不思議/中森明菜

      2019/01/06

不思議

歌謡曲文脈からしてみれば異質かもしれないけど

このアルバム、熱心な中森明菜ファンからは、このアルバム評判悪いようです。

中森明菜本人による、過剰なエコーとミキシングにより、歌詞が聞き取れないということが最大の理由のようです。

それに、「サウンド」ではなく、あくまで「歌」「歌詞」優先の歌謡曲ファンからしてみれば、明菜の「暴走」がはじまったんでは?!と思ったのかもしれませんね。

というのも、当時の歌謡番組の映像を以前ツイッターで視たんですけど(現在は削除されてしまっている)、その演出からしても「安心安全歌謡曲」が映り流れることが前提のテレビ画面に映しだされる《Back door night》や《マリオネット》は、明らかに異質で、お茶の間に映し出される「安心安全歌謡曲」の文脈からは少々逸脱していますからね。

歌謡曲としてではなく、音楽として

しかし、私のように局地的なファン(つまり、中森明菜プロデュースの『不思議』と『クリムゾン』の2枚だけが好きだったファン)からしてみれば、このアルバムこの実験精神と音楽的なクオリティの高さは、今でも充分に聴くに耐えうる内容だと思っています。

たしかに過剰なエコー処理で「歌詞が聴き取れんやんけ!」と憤慨している高校時代のクラスメートもいたけれども、この「冒険」は、きちんとミステリアスな音楽を作ろうという意図を全うしており、これはこれで一つの完結した歌とサウンドとして成立していると私は考えています。

聴きどころ満載!

初めて耳を通したときの衝撃が、今だに色褪せない『不思議』。

一曲目の、中盤の色気のあるほの暗いベースソロにゾクッ。

ミステリアスなサウンドにエキゾチックな色気を加味している関根安里(EUROX)のヴァイオリンが官能的だ。

反復されるリズムによって、まさに迷宮に誘われる《ラビリンス》。
キャッチーな《ティーンエイジ・ブルー》は、このサウンドとメロディがピッタリとマッチしております。

吉田美奈子作曲の《燠火》。
こういう曲があるからこそ、アルバムの内容がグッと締まるのです。
素晴らしく耽美的です。

うーん、なんで嫌いな人が多いんだろう。不思議です。

歌詞にウェイトを置くか、サウンドにウェイトを置いて聴くか。

どうも、そのへんのところが、歌謡曲の延長で中森明菜を好きになった真性ファンとの耳の置き所の違いなようですね。

もっと広く聴かれてしかるべきな、摩訶不思議快感耽美サウンドだと思うんですけどね~。

album data

不思議 (Warner Music Japan)
- 中森明菜

1.Back door night
2.ニュー・ジェネレーション
3.Labyrinth
4.マリオネット
5.幻惑されて
6.ガラスの心
7.Teen-age blue
8.燠火
9.Wait for me
10.Mushroom dance

 - 音楽