クール・ストラッティン/ソニー・クラーク - カフェモンマルトル

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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

クール・ストラッティン/ソニー・クラーク

      2018/07/03

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クール・ストラッティンCool Struttin'

脚の主

ハイヒールのジャケットで有名な一枚だ。

ニューヨークの路上をクールな足取りで歩く女性の足が大胆にトリミングされたジャケットは、ジャズファンならずとも多くの人が目にしているジャケットアートだろう。

ちなみに、この脚の主は誰か?

ジャケット写のクレジットが鍵を握っている。

フォト⇒リード・マイルス。

あれ?

リード・マイルスはブルーノートのカメラマンではなくジャケットのデザイナーなのでは?

ブルーノートのジャケ写は、だいたいがフランシス・ウルフだ。

しかし、このジャケ写の撮影者はリード・マイルスとなっている。

そう、これはリード・マイルスが、助手の脚を急遽撮影したものらしい。

「クール・ストラッティン」。

アルバムタイトルは決まっていたものの、ジャケットのビジュアルが思い浮かばない。

ブルーノートの社長、アルフレッド・ライオンがリード・マイルスの事務所でジャケ写の打ち合わせをしていた。

アイデアが湧かないままランチの時刻になった。

近くのレストランで打ち合わせをするか。

女性のアシスタントも誘い外に出る。

ちょっと待っててくれ!

慌ててオフィスに戻るリード・マイルス。

カメラをオフィスから持ってきた。

助手に歩いてみてと注文。

助手歩く。

マイルス撮る撮る、脚を撮る。

その中の1枚がアルバム『クール・ストラッティン』のビジュアルに使用されたというわけだ。

歩く文字

有名な美脚ジャケ写も良いが、私の場合は、写真の上のタイポグラフィを粋に感じる。

COOL STRUTTIN'/SONNY CLARK

このフォントが上下に揺れており、まるで文字も歩いているように見えるのだ。

写真もデザインも同一人物ということもあり、おそらく助手の脚を撮影した時点からマイルスの頭の中には、文字を配列するアイデアがあったのかもしれない。

白米のような味わいのピアノ

さて、肝心なアルバムの音楽について。

『クール・ストラッティン』は、ソニー・クラークというピアニストの代表作であるばかりではなく、モダン・ジャズが最も輝いていた時代の、素晴らしい演奏が封じ込められた一枚でもある。

ジャケットと同等、もしくはそれ以上の魅力が中身の音楽にはある。

特にタイトル曲では、冒頭の数音で、このアルバムのムードに引き込まれてしまうこと請け合い。

ブルース形式の曲で、簡潔だが、聴き手を魅了してやまないメロディだ。

ふっくらとコクがあり、粘っこいノリのピアノを奏でるソニー・クラークのピアノが病みつきになること請け合い。

もっとも、この味わいは地味な味わいでもあり、私の場合は、2本の管楽器の合間から顔を出す、このふくよかなピアノの味わいの虜になるには随分と時間がかかったものだ。

ジャッキー・マクリーンのアルトの熱っぽい吹奏も良いが、まるでその熱を静かに沈めるかのようなアート・ファーマーの知的で抑制の利いたトランペットも演奏をピリリと引き締めている。

2曲目の《ブルー・マイナー》も聴けば聴くほどその魅力の虜になってしまう。

ラテンリズムに変化するサビの箇所は一度聴けば忘れないほどの魅惑的なメロディだ。

マクリーンのアルトと、ファーマーのトランペットのブレンド効果がばっちりと効いたアンサンブルで、『クール・ストラッティン』の成功は、この管楽器奏者二人の組み合わせでなければ成しえなかったのだろうということを実感させられる。

きっとどちらか一方が別の管楽器奏者だったら、ここまで素晴らしい内容、おいしい音色として後世に残ったかどうか、はななだ疑問だ。

《クール・ストラッティン》と《ブルーマイナー》。

この2曲がこのアルバムの看板で、『クール・ストラッティン』の素晴らしさを語るうえでは、この2曲が引きあいに出されることが多い。

しかし、この2曲に満足せずに《ディープ・ナイト》にも耳を傾けて欲しい。

演奏が始まるとしばらくはピアノトリオで演奏が進んでゆくが、この箇所こそ、ピアニスト、ソニー・クラークのリーダーアルバムならではの見せ所でもある。

哀愁ただよう切ないメロディを、少々早めのテンポで必要以上にセンチメンタルに陥らずにアプローチするクラーク。

これに覆いかぶさるように飛び出すアート・ファーマーのトランペットのタイミングも見事だ。

隠れた名演奏。

《クール・ストラッティン》《ブルーマイナー》に続く、第3の『クール・ストラッティン』代表曲だ。

聴けば聴くほど味わいの増す名盤とは、まさに『クール・ストラッティン』のためにあるような言葉。

まるで、毎日食べても飽きない白米のような味わいだ。

白米が主食の日本で受け、白米が主食ではないアメリカ本国では受けなかったのも分かるような気がする。

記:2008/06/03

album data

COOL STRUTTIN' (Blue Note)
- Sonny Clark

1.Cool Struttin'
2.Blue Minor
3.Sippin' At Bells
4.Deep Night
5.Royal Flash
6.Lover

Sonny Clark (p)
Art Farmer (tp)
Jackie McLean (as)
Paul Chambers (b)
"Philly" Joe Jones (ds)

1958/01/05

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