カーティス・フラー・ウィズ・レッド・ガーランド/カーティス・フラー

   


Curtis Fuller With Red Garland

何度聴いても、どうもリーダーのカーティス・フラーよりも、ソニー・レッドのアルトに耳がいってしまうのは、お気楽なジャムセッション感覚の演奏でのレコーディングだからなのだろうか?

つまり、リーダーのカーティス・フラーの良さを全面に押し出すようなアレンジや配慮がなされぬまま、「いつものようなジャムセッションの感じ」でレコーディングを済ませてしまうという、良くも悪くもプレスティッジならではの、スタジオ・セッション的レコーディングゆえの産物ではないかと……。

もちろん、それが良い結果を生むことも多いのだが、締まりのない結果を生むこともある。ま、そういうところもひっくるめて、プレスティッジは愛すべきレーベルなのだが。

もちろん、リーダーのカーティス・フラー以下、ピアノのレッド・ガーランド、ベースのポール・チェンバースは名手だし、それゆえ、演奏中に“光る一瞬”を放つことはある。

しかし、まさに“一瞬”が“一瞬”に終わってしまい、結局、よほど注意深く耳を傾けないと、“光る一瞬”が忘却の彼方に押しやられ、否、それどころか、“その一瞬”すらも発見できないままに終ってしまう事態を招きがちなのは、2管のアンサンブルの練り込みの足りない曲がいくつかあったり、まるでソニー・レッドがリーダーのように感じてしまう配曲ぶりからくるものなのだと思う。

演奏自体は悪くはないにもかかわらず、カーティス・フラーのリーダーアルバムを聴いているつもりが、いつのまにか意識が、気持ちの良いハードバップの演奏に浸っているのは、やはり1曲目のレッドのオリジナル《シーイング・レッド》にあるからなのかもしれない。

ビ・バップ色の強い起伏のあるテーマは魅力的だが、ソニー・レッドのオリジナルとあってか、俄然アンサンブルで張り切っているのはレッド。

そして、先発ソロを切るのもレッド。

このレッドの後に続くフラーは、アドリブそのものは悪くはないにもかかわらず、録音のバランスの問題もあるのかもしれないが、トロンボーンが奥のほうに引っ込んでしまっており、いささか分が悪い。

では、フラーのオリジナルはどうなのかと、3曲目の《キャッシュメア》では、フラーらしさが滲み出ている。

まるで、《ファイヴ・スポット・アフター・ダーク》の姉妹曲のようなマイナーチューン。フラーはソニー・レッドのアルトに対してハモりを入れながらテーマを吹いているし、ミディアムテンポの軽快なノリこそがフラーの個性がもっとも活かせるテンポなのだと納得がいく。

また4曲目の《スレンデレラ》や、6曲目の《ロック&トロル》も、テーマ部のアンサンブルにおいては、アルトとトロンボーンの協調がとれている。

やはり、アルバムの第一印象が決まってしまいがちな1曲目に、ソニー・レッドが大活躍する《シーイング・レッド》を持ってくるという曲の配置が、フラーのリーダーアルバムというイメージを薄めてしまっている要因なのかもしれない。

鋭いアルトと、マイルドなトロンボーン。

楽器の音質と、音の通りの問題もあるのかもしれないが、なぜかリーダーのフラーよりも、アルトのソニー・レッドのほうが目立ってしまっているし、彼の奮戦ぶりばかりが記憶に残ってしまうアルバムでもある。

タイトルにガーランドの名前が冠されているにも関わらず、ガーランドは完全にサイドマンとしての意識で脇役に徹しているかのごとく。ピアノソロのパートになると、いつものガーランド節も出てきてホッとする一瞬もあるが、どこか、ガーランドらしさが足りない。

ただし、リーダーやタイトルに気を取られ過ぎずに鑑賞すれば、これは極上のハード・バップセッションとはいえる。

このアルバムは、カーティス・フラー入門者の1枚目として推すには、少し憚られる内容かもしれない。

やはり、ブルーノートの諸作や、ベニー・ゴルソンとのジャズテットを経てから、こういう録音もあるんだ→聴いてみようか? な道筋をたどるべきだろう。

さもないと、せっかく素晴らしいプレイをするカーティス・フラーというトロンボーン奏者が、地味なトロンボーン奏者という認識で終わってしまう可能性があるのだ。

album data

CURTIS FULLER WITH RED GARLAND (Prestige)
- Curtis Fuller

1.Stormy Weather
2.Cashmere
3.Slenderella
4.Moonlight Becomes You
5.Seeing Red
6.Roc and Troll

Curtis Fuller (tb)
Sonny Red (as)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Louis Hayes (ds)

1957/05/14

記:2004/02/23

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