同時に、音の配列に気を配るメロディメーカーのそれだ。

後年、彼はよくアレンジされたジャズロックテイストのアルバムを吹き込んだり、マイルドなソウル路線のアルバムも吹き込むようになる。
流行や時代に合わせて突然変異的にスタイルを変えたのではなく、彼がもともと持っていた資質が、アレンジ重視の音楽にフィットし、開花したのだろう。

パリのライブのドナルド・バードの演奏を聴くと、その思いが一層強くなる。

懐かしのストックホルム~バード・イン・パリ
Byrd In Paris

ちなみに、ジャケットは、個人的な好みを言うと上に貼り付けた画像のジャケットよりも、バードが新聞を開いて読んでいるジャケットのほうが好きだな。

1958年パリのオランピア劇場で行なわれたライヴだ。

記:2009/03/14

album data

BYRD IN PARIS (Emarcy)
- Donald Byrd

1.Dear Old Stockholm
2.Paul's Pals
3.Flute Blues
4.Ray's Idea
5.The Blues Walk

Donald Byrd (tp)
Bobby Jaspar (ts,fl)
Walter Davis Jr. (p)
Doug Watkins b)
Art Taylor (ds)

1958/10/22

 - ジャズ