カフェモンマルトル

text:高野雲

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チルドレン/デヴィッド・マレイ

      2017/05/19

ChildrenChildren

とにかく、《デヴィッド・ミンガス》が最高だ。

そして、捩れまくったギターを弾くジェームズ・ブラッド・ウルマーが最高。

デヴィッド・マレイのリーダーアルバムだが、個人的にはウルマーの怪しすぎるギターを聴くためのアルバムだと思っているほどだ。

1曲目の《デヴィッド・ミンガス》でのウルマーの頑張りっぷりはすごい。

身体の内側が裏返ってしまうほどの、怪しく、まっ黒なノリを生み出すギターのカッティングを執拗に繰り返すウルマー。

ギター・ソロのパートになっても、ほとんどメロディらしいメロディは弾かずに、ひたすらカッティングを繰り返しているところが良い。

この繰り返しが、じつに気持ちが良いのだ。

この独特なギターのバッキングを引き立てているのが、マーヴィン “スミッティ”スミスと、ロニー・プラキシコのリズム・セクションだ。

マーヴィン “スミッティ”スミスの、ハネ気味で、突拍子も無いところで派手なフィル・インを入れるドラミングは相当気持ちが良い。

また、ロニー・プラキシコの、かなりフェイクしたベースも、この演奏のリズムが放つ“邪悪なニュアンス”を倍増させる効果があって、かなり良い感じだ。

この二人のコンビネーションと、ウルマーのギターが作り出す柔軟かつ強靱なリズムは、本当にいつ聴いても凄いと思う。

もちろん、マレイの重量級のテナーも聴きものだ。

下からヌーッと突き上げてくるような不気味さと、フラジオを駆使したフリーク・トーン寸前のハイトーンで吹きまくるソロは、ゾクッとくるような迫力がある。

この邪悪で黒光りのする《デヴィッド・ミンガス》。私の場合は、『チルドレン』といえば、この1曲を聴くためのアルバムだと思っているぐらいだ。

それぐらい、この演奏は、凄い。

この1曲だけでも、「買い」に値するアルバムだと思っている。

ほか、ドン・プーレンのスケールの大きなピアノが、ツボにはまれば、かなり感動的な《オール・ザ・シングズ・ユー・アー》、タイトに締まったドラムが大暴れの《テンション》もなかなかの好演。

いやはや、このアルバム大好き♪

記:2002/06/22

追記

このアルバムの《デヴィッド・ミンガス》があまりにも好きすぎて、ジャズ喫茶『いーぐる』で催された「納涼持込盤大会」にもかけさせていただきました。

その時の後藤雅洋マスターからのコメントが以下。

2008年8月16日(土)
ちょっとした思いつきで開催した「納涼持込盤大会」、思いがけず楽しいイヴェントとなった。各自がアルバムを持ち寄る企画は、以前から年末にその年のベスト盤大会を行なっていたが、今回のようなゆるい縛りの場合、講演者の個性がより明瞭に現れるのである。
私としては「納涼」なのだから皆さん涼しげなサウンドをご持参くださると思っていたが、これが大誤算。半分以上がガマン大会的暑苦しいサウンドのオンパレード。ジャズファンって、ヒネくれた人たちですねえ。
たとえば、高野雲ちゃんはデヴィッド・マレイがジェームス・ブラッド・ウルマーとぐちょぐちょの熱演を繰り広げる『Children』(Black Saint)から《David / Mingus》。その言い訳が、「暑さをしのぐにはより熱い音を」というのだから笑ってしまう。しかしこのコメント、あながち的外れでもなく、暑いときに激辛カレーを食べると身体がシャンとするような効果がある。最近『カレーの本』を企画編集した雲ちゃんらしい発想である。

いーぐる後藤の新ジャズ日記より

いやぁ、後藤さん、ワガママな選曲をかけさせていただける環境をご提供いただきありがとうございました!

そう、このアルバムは猛暑の暑さを吹き飛ばすパワーをも持っているのです!

記:2008/08/31

album data

CHILDREN (Black Saint)
- David Murray

1.David-Mingus
2.Death
3.All The Things You Are
4.Tension

David Murray (ts,bcl)
James "Blood" Ulmer (g)
Don Pullen (p)
Lonnie Plaxico (b)
Marvin "Smitty" Smith (ds)

1984/10/27 & 11/15
at Vanguard Studios,New York City

 - ジャズ ,