カフェモンマルトル

text:高野雲

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トニー・ベネット&ビル・エヴァンス・アルバム/トニー・ベネット&ビル・エヴァンス

      2017/05/21

Tony Bennett & Bill Evans AlbumTony Bennett & Bill Evans Album

エヴァンスの代表曲が収録

男性ヴォーカリスト、トニー・ベネットと、ビル・エヴァンスの共演盤。

ヴォーカルとピアノのデュオという、シンプルかつ渋い編成だ。

トニー・ベネットのファンより、どちらかというとエヴァンス・ファンに知名度が高いアルバムなのかもしれない。

なにせ、エヴァンスの代表曲で、さらに彼を代表するアルバム『ワルツ・フォー・デビー』に収録されている《マイ・フーリッシュ・ハート》や《ワルツ・フォー・デビー》の2曲が収録されているのだから。

「今度はどんな演奏がなされているのだろう?」と、モニカ・ゼタールンドの『ワルツ・フォー・デビー』をチェックする時のような興味で、このアルバムを手にした人が多いだろうことは容易に想像できる(かくいう私もその一人)。



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声が苦手な歌手と共演した時代背景

このアルバムが録音された年は、1975年。

ベネット48歳、エヴァンス45歳の時だ。

1970年代中盤といえば、世はフュージョン全盛期。

今でこそビル・エヴァンスは、ジャズピアニストのビッグネームの1人として認知されているが、当時のエヴァンスは、時代に流れに取り残された「いまだアコースティックでピアノトリオをやっている人」ぐらいの認識しかなかったようだ。

よって、仕事の依頼そのものも少なかったことは容易に推察できる。

エヴァンスはベネットのことを「偉大な歌手だが、声が苦手」と評していたにもかかわらず、ベネットとの共演依頼を断らなかったのは、このような時代背景があったこともあるのだろう。

歌伴に徹するエヴァンス

しかし、エヴァンスの共演相手の好き嫌いは別として、さて、肝心のこのアルバムの出来はどうなのかというと、決して悪くはない。

相性が良い、というよりも、まったく個性の違う二人だからこそ、しっくりと音楽的なマッチングが遂げられたというべきだろう。

朗々たるベネットはあくまで男性的。

対するエヴァンスは女性的かというと、そういうわけでもないのだが、堂々たる大股歩きのベネットのヴォーカルに対して、細やかな気配りの行き届いたピアノでサポートをしている。

あくまで「歌伴」としての己の役割を認識し、ベネットのヴォーカルの陰のサポーターたらんとして一歩身を引いた姿勢が、ベネットの歌唱を引き立て、かわりに、いつものエヴァンスらしさが多少影をひそめることになった。

ハスキーなベネット、繊細で硬質なエヴァンスのピアノ。

音色的にも絶妙なマッチングをみせるこのアルバムは、ヴォーカルアルバムとしては、非常にクオリティの高い仕上がりとなった。

ただし、エヴァンスファンにとってみれば、当然のことながら、「全開エヴァンス節」で腹いっぱいになれないことは仕方のないことではある。

記:2011/05/07

album data

TONY BENNETT & BILL EVANS ALBUM (Fantasy)
- Tony Bennett

1.Young And Foolish
2.The Touch Of Your Lips
3.Some Other Time
4.When In Rome
5.We'll Be Together Again
6.My Foolish Heart
7.Waltz For Debby
8.But Beautiful
9.The Days Of Wine And Roses

Tony Bennett (vo)
Bill Evans (p)

1975/06/10-13

 - ジャズ ,