カフェモンマルトル

text:高野雲

*

ダーク・ビューティ/ケニー・ドリュー

      2017/05/19

Dark BeautyDark Beauty

トタパタ・トタパタ。トタトタ・トスントスン……。

このアルバムのアルバート・ヒースのドラミングを音にすると、こんな感じになる。

横に揺れるというよりも、垂直に斬り込むようなノリのドラミングが、アルバム全体を支配している。

それがプラスに作用していると感じるのは、《オール・ブルース》のドラム。

「垂直斬り込み打法」が圧巻だ。

ひたすらドライブしまくる演奏は、ものすごい高揚感をもたらしてくれる。

逆に、どうもケニー・ドリューのピアノよりも、ポタパタしたスネア・ワークに耳がいってしまいがちなのが、一曲目の《ラン・アウェイ》。

ゴキゲンにスイングしているドリューのピアノの前で、ボクサーが規則正しく「ボム! ボム!」とサンドバッグを殴っているようだ。

一旦気になると、ピアノよりもドラムのほうばかりに耳が吸い付いてしまう。

せっかく、ベースとピアノのかけ合いがゴキゲンなこの曲も、アルバート・ヒースのドラミングで良さが半減していると感じるのは、私だけだろうか?

いや、こういうドラミングだって面白いじゃないか、という人もいるので、横乗りでぶいぶいと言わせた方がいいと思っているのは、もしかしたら私だけかもしれないが。

渡欧し、コペンハーゲンに居を据えたケニー・ドリュー。

その後、晩年まで活動を伴にする14歳年下のベーシスト、ニールス・ヘニング・エルステッド・ぺデルセンと、躍動感溢れるドラミングを叩きだすアルバート・ヒースという俊英2名とトリオを組んだケニー・ドリュー。

長らく続く、このトリオのキャリアの初期に吹き込まれたこのアルバムは、ヨーロッパ時代に出したピアノ・トリオの中では最高傑作との誉れも高い。

50年代のブルーノートやリヴァーサイド時代のドリューの演奏も素晴らしいが、渡欧後のこのアルバムは、アメリカ時代にはない新しい表現の境地が感じられる。

シャキッ!と音の粒立ちが良く、メリハリの利いたタッチは相変わらずだが、アメリカ時代には無いエレガントさも芽生えている。

特に「♪ちり~ん」と鈴の音が心地よい催眠効果を誘うタイトル曲と《サマー・ナイツ》のようなスローテンポのナンバーや、《イット・クッド・ハップン・トゥ・ユー》のイントロを聴けば分かるとおり、アメリカ在住時代にはない表現領域を獲得していると思う。

そして、個人的にはむしろ、クラシカルなニュアンスが少々ブレンドされた演奏や、スローテンポのナンバーの演奏のほうに魅力を感じる。

アルバート・ヒースのドラミングには好き嫌いが分かれるだろうが、アルバム全体に漲る躍動感、ドライブ感は素晴らしいので、ケニー・ドリューを知らない人にも安心して薦められる内容だ。

聴きすぎると、意外と同じフレーズを多用していることに気付いてしまう演奏もあるが、彼の晩年に日本のレコード会社が企画、制作した、ドリューにスタンダードばっかりを弾かせた一連のアルバムよりは、ずっと素晴らしい内容だと思う。

記:2002/05/29

album data

DARK BEAUTY (Steeple Chase)
- Kenny Drew

1.Run Away
2.Dark Beauty
3.Summer Nights
4.All Blues
5.A Felicidate (*)
6.It Could Happen To You
7.Love Letters
8.Silk Bossa
9.Blues Inn
10.In Your Own Sweet Way (*)
11.A Stranger In Paradise (*)

Kenny Drew (p)
Niels-Henning φrsted Pedersen (b)
Albert "Tootie" Heath (ds)

1974//05/21 & 22

 - ジャズ