カフェモンマルトル

text:高野雲

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ゲイリー・トーマスが吹く《チェルシー・ブリッジ》

      2017/05/20

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ビリー・ストレイホーン作曲の《チェルシー・ブリッジ》という曲が好きだ。

私の場合、トミー・フラナガンの『オーヴァー・シーズ』の演奏を聴いて好きになった。

フラナガンの抑揚の付け方のバランスが素晴らしい、小粋な演奏の力に負うところも大きいのだろうが、曲そのものも素晴らしいと思っている。

この曲を聴いて思い浮かべる光景は、いつも朝。しかも、夜明け前後の早朝だ。

場所はどこでも良いのだが、トミフラのバージョンの場合、都会の早朝という感じがする。

一方、都会的ではない、もっと茫洋とした《チェルシー・ブリッジ》の演奏もある。

ゲイリー・トーマスのバージョンだ。

これは、『ホワイル・ザ・ゲート・イズ・オープン』に収録されている。

この演奏は、トミフラのバージョンとは趣きがまったく異なる。

どちらかというと、街よりも自然。のんびりとした郊外、霧に包まれた早朝といった感じだ。

眠たげで、目覚めたてのようなサックスの響きがムード満点だ。

ゲイリー・トーマスがスタンダードに挑んだ作品として知られる『ゲート・イズ・オープン』。

斬新なスタンダード解釈が発売当時は話題となった本アルバム。

パワフルなブローに加えて、時折殺気すら垣間見せるゲイリー・トーマス。豪快で野太いサウンドは、彼最大の個性といえるが、そのトーンで茫洋としたたたずまいで奏でられる「チェルシー・ブリッジ」もまた格別。

スピード感のあるスタンダードばかりが収められた本アルバムの中では良いアクセントとなっている。

この演奏は、ベースとギターのトリオで演奏されているが、このシンプルなフォーマットで演奏される《チェルシー・ブリッジ》は、へヴィーでタイトな演奏の多いアルバムの中では、良いアクセントにもなっている。

モワッとした濃い霧を思わせる濃密なゲイリーのテナー。

これを聴けば、ゲイリー・トーマスというテナーサックス奏者は、デビュー時で日本で騒がれたイメージとは裏腹に、単にタフで、イケイケで突撃隊長的なテナーサックス奏者というのは、彼のほんの一面でしかないことがお分かりいただけることだろう。

記:2003/01/31

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