イン・ア・マイナー・グルーヴ/ドロシー・アシュビー

   

動画解説

浦島ジャズ

きっと竜宮城で奏でられるジャズは、このような演奏なのかな?

ハープとフルートが、心地よくとろけるサウンドを聴いた瞬間、最初に感じた感想が、上記「竜宮城」。

そう、「浦島ジャズ」。(・∀・)b

なんともテキトー、かつイイカゲンな感想ではあるんですけど、ワインでもいいし、日本酒でもいい、とにもかくにも心地よくお酒に酔い、酩酊気分で頭がクラクラしかかってきたところに、このようなジャズが流れれば、もっと心地よく酔えるのかなぁ、なんて思いました。

ハープとピアノトリオの編成

ジャズでは珍しいジャズ・ハープ奏者、ドロシ・アシュビーの代表作『イン・ア・マイナー・グルーヴ』。

リズムセクションは、ドラムとベース。

フロントの管楽器はフルート。

これにアシュビーのハープが加わるというシンプルな編成。

ドラムがロイ・ヘインズという「呼吸をしているだけでもジャズな人」を配するあたりが、さすがプレスティッジという感じなんだけれども、ヘインズの瞬発力やバネも、このアルバムの演奏では、録音の音量のバランスもあるのかもしれないけれども、気持ち奥に引っ込んでおり、フルート奏者のフランク・ウェスとアシュビーのハープという、あくまで「旋律担当者」を前面に出すようなバランスになっています。

弦でもギターとはやっぱり違う

だからこそ、「ハープの音色は、やっぱり優雅やなぁ~」と、恥ずかしいくらい自分が抱いていたハープに対する先入観を、そっくりそのまま確認するかのような感想になってしまうのだけど、実際、艶やかで潤いのあるハープの音色で奏でられるジャズは、たとえそれがブルースであれ、《帰ってくれればうれしいわ》をはじめとしたスタンダードであれ、リズムフィギュアはオーソドックスな4ビートでありながらも、感じる触感は、やはり耳慣れた4ビートとは異質であることは確かです。

時折、ブルージーなフレーズが発せられても、ハープの音色からは、やっぱりギターのような乾いた攻撃性は感じられないし、細かい譜割りを演奏しているときは、ギザギザした要素が一切取り除かれたバンジョーのようでもあります。

ジャズのハープ奏者といえば、あとはコルトレーンの奥さんのアリス・コルトレーンしか思い浮かばないほどハープに関しては不勉強かつ不案内な私ではありますが、それでもドロシー・アシュビーのハープの演奏は、しっかりとしたテクニックに裏付けられた演奏だということは分かります。

だからこそ、その確かな技量で演奏された音の安定感が、やがて安心感につながり、その安心感が酩酊状態の幸福感を誘い……、となり、気分は竜宮城になってしまうのかも。

もっとも、秋に聴くと切ないの気分になったりもするから不思議。
べつに《ローマの秋》が入っているからだけではなく。

いっぷう変わった《帰ってくれれば嬉しいわ》も聴きどころ。

気合いを入れてアルバム1枚を聴き通すと、全身の緊張感が弛緩しまくりそうなので、後期コルトレーンや、アンドリュー・ヒルのような硬派かつタフなジャズを立て続けに聴いた後の箸休めとして、LP片面分の分量の曲を聴くのが、私にとっては丁度いいのかも。

《イエスタデイズ》に《ボヘミア・アフター・ダーク》。それに、《アローン・トゥゲザー》などの名曲も収録されているから、「ジャズハープ初体験!」な貴方は、このアルバムから是非。

記:2015/04/19

album data

IN A MINOR GROOVE (Prestige)

1.Rascallity
2.You'd Be So Nice to Come Home To
3.It's a Minor Thing
4.Yesterdays
5.Bohemia After Dark
6.Taboo
7.Autumn in Rome
8.Alone Together

Dorothy Ashby (harp)
Frank Wess (fl)
Herman Wright (b)
Roy Haynes (ds)

1958/09/19

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