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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

フリースタイルダンジョンのモンスターを無理やりジャズマンに当てはめてみた

      2018/07/16

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ジャンルは違えど共通する表現の傾向の違い

ジャズとヒップホップ。

ジャンルは違いますが、共通項もあります。
それは、表現に対しての考え方や発想です。

もっと視野を広げると、それは絵画や文学など芸術表現全般にも当てはまることですが、とりあえず今回はジャズと日本のヒップホップ界の主要な人物を対比させてみたいと思います。

どのようなジャンルや表現様式においても、その時代やその地域によって最大公約数的な「主流」とも呼べる表現があります。我々が暗黙に、あるいは無意識に認識しているいくつかの要素、共通項。これらの要素のいくつかが満たされると、「ジャズっぽいね」とか「70年代のロックっぽいね」とか、「80年代の歌謡曲っぽいね」という認識になるわけです。

ざっくり4つのタイプに分けてみると

では、表現者のスタイルを大雑把に4つに分類してみましょう。

Aタイプ

どのジャンルにおいても大多数を占めているのは、ジャンル内におけるルールや文脈、暗黙のしきたりの枠内において最大限のパフォーマンスを発揮するタイプの表現者です。

「ジャンル」そのものが有する世界や空気を愛し、そのジャンル内で形成された表現やローカルルール、ファッション、行動様式など、ジャンルが生み出した世界の中で最大限に自己を表現しようとするタイプです。

たとえば、パンクが好きだからということで、ツンツンの尖ったモヒカン頭にして、ライダースジャケットを着こみ、南京錠のペンダントをして、ベースはフェンダーのプレシジョンをピック弾き……みたいな、そのジャンルが持つ分かりやすいアイコンを踏襲することによって、好きなジャンルとの同一化をはかり、自己のアイデンティティの柱とするタイプです。

このようなタイプの表現者を仮にAタイプとします。

Bタイプ

その一方で、上記のタイプから少しはみ出たタイプで、従来の表現様式に新たな表現方法をつけ加えるタイプの表現者もいます。

これは、ジャンル内の音楽が似たりよったりなものが大量生産されはじめると、必然的に表れますね、ジャンルを問わず。

これをBタイプとしましょう。

ジャズでいえば、ビバップ的な表現に行き詰まりが感じられた頃に、ハードバップ的な表現に移行し、それも飽和状態になると、モードやフリーなどの新たな表現形態が生まれ、多くのジャズマンも多かれ少なかれその流れに乗りました。

もっとも頑なに自己の表現の領域を守り、あえて進化発展を止めたレッド・ガーランドのようなピアニストもいますが、彼らの場合は典型的なAタイプでしょう。

Cタイプ

そして、この破壊者とはニアイコールですが、その破壊から新たに革新的な要素をもたらし、その試みが、後に世の主流となるタイプ。

これをCタイプとすると、ジャズにおいては、まさにイノベイターと言われた人がそうですね。

チャーリー・パーカー、バド・パウエル、セロニアス・モンク、マイルス・デイヴィスなどがまさしくそのタイプでしょう。

Dタイプ

最後に、多ジャンルの影響が表現の中に濃厚に見られるタイプ。

これをDタイプとすると、たとえば、ジプシーの影響が濃厚なジャンゴ・ラインハルトや、西インド諸島のカリプソを表現の中に取り入れたソニー・ロリンズや、スパニッシュなテイストを自覚的に使っているチック・コリアなどがそうですね。

最近のジャズマンはジャズ一色のAタイプは珍しく、むしろ多くのジャズマンたちはソウルやファンクやヒップホップなどの影響を受けたDタイプが多いように感じます。

同じジャンルでも異なる表現様式

というわけで、ものすごく大雑把に分けると上記4つのタイプに分かれると思います。

もちろん、綺麗に4つのパターンに分けられるわけでもなく、ミュージシャンだって日々成長しているわけですから、最初は様式の中での表現にこだわり、後にそれを破壊し、最終的に新たな表現様式を打ち立てる人だっているでしょう。

逆に、あえて大好きなジャンルの枠内にとどまり進化を意図的に止めるかわりに表現に磨きをかけ、深みを目指すタイプもいます。先述したレッド・ガーランドや、スタイルを大幅に変えることなく死ぬまでラッパを吹き流し続けたチェット・ベイカーのように。

このあたりは、その人の資質や性質、生まれ育ちや、シーンを取り巻く環境や時代背景など様々な要素がからんできます。

だから、同じジャズといっても、あるいは同じジャパニーズ・ヒップホップといっても、各人のスタイルや表現様式はまったく異なるところが面白いですね。

ラッパーたちの個性の違いが面白い

私はジャパニーズ・ヒップホップにはそれほど詳しくないのですが、テレビ朝日の『フリースタイルダンジョン』は、放送初期の頃から毎週欠かさず見ています。

最初は格闘技観戦をする感覚で見ていたのですが、ラッパーたちの個性を把握するにつれ、次第に毎週の対戦が楽しみになってきました。

勝ち負けというよりも、どう戦うかという戦い方の切り口、つまり表現のアプローチみたいなものに注目するとバトル観戦が楽しいのです。

これはジャズ鑑賞とまったく同質なものです。

そして、限られた小節の中、知恵と技の限りを尽くして表現を発散させる行為は、特にビ・バップ期のヒリヒリするジャズに通ずるものがある。

私がジャズに求めるものは、今も昔も安定ではなく非安定。
定型ではなく非定型。
そして、既存の因習に対しての否定形な精神。
秩序よりも破壊なのです。

だから、一般的にジャズというとブランデー持ったおっさんがグラスくるくるなイメージを持つ人もいらっしゃるとは思いますが、まあそういうジャズも嫌いではないのですが、私はどちらかというと、ヒリヒリと感覚を刺激し、肌にビリビリくる要素をジャズに求めているのだと思います。

もちろん心地よいサウンドも嫌いではないのですが、一般的には「ムーディだよね」というイメージが先行するバラードであっても、やはり美しさの中に殺気立た気品や、スローなテンポの中にも無限のスピード感が感じられるバラードが好きですね。

と、前置きはそこまでにしておき、だからジャズで培ってきた鑑賞目線で『フリースタイルダンジョン』を楽しんでいる私としては、番組で活躍する各モンスターの在りようやスタイル、位置付けのようなものが、まるでジャズマンと相似形に映って仕方がないのです。

ですので、顰蹙買うことを覚悟で、それぞれのモンスターやチャレンジャーたちをジャズマンに置き換えたら誰になるのかを発表してみたいと思います。

般若⇒アーチー・シェップ

ラスボス般若。

彼が持つバイタリティと、底流に常に流れる演歌チックなクサさ&オッサンくささ。

そして、他の人だったらどうしようもない陳腐な言葉も強引に納得させしまう強引な説得力。

これはもう、アーチー・シェップでしょうね。

彼のパワフルなブローは『マジック・オブ・ジュジュ』を聴けば圧倒されること請け合いですし、最近のバラードものの表現といえば、場末の演歌オヤジ以上にクサいものがある。

表現スタイルと、放たれた音に漂うオーラは両者は共通していると思います。

関連記事:ザ・マジック・オブ・ジュジュ/アーチー・シェップ

初代モンスター

初代モンスターは、仮面ライダーでいえば昭和仮面ライダーなんですよ。
「力と技と肉体で勝負!」なイメージが強い。

それに対して2代目モンスターは平成ライダーのイメージですね。
もちろん力と技もありますが、それ以上にアイテム(武器)で戦うライダーが多いところが特徴。
ラップでいえば、そのアイテムとは「スキル」。

確実にラップのスキルはアップしているんです。
ただ、それゆえのキャラの濃度はどうしても初代モンスターのほうが強く感じます。

映画『平成ライダー vs 昭和ライダー』で、平成ライダーの555(ファイズ)が、昭和ライダーのX(エックス)に肉弾戦で圧倒されているシーンが象徴的ですが、アイテムが少ない昭和ライダーは気合いと肉体で頑張っているイメージがあります(もっとも555のことをフォローすると、555はxのことを敵とみなしていなかったから、あまり手を出せなかったということがありますが)。

これはAKB48にもいえますね。
時代を遡れば遡るほど、泥臭さとアカ抜けなさ、そして「場末感」は増すのですが、それと反比例するかのように「ドスコイ底力」は眩暈がするほど強力です。

というわけで、キャラの濃い初代モンスターを似たタイプのジャズマンに当てはめてみましょう。

R指定⇒ケニー・ギャレット

典型的なAタイプに属するアーティストでしょうね。

両者ともに、とにかく巧い!
バランス感覚も優れている。

そして、両者ともに、もちろんそのスキルやセンスは天性のものもあるのかもしれませんが、それ以上に「一生懸命努力して獲得したに違いない」と思わせるストーリー性も背後から読み取れます。

ジャンルに対しての敬意の念も感じられ、それゆえに先人たちの足跡をしっかり学習して、自分なりに吐き出そうとする意欲は両者ともに共通していると思います。

そして、R指定はチャレンジャーをラスボス・般若に到達させないための「最後の砦」として、ケニー・ギャレットは、晩年のマイルスを上手に引き立てていたという、ボスからの厚い信頼を受けているというところも、共通点として挙げられます。

関連記事:トリオロジー/ケニー・ギャレット

漢 a.k.a. GAMI⇒チャールス・ミンガス

とにかく、おっかねぇ貫禄のあるルックスが両者共通(笑)。

生まれつきの親分肌。
そして実際にリーダー。

よくわからねぇ理屈も腕力で通してしまうところ。

しかし、ひとたび弦をはじけば、あるいはマイクを握れば、彼らにしか形作れないワン・アンド・オンリーの世界を形成し、有無を言わさず空気をゆさぶるところが両者の共通点です。

こちらの背筋をゾワゾワとさせるものがあるんだよね。
ミンガスのベースや漢の声には。

ミンガスのパンチのある低音は濃厚にジャズだし、漢のヴォイスは、初代モンスターの中ではもっともザラザラとしたヒップホップを感じます。

関連記事:ミンガス・プレゼンツ・ミンガス/チャールス・ミンガス

DOTAMA⇒菊地成孔

小頭はいい。スキルもある。
如才なく、そこそこ人を楽しませる才能とサービス精神もある。

しかし、つきまとうイメージはどこまでいっても「傍流」。

しかし、傍流でありながらも、シーンを詳しく知らない人からは本流とみなされがちな、ある意味おトクな、コスさとズル賢さと胡散臭さがぷんぷんと匂うところが両者の共通点。

もちろん褒め言葉よ。適度に楽しませてくれるエンタメ性も必ずどこかにあるから。

ルックス、いや雰囲気かな? DOTAMAは「援交してそうな高校英語教師」と誰かにディスられていましたが、まさに2人とも共通してそういうイメージですね(笑)。

関連記事:シャンソン・エクストレット・ドゥ・デギュスタシオン・ア・ジャズ/菊地成孔

T-PABLOW⇒リー・モーガン

とにかく両者ともに、出す音がいちいちカッコいい。
サマになる。
滲み出るワルっぽさ。

日本の子どもたちは、学校の先生やマンガから「努力すれば夢は必ず叶う」というようなことを教わりますが、人間、無理な人が努力したところで、絶対に手に入れられないものだってあります。
その一つが、滲み出る「ワルそうな雰囲気」です。

これは、どんなに努力したところで獲得できるものではありません。
そして、世の男性のほとんどが潜在的に「ワルッぽさ」を身につけたいと考えているからこそ、一時期『LEON』の「ちょいワルおやじ」というキャッチフレーズが流行したのでしょう。

オトコだったら誰もが憧れる「ワルっぽい」雰囲気を生まれ持って身につけている2人は、何をどうやろうが、自動的にカッコよく見えてしまうのです。

トランペッター、リー・モーガンは、浮気がバレてライブハウスのバックステージで恋人に射殺されますが、その直前のやり取りがジャズであり、ヒップホップだなぁと思うのです。
「撃つわよ!このピストルには弾が入っているんだからね!」
「玉なら俺の股間にも2つぶらさがっているぜ」
バキューン、バキューン(銃声)⇒死亡

関連記事:カリスマ/リー・モーガン

サイプレス上野⇒ドン・ウィルカーソン

サイプレス上野は、基本、明るく無邪気な「イイ奴感」が常に漂っているんですよね。

たとえば坂本龍一の場合は、2020年の東京オリンピックのテーマ曲を作曲してくれと頼まれても、「冗談じゃない!福島ではいまだ多くの被災者たちが苦しんでいるのに、能天気に国のお祭り音楽なんて作ってられるか!」と断っていますが、サイプレス上野の場合は、「わーい、わーいオリンピックだ楽しみだな」みたいな、能天気というか、ワールドカップをみんなで観戦すると楽しいよねくらいなノリの曲を、七夕野郎 (サイプレス上野とMIC大将)名義で発表したりする無邪気さがあります。

それがまた、本当にこの人楽しみなんだろうなぁ、あまり細かなことを考えないんだろうけど、本人は本当に楽しみだから曲にして発表したんだろうなぁと思わせるだけの憎めなさと無邪気さがあります。

表現的には、「酒もってこーい!」みたいに非常にキャッチーというかマンガ的。
実際、マンガの監修もしてますし(「サウエとラップ」)。

キャッチー。分かりやすく親しみやすい。
あまり細かなことを考えずに楽しめるという点では、テナーサックス奏者、ドン・ウィルカーソンの砂糖がたっぷりはいった音色とフレーズを感じてしまうのです。

「苦味」の希薄さが両者の共通点ですね。

関連記事:プリーチ・ブラザー/ドン・ウィルカーソン

チコ・カリート⇒ドン・チェリー

軽やかですね~、心地よい。

個人的には、初代モンスターの中では、チコ・カリートがもっともアーティスティックなセンスを持っていると感じます。

だから、バトルの際、相手をディスる時ですら、どこか心地よい風が吹いているようで、要するに彼のフローが心地良いのでしょうね。

シャカリキになり過ぎない肩の力が抜けた表現は、トランペッター、ドン・チェリーを彷彿させるものがあります。

彼はフリー・ジャズの旗手、オーネット・コールマンとの共演でシーンで名をはせましたが、後に民族音楽と自己のトランペットを無理なく自然な形で融合させていますし、また、レゲエにも接近して、いずれにしても「心地よい」音楽を提供しつづけています。

チコ・カリートの場合も、現在はたまたまヒップホップという音楽をやっているのでしょうが、もしかしたら今後は他のジャンルと自己の音楽を違和感なく融合させた音楽を発表していくのかもしれません。

二代目モンスター

さて、二代目モンスターですが、現在、『フリースタイルダンジョン』の番組中では、不甲斐ない二代目モンスターに渇を入れにやってきた初代モンスターとのバトルの真っ最中ですが、個人的には、「スキル」という面においては、二代目モンスターは、初代モンスターよりも微妙に上回っていると思います。

それは先述したとおり、平成仮面ライダーは、体力以外にも豊富な武器やアイテムを駆使して戦っているのと同様、二代目モンスターも初代の「気迫・勢い」に対して、スキルを駆使して戦っているように感じます。

そのぶん、どうしても初代モンスターよりも「存在感」がやや軽い感じも否めません。

しかし、それは仕方のないことだとも思います。

会社で言えば、初代と二代目の違い。
AKB48でいえば、高橋みなみが総監督の時代と、横山由依が総監督の時代の違い。

一代目が築き上げた土台を、継承するだけではなく発展させてゆくのが二代目の役割だとすれば、力と気迫で土台を築き上げた初代モンスターと、その土俵の上で、先代の遺志を受け継ぎ拡大発展させようとしながらも、それのみならず新しいオリジナリティを打ち出そうとする二代目モンスターとでは、無意識に自覚している役どころに初代との相違があるのは当然なことといえましょう。

濃いキャラ、ドスの効いた存在感が少々薄れたかわりに、二代目モンスターには初代にはないカラフルさと多様な表現の間口の広さを感じます(感じる人もいます)。

FORK⇒コールマン・ホーキンス

「♪NAIKA MC 群馬 知らねえ」の必殺「知らねぇ」が強烈なFORK。

無駄のないリリックの中には、後で気付けば大量の韻の嵐。
この構成力と説得力は見事としか言いようがありません。

そして、チャレンジャーに対しての「いいかお前、ヒップホップってぇのはだな」と、修羅場をくぐった俺様が教えてやるぜと言わんばかりのスタンス。まるで、オヤジが若造に説教をするようスタンスは、その若さのわりには、すでに長老格とでも言わんばかりの貫禄です。

そんな貫禄あるオヤジ的な風格を自然に備えたジャズマンといえば、コールマン・ホーキンスをおいて他はないでしょう。

ホーキンスは、Hawkinsいうスペルからもお分かりのとおり、ホークが相性でした。
ホークとフォーク、なんだか響きも似てますな。

ホークのテナーも無駄がない。
特に彼を一躍有名にした《ボディ・アンド・ソウル》は、「無駄無し男のバラード」の極地といえましょう。

少ない音数から醸し出る貫禄は、少ないワード数から説得力を生み出すFORKと相似形に感じてしまうのです。

関連記事:ハイ・アンド・マイティ・ホーク/コールマン・ホーキンス

呂布カルマ⇒J.R.モンテローズ

少ない言葉で相手を刺す。

韻を踏んだほうがエラいというような、従来の因習のようなものにこだわらず、パンチライン(強烈な一言)で相手に再起不能のダメージを与える。
しかし、韻を踏んでいないようでいて、じつは結構マニアックに踏んでいたりするしたたかさ。

個人的には、2代目モンスターの中では、呂布カルマにもっともシンパシーを感じています。
あの、昭和な柄シャツと馬カマキリのようなルックスはインパクトで、ラップのスタイルとともに、一度ハマれば病み付きになってしまう存在感があります。

独特な個性、というよりは、独特な毒の噴出のさせ方は、まさにワン・アンド・オンリー。

ジャズマンでいえば、私は真っ先にJ.R.モンテローズを思い浮かべます。

音色も独特、フレーズの組み立て方も独特。

流暢な表現に慣れきった耳には、最初は強烈な違和感を感じるかもしれませんが、慣れると病みつきになる中毒性の毒を持っている点では両者ともに共通しているのです。

チャールス・ミンガスの『直立猿人』や、ケニー・ドーハムの『カフェボヘミア』のような名盤も、彼抜きでは、あのようなインパクトある作品にはならなかったと思います。

渋くマニア好みな表現者ではありますが、このようなタイプのしたたかな人材が必ずどのジャンルにも力強く存在しているものなのです。

関連記事:J.R.モンテローズ/J.R.モンテローズ

崇勲⇒オーネット・コールマン

両者から感じられるのは「自由な感じ」。

素っ頓狂なところもあるし、やけに可愛いところもあるし(崇勲の場合はキャラ、オーネットの場合はフレーズ)、リズムに対しての鋭い切り込みがあると思えば、単純な内容をバカみたいに何度も繰り返したりもする。
そうかと思えば、非常に哲学的で深みのある側面も見せたりと、なんというか変幻自在なんですよ、二人とも。

おそらく細かなことに拘泥せず、自然体で聴こえてくる音に反応できる「感性の反射神経」が鋭いのでしょうね。

ゴッツイ崇勲と、やせ細った哲学者のようなオーネット。
ビジュアル的には対極ではありますが、案外、彼らの音に対しての自由さ、そして根底に横たわる音に対する真摯さは共通したものがあるのかもしれません。

関連記事:ダンシング・イン・ユア・ヘッド/オーネット・コールマン

エース⇒ブライアン・ブロンバーグ

エースのラップは、さすがにラップ教室の先生なだけあって、巧いんだよね。

けっこう韻も踏むし、わかりやすいし、「そうくるか!」と感心することもあるし、バトルでは興奮も提供してくれるエキサイティングさもあるし、とにかくスキルがあることは間違いなし。

しかし、なぜかあまり残らない。

リアルタイムで聞いている間は、凄いなぁ、巧いなぁと本当に感心してしまうんだけれども、感動はないし、それこそ多くのハリウッド映画のように、映画館を出てしまえば、スクリーンに釘付けになって、あれほど手に汗握った興奮も、綺麗さっぱり忘れてしまい、「ご飯何食べに行こうか?」と、もう次のことを考えている。

そういう「濃いけど後味ひかないアッサリさ」は、ベーシストでいえばブライアン・ブロンバーグに共通したものを感じます。

ブライアン・ブロンバーグは、かなりのテクニシャンです。

クラシックからジミ・ヘンまで。
あのジャコ・パストリアスがエレクトリックベースで弾いた内容をウッドベースで軽々と弾いてしまうほどの器用さ。

正直、舌を巻きます。
しかし、なぜか後に残らないんですよね、不思議と。

しかし、音楽でいう気迫だったりハートだったり勢いだったり音の存在感だったりといったスピリット的な面は他人に継承することは難しいのですが、純粋にテクニカルな面だったら、譜面化や言語化することは可能です。

ベースだったら運指のテクニックだったり、ラップだったら三連符を綺麗に発音する方法だったり、トラップビートにどういうノリで対処するのかといったことは、言葉と音と譜面などのビジュアルを駆使すれば「技術」として伝承することは可能です。

テクニックが優れているエースがラップ教室の先生であることも頷けますね。

関連記事:ハンズ/ブライアン・ブロンバーグ

烈固⇒ソニー・クリス

とにかく滑らかに、多くの韻をさらりと踏む。

スキルは抜群。
だけど、若さゆえなのだろうけれども、いまひとつパンチ、打撃力に欠ける。

もちろん、他の年上のモンスターに囲まれれば、彼の若さが際立ち、「永遠の弟」感が丸出しなところが、ちょっと貫禄不足な感はビジュアル的には否めないけれども、それはあくまで番組内におけるキャラでの話し。

純粋に彼のラップに関していえば、アタマに「いえぇ」を付け過ぎなところが気にはなるけれども、彼のリリックの安定感はかなりのものだと思います。

この破綻の無さ、そして、敬愛する先人からのフレーズを上手に引用するセンスは、ソニー・クリスに通ずるところがあります。

ソニー・クリスのアルトサックスは軽量級。
しかし、軽量ゆえの疾走感があり、同じパーカー派直系のアルトサックス奏者、ジャッキー・マクリーンのような危なっかしさは皆無なところが、安心して聴ける所以ですね。

ま、個人的にはマクリーンの危なっかしさもけっこう好きだったりもするのですが、破綻なく滑らかにすいすいとフレーズを繰り出してゆくソニー・クリスは、聴いていて気持ちが良い。

ただし、やっぱりクリスばかり聴いていると、もう少しへヴィなサックスを聴きたくなってくることも確かで、そういうところも、烈固とソニー・クリスは似ているなと思います。

関連記事:ソニー・クリス・カルテット・フィーチャリング・ハンプトン・ホーズ/ソニー・クリス

というわけで...

とまあ、遊び感覚で『フリースタイルダンジョン』のラッパーと私が大好きなジャズマンたちの共通点を取り上げてみましたが、いかがでしょう?

ジャンルは違えど、表現を生業とするアーティストたちには、それぞれの表現のスタイルには共通項がある。
また、同じジャンルでありながらも、表現に対するアプローチや考え方にはずいぶんと違いがあるものです。

たまたま野次馬根性で見ていた『フリースタイルダンジョン』に登場するMCたちのスタイルを見ているうちに、自然とジャズマンのプレイスタイルが思い浮かび、いつしか、準えて鑑賞している自分に気付きました。

ほとんど、こじつけではあるのですが、これを機にジャズに興味を持たれた方は、是非、上で紹介した音源を聴いていただければ嬉しいです。

世界がもっともっと拡がるかもしれませんよ。

記:2018/07/15

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