カフェモンマルトル

text:高野雲

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バック・オン・ザ・シーン/ベニー・グリーン

      2017/05/22

バック・オン・ザ・シーンBack On The Scene

ブルーノートの大胆なトリミング

ブルーノートにしては珍しく、ジャズマンの全身が映っているジャケットだ。

ブルーノートレーベルのジャケットの力強いデザインの秘密の一つに、大胆なトリミング、つまり、大胆な「ジャズマン・チョッキン」があるからね。

オデコのところでチョッキン、
カラダの両端チョッキン、
下半身チョッキンなどなど、
大胆なチョッキン、いやトリミングがジャケットの力強さとインパクトを生み出す一要因だったんだよね。

ソニー・ロリンズの『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』やジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』のジャケットアートいい例だと思う。

また、有名な脚のジャケットの『クール・ストラッティン』も、対象はジャズマンじゃないけれども、脚チョッキンですからね。

しかし、この“チョッキン”をまぬがれているジャケットも中にはある。

ベニー・グリーンのリーダー作『バック・オン・ザ・シーン』がその1枚だ。



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ウルフとマイルスのクリエイティヴバトル

地味だけども、よく見ると味のあるジャケ写です。

ベニー・グリーンは、誰に向かって手を振ってるんだろう?

タクシーでもつかまえているのかな?

いや、よく見ると人差指を立てているぞ。

何かを指差しているようだが、その指先にあるものは?

このように、なんだか想像力を逞しくしてしまうジャケ写だ。

きっと、クラシック愛好家で、ジャズにはそれほど愛着のないデザイナー、リード・マイルスに、大事な写真を「チョッキン」されないために、カメラマンのフランシス・ウルフは、グリーンに意味ありげなポーズを取らせ、写真の構図も人物全体を写す“引き”にしたのかもしれない。

これなら、チョッキンできないだろう?

とばかりに。

もし本当にそうだったとすると、写真家とデザイナーのクリエイティヴなバトルからブルーノートの名ジャケットが生まれていたという、これまた興味深いテーマが持ち上がるかもしれない。

好演!チャーリー・ラウズ

それはさておき、このアルバムは、グリーンのトロンボーンはもちろんのことだが、私はチャーリー・ラウズのテナーサックスのプレイに惹かれている。

ラウズの目も覚めるような好プレイは、セロニアス・モンクとの共演したどの演奏よりものびのびとしている。

ひょっとしたら自身がリーダーのセッションをも凌駕するのではないかと思うほど。

どうも、この人は、“生まれついての名脇役”なのかもしれない。

モンクのカルテットでフロントを張っているときは、いささか緊張気味の固いプレイが多い。

また、自分がリーダーのアルバムのときも、出来は悪くはないのだが、リーダーとしての気負いが先立ってしまって、もっとホグレてもいいのではないのか?と思わせるソロも少なくない。

要するに、ラウズという人は、生真面目な性格なんだと思う。

主役になると、相応の責務を全うしようという義務感が働いてしまい、演奏自体もどこか緊張感を帯びたものになってしまうのかもしれない(モンクのカルテットでは正確にはリーダーではないが、バンドの中では一番目立つポジションだし、リハーサルでは、メンバーをしきる実質的なリーダーだった)。

その反対に、自分がサイドマンに回ると、とたんに義務感から解放され、のびのびとしたプレイを繰り広げる。

このアルバムでのプレイがまさにそうなのだが、この滑らかさはどうだろう?

本当に滑るように流麗なフレーズが次から次へと湧きでてきて、本当にチャーリー・ラウズ?と最初は耳を疑ってしまったほどだ。

極上のB級グルメ的味わい

そんな闊達なプレイをするラウズとグリーンのトロンボーンは抜群のコンビネーションを見せている。

テーマのアンサンブルは暖かく重厚な響きをたたえ、ソロパートになると、2人ともリラックスしながらイマジネーション豊かな演奏を繰り広げている。

さらに、リズムセクションも渋い。
いや、渋すぎる(笑)!

ドラムのルイス・ヘイズはまだしも、ピアノがジョー・ナイトに、ベースがジョージ・タッカー。

うーん、B級グルメな味わいですねぇ。

レバニラ炒めや餃子ライスのような味わいの人たち(笑)。

しかし、決して彼らは実力がないわけではない。

強いて無いものを揚げるとしたら“華”かな?

主役をはれるような強烈な存在感、そういった華。

しかし、主役たりうる“華”がなくても、いやないからこそ、彼らは相手のプレイに柔軟に合わせられる協調性をバッチリと兼ね備えている。

そういう人たちが力を合わせて演奏をすると、このようなオイシイアルバムが出来上がるわけです。

いまひとつ知名度のないアルバムかもしれないが、内容は極上。

憂鬱テナーなイメージの強いラウズが、まるで憑きものでも落ちたかのようなプレイをしているのを聴けるだけでも耳を通してみる価値あり!

記:2010/01/14

album data

BACK ON THE SCENE (Blue Note)
- Bennie Green

1.I Love You
2.Melba's Mood
3.Just Friends
4.You're Mine You
5.Bennie Plays The Bues
6.Green Street

Bennie Green (tb)
Charlie Rouse (ts)
Joe Knight (p)
George Tucker (b)
Louis Hayes (ds)

1958/03/23

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