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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

アナザー・グリーン・ワールド/ブライアン・イーノ

      2018/08/12

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Another Green World

特殊な気分が封印されたアルバム

今ではたまにしか聴かないが、聴くたびに素晴らしいアルバムだと思う。
そして、このアルバムほど、素晴らしさをうまく説明できないものも珍しい。

「気分&雰囲気」のパッケージ、あるいは缶詰とでもいうべきか。

決して楽しい気分でもなければ、哀しい気分でもない。つまり極端な感情で括れる類の内容ではない。
天気でいえば、晴れでもなく雨でもなく、曇りがかった晴れ。

一曲一曲がどうというわけではなく、本当はアルバム全体を聴くことなく聴き、なんとなく皮膚でぼんやりと、しかし確かな手ごたえを味わう。

もちろん、味わったからといって、その後どうなる、というわけでもないが。

でも、一度ハマってしまうと、この「特殊な気分を」味わいたくなることがたまにあって、今では私のライブラリーになくてはならないアルバムの一枚となっている。

良さがわかるまで20年

とはいえ、このアルバムをようやく人に勧められるような心境になれたのは、本当に最近のことで、最初にこのアルバムを買って、じわーりと私の心の奥底まで浸透してくるまでは、じつに20年近くの年月がかかっている。

20年かけて、ようやく理解した、いや、「理解」というとおこがましいけれども、イーノのつむぎだすサウンドが細胞に染みてきたと言うべきかもしれない。

パーシー・ジョーンズのベース

突破口は二つあって、ジャケットの素晴らしさと、パーシー・ジョーンズのベース。
当時所有していたのはレコードだったので、大盤で鑑賞するこのジャケットは身近なアートだった(CDのジャケットだとなかなか絵の細やかな質感まで分からない)。

これを眺めながら鑑賞すれば、あっという間に片面分の時間が過ぎていったものだ。

それと、《オーヴァー・ファイアー・アイランド》のベース!
いったい、なんだこりゃ?!
この戦闘的で非定型なベースは!

これを弾いている人の頭の中の構造はどうなってんじゃこりゃ!?と思いながら、この曲を鑑賞の焦点をあてて聞いているうちに、だんだんと、少しずつ、他の曲も耳に馴染んできたという感じ。

パーシー・ジョーンズという、フィル・コリンズも在籍したブランドXというバンドのフレットレスベース奏者だということを知ったのは随分と後のことで、私のベースに対する興味は、このイーノのアルバムがキッカケとなり、ジャパンのミック・カーンへとつながった。

《サムバー・レプティルズ》

それと、地味でなんてこともない普通の曲ではあるのだけれども、なぜかレコードでいうとB面の最初に登場する《サムバー・レプティルズ》という曲が好きな私。

曇った音質、曇ったメロディ、曇った雰囲気。
文字にすると、なにひとつ良いことのない、ある種「不機嫌」なショートナンバーなのだが、なぜか、この曲が気になって(といより、この曲のリズムと荒い音質が気になって)、コードもメロディも簡単だからということも手伝って、高校時代は、シンセサイザーに様々なエフェクターをかまして多重録音をしてこの曲をコピーしたものだ。

そういえば、このアルバムのライナーには、「このアルバムは21世紀になって初めて評価されるだろう」といったことが書かれていたが、とうに21世紀になった今、このアルバムはいかなるを評価されているのかしら?

収録曲

ANOTHER GREEN WORLD (Virgin UK)
- ENO

1. Sky Saw
2. Over Fire Island
3. St Elmo's Fire
4. In Dark Trees
5. The Big Ship
6. I'll Come Running
7. Another Green World
8. Sombre Reptiles
9. Little Fishes
10. Golden Hours
11. Becalmed
12. Zawinul/Lava
13. Everything Merges With The Night
14. Spirits Drifting

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