セシル・テイラーのリズム

      2017/09/24

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セシルの上にも3年

「セシル・テイラーと共演するには3年間鍛錬しなければならない。」

ジャズに詳しい人なら、この言葉、どこかで聞いたことがあるはずです。

では、その3年間、共演者はどのような修行をするのでしょうか?

変幻自在なピアノを弾くテイラーのことですから、なかなか想像がつきませんよね。

とくにハーモニー面に関しては、バルトークの影響を色濃く感じることが出来る厳格かつ硬い響きのピアノですから、あのような響きに対して、他の演奏者は瞬時にどのように反応するのかは、まったくもって想像がつきません。

ちなみに、ハーモニーといえば、ジャズ方面であればデイヴ・ブルーベックの影響を受けたということを何かの本で読んだ記憶があります。

たしかにゴツゴツした和音の打鍵は両者共通したところを見出すことは出来ますね。

その一方で、テイラーはホレス・シルヴァーのことも好きなようで、初リーダー作である『ジャズ・アドヴァンス』を録音した頃は、シルヴァーのレコードを聴きまくっていたそうですが、同アルバムの流麗でもファンキーでもないピアノを聴くと、どこでどう影響を受けたのか、まったくもって分かりません。

もっとも、具体的なフレーズやハーモニーなどのアプローチではなく、演奏に臨む姿勢のようなものに影響を受けたのかもしれませんね。

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定型リズムの枠を広げる

さて、3年間、テイラーと共演するために何をどう修行をするのかというと、書いていて思い出しました。

リズムです。

ジャズマンはドラマーもベーシストも、ジャズの代表的なリズムである4ビートを刻み、リズムキープが出来ることが必要最低条件です。

いや、4ビートが出来ないジャズマンっていませんよね。

ですので、彼らの体内には「4つ刻み」というものが染み込んでいるのです。
ま、3拍子もそうかもしれませんが。

これら定型リズムの枠を取り払い、もっと広がりのある自由度の高い、いわば拡散するようなリズムをテイラーの元で共演し習得するのに3年がかかるようなのですね。

ビュエル・ネイドリンガー

たとえば、ベースのビュエル・ネイドリンガー。

彼は最初は4ビートの4つ刻みしか出来ないベーシストであったようですが、テイラーと共演するうちに、変則的なビートを刻む(色付けする?)ようなスタイルに自らの技量を拡張していったようです。

実際、テイラーの初レコーディングである『ジャズ・アドヴァンス』でのネイドリンガーは堅実なビートを刻んでいますからね。

それが年代を追って聴いてゆくと、少しずつですが、ベースキーパーであるベースの役割が変わってゆくところが面白いし、興味深いですね。

サニー・マレイ

それと、もう一人。
えっ、そうだったんだ?と思うのが、サニー・マレイ。

サニー・マレイといえば、細かなパルスをシンバルから放出するドラマーというイメージが強く、ステディな4ビートからはもっとも縁遠いドラマーだと思っていたのですが、テイラーと共演する前は、わりとオーソドックスな4ビートを刻むタイプのドラマーだったようです。

彼のシンバルワークといえば、アルバート・アイラーの『スピリチュアル・ユニティ』や、テイラーの『カフェモンマルトル』のライヴの音がすぐに思い浮かびますが、あのような自由度の高い拡散ビートを放つドラマーがステディなリズムキープがキャリア初期のスタイルであったとはにわかには信じられません。

それだけ「テイラー効果」が大きかったということなのでしょうか。

肉体の反応速度

テイラーのピアノは「超」がつくほど緻密でありながらも、圧倒的なスケールの広がりが感じられます(初期の演奏はどちらかというと密室的ですが)。

その広大さを感じさせる大きな要因は、時に暴力的なまでに凄まじい彼のピアノにもあるのでしょうが、それ以上にリズムの振幅(時間の振幅)の大きさと、ビートの揺らぎの幅の広さにあるのではないかと改めて思います。

そうなるためには、つまりテイラーが目指す音のタイム感覚を身に着けるには、やはりリズム、ビートに対しての考え方を根本から改め、さらに、それに肉体の反応速度が付いていくまでには、やはり膨大な時間を要するのでしょう。

それが、「3年」ということなのかな?と私は推測しています。

記:2017/04/01

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