カフェモンマルトル

text:高野雲

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ア・キャディ・フォー・ダディ/ハンク・モブレイ

      2017/05/22

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ア・キャディ・フォー・ダディA Caddy For Daddy

リー・モーガンのトランペットと、ジャズロック風のビートは相性がいい。

それは、ジャズ・ロックの走りと呼ばれる『ザ・サイドワインダー』以来培ってきた彼流の、リズムに対してのアプローチがあるからだ。

特に、高音で ♪パラ・パラ・パラッとリズミックにくり返されるフレーズは、ジャズロック、というよりは、4ビートの面影を微妙に残したビリー・ヒギンズが叩き出す柔らかいビートに対して、垂直に切り込み、リズムとの抜群のコンビネーションを見せる。

ハンク・モブレイとリー・モーガンのコンビが、前作『ディッピン』に引き続き、ジャズロック風テイストに挑んだ『ア・キャディ・フォー・ダディ』。

ここでもリー・モーガンは大活躍。

人によっては、「また、あのフレーズか」と食傷気味になるかもしれないが、タイトル曲で先発を決めるリー・モーガンの一発目のフレーズが私は好きだ。

これは、《ザ・ランプローラー》など、モーガンがジャズロック・リズムで演奏している曲で散見されるフレーズだが、このフレーズほど、ジャズロックという漠然として形容を具現化させるものもない。

そして、フレーズのみならず、彼が本質的に持っているアタックの強さと、軽やかさが、ジャズロックのビートと見事に合致するのだ。

そして、このアルバムのリーダー、モブレイもジャズロックテイストのリズムと見事なマッチングをみせる。

柔らかい音色、スムースなフレージング。

そのかわり、アタック感は弱い、モブレイの“柔らかいテナー”。

しかし、この柔らかさが、ジャズロックのリズムと絶妙に溶け合っているのだ。

フレージングにも鍵があるのだと思う。

甘くスムースなモブレイのフレージングは、縦が強調されたリズムに対して、横の軸で流れてゆく。

特に、タイトル曲のモブレイのアドリブは、リズムフィギュアを引き立てるような工夫が随所に施されている。

少し長めのトーンを駆使したり、あるいは、ひとつの短い旋律を反復させたり、と。

それでいて、スタイルが激変しているわけでもなく、ハードバップを吹く“いつものモブレイ”を聴いている感覚で親しめるのだから面白い。

アドリブの切れやインパクトは、リー・モーガンに一歩譲るタイトル曲の演奏だが、そんなモブレイだって、さすがリーダー、よく聴けばかなり細かいニュアンスに気を使っていることが分かる。

リー・モーガンのリーダー作でも演奏されている《ヴィーナス・デ・ミロ》は、こちらでも再演されている。

ユーモラスで、ちょっと素っ頓狂な音の跳躍が楽しいこの曲、モブレイとモーガンのコンビネーションは抜群だ。

ピアノは、コルトレーンの元を去った直後のマッコイ・タイナー。

最初、何も考えずに聴いていたときは、ピアニストはハロルド・メイバーンあたりかな? などと思ってパーソネルを見たら、なんとマッコイだったので驚いたことがある。

キャッチーなスリーコードジャズロックのタイトル曲《ア・キャディ・フォー・ダディ》は、頻繁に聴きすぎると飽きるのも早いが、タイトル曲は、このアルバムのコマーシャルな部分。

モブレイやモーガン、ヒギンズらの本領発揮はむしろ2曲目の《モーニング・アフター》だろう。

とにもかくにも熱い!

もちろんタイトル曲も悪くはないが、この曲だけをもってして、このアルバムの印象をキャッチーなモブレイとして片付ける前に、是非、大音量で《モーニング・アフター》にも耳を通してほしい。

やはり、どんなに新しいリズムに取り組もうとも、彼らのメインの舞台は4ビートというリズム。

リー・モーガン、ハンク・モブレイ、カーティス・フラー、マッコイ・タイナー。

長らく第一線で4ビートの修羅場をくぐり抜けてきた男たちの凄みと風格が感じられるのだ。

記:2009/11/10

album data

A CADDY FOR DADDY (Blue Note)
- Hank Mobley

1.Caddy for Daddy
2.Morning After
3.Venus Di Mildew
4.Ace Deuce Trey
5.3rd Time Around

Hank Mobley (ts)
Lee Morgan (tp)
Curtis Fuller (tb)
McCoy Tyner (p)
Bob Cranshaw (b)
Billy Higgins (ds)

1965/12/18

 - ジャズ , ,