ザ・ファースト・レコーディング vol.2/アルバート・アイラー

   

グニャリと溶解した《モーニン》

アルバート・アイラーのサックスって、なんでこんなに心を揺さぶるんだろう。

人生そのもの、その人のありのままが剥き出しになってしまう恐ろしくも個人的な表現形態が、ブルースだったり、ジャズなんだと私は思っているんだけれども、最近はどうしたわけか、自分の生き様にオブラートをかけてしまって、指先だけで音を“デザイン”しちゃっているブルースやジャズが多いよね。

だから、ついつい忘れがちになってしまうんだよ、生身の人間の赤裸々な生き様が投影された音楽だってことを。

しかし、たまにアイラーを聴くと、そうした当たり前なことを思い出し、リアルに自覚することが出来る。

彼の生き様が、音そのものから語られているのだ。

アイラーの人生についての詳しいことは私は知らない。

しかし、ここで発せられるテナーの剥き出しの叫びは、恐ろしく孤独だということは分かる。

凍てつくほどの荒涼とした風景が眼前に広がる。北欧はストックホルム。

「アカデミー・オブ・モダン・アーツ・ホール」にて行われたライブにして、彼のデビュー録音。

ベースのトルビョルン・ハルトクランツと、ドラムスのスネ・スパンベルク、いずれも現地ミュージシャンがサポートに加わったピアノレス・トリオ編成だ。

観客の野次やざわめきに反比例するかのように、アイラーの孤独と絶望が浮き彫りになってゆく。

《モーニン》をはじめ、聴き慣れたスタンダードが、グニャリと曲がり、溶解され、解体され、アイラーに別の生命を吹き込まれた音のカケラとして 中空に屹立する。

行き場所の失ったアイラーの咆哮は、我々リスナーが全身ですくいあげるしかないのだ。

心して聴くがよい。

記:2006/07/20

album data

THE FIRST RECORDINGS Vol.2 (DIW)
- Albert Ayler

1.Softly As In A Morning Sunrise
2.I Didn't Know What Time It Was
3.Moanin'
4.Good Bait

Albert Ayler (ts)
Torbjorn Hultcrantz (b)
Sune Spangberg (ds)

1962/10/25

 - ジャズ