カフェモンマルトル

text:高野雲

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嗚呼、ファンキー! メッセジャーズの《アロング・ケイム・ベティ》

      2017/05/19

嗚呼、ドキシー

ファンキー・ジャズの定義は諸説あるが、ボビー・ティモンズ作曲の《モーニン》をファンキーじゃないと言う人はまずいないだろう。

「ファンキー」といえば、そういえば、大橋巨泉氏か中村とうよう氏か、ジャズ評論家が書いた「《ドキシー》こそファンキー」という内容のテキストをかつて読んだことがある。

私はソニー・ロリンズが作曲し、マイルス・デイヴィスがリーダーの『バグズ・グルーヴ』に収録されている《ドキシー》が大好きだ。

ユーモラスなメロディでありながら、ひと仕事を終えた時の「ひと段落感」のようなものが、ゆったりとしたテンポと、トランペットとテナーサックスの二管のアンサンブルから発せられている。
倦怠感漂うムードが好物な私としては、単に「《ドキシー》という曲」というよりは、「マイルス、ロリンズ、ホレス・シルヴァーらによって生み出された1954年7月29日の《ドキシー》」が好きなのだ。

なぜ、《モーニン》の後に《ドキシー》のことを書いているのかというと、《モーニン》が収録されているアルバム『モーニン』に収録されている《アロング・ケイム・ベティ》というナンバーが《ドキシー》に通じる心地よい気だるさを感じることができるからだ。



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嗚呼、ゴルソン

『モーニン』収録の演奏のアレンジは、作曲者のベニー・ゴルソンだ。
当時のメッセンジャーズの音楽監督をしていたからね。

それにしても、名曲だ。
さすがに《アイ・リメンバー・クリフォード》の作曲者だ。

そして、曲も良いが、この曲調には、このテイストしかないだろうと思わせるほどの素晴らしいアレンジ。

この気だるさ、そして演奏自体の根っこはパワフルなんだけれども(なにせドラムがブレイキーで、ベースが豪低音のジミー・メリットだからね)、肉体労働のあとに、マッチを摺ってタバコに火をつけて、ふわぁ~と一服している時に感じる至福感に通じる気だるいリラクゼーションがたまらない。

マイルスらの《ドキシー》がファンキーだとすれば、こちらもまさしくファンキー。
心のコリがホグレる柔らかさをもたたえている。

ドキシーはマイルスとロリンズの2管がフロントだったが、メッセンジャーズの方も、リー・モーガンとベニー・ゴルソンによる2菅がフロントだ。

いずれもトランペットとテナーサックスによる絶妙な調和っぷり。

持てる力をセーブして少々抑え目な吹奏、少し金属が掠れているかのような音色のブレンドから生み出される独特の空気感がたまらない。

アルバム『モーニン』といえば、やはり《モーニン》と《ブルース・マーチ》が目玉曲ではあるが、これら人気曲の陰に隠れた名演、《アロング・ケイム・ベティ》にももっと耳を傾けてみよう。

一日の仕事の終わりを彩るに相応しいナンバーになることだろう。

これを聴いてゴルソンが好きになれば、よりいっそう温泉の湯上りにされるマッサージに勝るとも劣らぬ効能を誇る《ファイヴスポット・アフターダーク》に代表されるカーティス・フラーとのコンビによる諸作も、より一層臓腑に染みてくるかもしれない。

記:2017/05/14

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