カフェモンマルトル

text:高野雲

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ダスター/ゲイリー・バートン

      2015/08/11

ダスターDuster

ヴァイブの大御所

ライオネル・ハンプトン、ミルト・ジャクソン。

言うまでもなくヴィブラフォンの大御所だ。

彼らが繰り出す旋律は、ヴァイブの音色と非常にマッチしており、聴いていてとても楽しい。

ハンプトンの場合はエンターテイメント性も加味されるため、いつだってジャズの楽しさを失うことなく楽しむことが出来る。

また、ミルトの場合は醸し出る「タメ」と「ノリ」の魅力も加味されるため、じわじわと身体の内側を心地よくマッサージしてくれる。

いずれにしても二人に共通していることは、「メロディの人」だということ。

ヴァイブのイノベーター

その一方で、彼らの次の世代にあらわれたヴァイブ奏者、ボビー・ハッチャーソンやゲイリー・バートンは、もちろんメロディアスなプレイにも素晴らしいものがあるが、彼ら次世代の特徴は、ヴィブラフォンの「打楽器」としての側面をより一層前面に出したことだろう。

音板をマレット(ばち)で叩いて音を出すことからも、奏法的にはドラムスに近い。

アプローチ次第では、力強いインパクトのあるアタック感のある音を奏でることも可能なため、特にハッチャーソンは、この奏法を効果的に取り入れている。

もちろん、前の世代のライオネル・ハンプトンにしても《スター・ダスト》などの名演を聴くと、かなり打楽器的な奏法でアプローチをしている局面もあるが、それは「持ち技のバリエーションのひとつ」を披露しているという趣きで、ハッチャーソンやの場合は、さらに自覚的に「打」の要素を押し進めた奏法となっている。

いっぽう、ゲイリー・バートンといえば、4本のマレットを駆使した複雑なマレット捌きを楽々とこなすことだろう。

「4本マレット奏法」を始めたのはレッド・ノーヴォが始祖とされるが、この奏法をより高度に洗練させ、「バートン・グリップ」と呼ばれるマレットの持ち方を考案したほど。

4つのマレットを同時に音板に叩きおろすことにより、ヴァイブラフォンをピアノのような和音楽器として確立させた点からも、ゲイリー・バートンは、ジャズにおいての楽器奏法の革新者、チャーリー・パーカー、ケニー・クラーク、バド・パウエル、ジョン・コルトレーン、ジミー・スミスらに比肩しうる功績の持ち主なのだ。

ダスター

さて、もっともカッコいいゲイリー・バートンを聴けるアルバムは何だろう?

ラリー・コリエル、スティーヴ・スワロウ、ロイ・ヘインズらとの共演、『ダスター』がその筆頭に挙げられるのではないか。

一言、カッコいい。

二言、刺激的な音!

1967年、つまり、コルトレーンが亡くなった年に録音された作品ゆえ、間もなく録音されてから半世紀が過ぎ去ろうとしているにもかかわらず、演奏全体から発せられる勢いは、今聴いても確実に新しい。

何か新しいことをやろうとする各ミュージシャンたちのエネルギー、勢いが時代関係なく聴く者に「新しさ」をもたらしているのかもしれない。

特に、ラリー・コリエルのギターが勢いに溢れている。

当時、まだ無名だったコリエルではあるが、すでにバートンとの相性は抜群。

表現スタイルや、蓄積されている音楽的経験はバートンとは異なれど、二人の向いている方向や、描いていた音楽的ビジョンが共通していたからこそ、エッジが立っていながらも充実感のある演奏にまとまったのだろう。

ジャズロック

よく、このアルバムはジャズとロックが融合した「ジャズロック」の代表作の1枚に挙げられる。

たしかに、各所で認められる荒々しいまでの勢いは、ロックのフィーリングそのものなのかもしれない。

しかし、根底に流れるスピリッツは、やはりジャズ率が高いと感じるのは私だけではないだろう。

特に、ロイ・ヘインズのドラミング。

8ビート的でありながらも、決してこのリズムは8ビートではない。

「ジャズの叩き方」をより新しく押し進めた結果、このような叩き方に行き着いたとでも言わんばかりのドラミングなのではないだろうか。

元より、ロイ・ヘインズというドラマーは、4ビートにおいても変則的な叩き方を信条とする人。

いや、信条というよりは、幼い頃はお金がなくてハイハットを買う(買ってもらう)ことが出来ず、仕方なくシンバルの叩き方に変化をつけることによって独自のドラミングを確立した人ゆえ、定型ビートを元にアクセントの置き場所を縦横無尽に変化させ、目の前で演奏を繰り広げるミュージシャンたちが出す音にあわせてリズムの形態を縦横無尽に変化させることが朝飯前の人といっても良いだろう(だから年をとっても若いミュージシャンと共演してもまったく違和感がない)。

バートンとコリエルが突き進もうとしている方向性を瞬時に察知し、柔軟にリズムを変化させつつ、音に勢いを付加することも忘れないロイ・ヘインズのドラミング。

それをガッシリと底辺から支えるスティーヴ・スワロウのベース。

無敵の編成といえよう。

たった4人で、これほどまでの演奏。

そして、これほどまでの演奏を繰り広げるのは、各自の役割を心得ており、ビジョンを共有した、彼ら「たった4人」だけで良かったのだ。

album data

DUSTER (RCA)
- Gary Burton

1.Ballet
2.Sweet Rain
3.Portsmouth Figurations
4.General Mojo's Well Laid Plan
5.One,Two,1-2-3-4
6.Sing Me Softly of the Blues
7.Liturgy
8.Response

1967/04/18-20

Gary Burton (vib)
Larry Coryell (g)
Steve Swallow (b)
Roy Haynes (ds)

記:2015/08/09

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