カフェモンマルトル

text:高野雲

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ディッピン/ハンク・モブレイ

      2017/05/21

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ディッピンDippin'

モブレイの「名演」?

ハンク・モブレイの代表作かつ筆頭格扱いの『ディッピン』。

名盤の理由は、2曲目の《リカード・ボサ》の功績が大きい。

というか、それに尽きるというような気がしないでもないが……。

しかし、皆さん、本当に《リカード・ボサ》をハンク・モブレイの名演だと思って聴いているのだろうか?



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名曲《リカード・ボサ》

おそらくほとんどの人は、この曲のテーマのメロディに心奪われているんじゃないだろうか?(もちろん、それが悪いとは言わない)

だとしたら、それは「名曲」であり、「名演」とは言わないよね?

おそらく、この演奏が評価される大半の理由は、この曲が元から持つ旋律の力だ。

演奏が良い悪い以前に、曲が良いということでの評価なのだ。

では、魅惑的な旋律の後に登場するモブレイのアドリブ、耳に残っている人?

一部でもいいから口ずさめる人?

意外と少なくありませんか?

メロウにアドリブを取るモブレイのソロは、良くいえば、この曲の持つムードをうまく引き継いでいる。

しかし、だからこそ、あまり印象に残りにくい、のかもしれない。

もちろん、悪いアドリブではないが、これぐらいのアドリブは、他のモブレイの諸作を聞けば、まだまだ沢山あるでしょう。

とりたてて、《リカード・ボサ》を名演として奉る理由は、このアドリブのどのへんのフレーズにあるんですか?な感じなんだよね、私にとっては。

案の定、というか、後年のモブレイはこの曲を演奏したこと、覚えてなかったそうで。

つまり、演奏者本人からしてみても、とりたてて印象深い演奏というわけでは無かったようなのだ。

名演!リー・モーガン

「名演」ということで考えれば、《リカード・ボサ》においての名演は、なんといっても、リー・モーガンでしょう。

なんてメリハリのあるフレージングなんだろう。

中高域を駆使した安定感のあるメロディアスなトランペット。

この曲の持つ哀愁ムードを上手に抽出して、立体的に最構築している。

「名演」という括りで《リカード・ボサ》を語るのならば、明らかにリーダーのモブレイよりも、サイドマンのモーガンに軍配が上がる。

ま、別に勝負しているわけじゃないんだろうけどね。

《ザ・ディップ》のハロルド・メイバーン

この『ディッピン』で言えば、私にとっての名演・名曲は、なんといっても、オープニングを飾る《ザ・ディップ》だ。

この、ちょっと野暮ったいけれどもカッコいいジャズロックは、いつ聴いても最高。

親しみやすく、丸くて、いけいけ調。

これを聴くと自然と口が緩み、なおかつ勇気すらも湧いてくるのだ。

たいがいのことは、勢いとノリだけで解決できそうな気分になってくる。

この曲にしろ、《リカード・ボサ》にしろ、曲の雰囲気を決定しているのは、ピアノのハロルド・メイバーン・ジュニアだ。

彼の和音。
彼のリズミックなバッキング。

ベタで、キャッチーで、分かりやすくて、なおかつ、モブレイやモーガンの活躍の場を派手に演出しているのだ。

記:2005/12/08

album data

DIPPIN' (Blue Note)
- Hank Mobley

1.The Dip
2.Recado Bossa Nova
3.The Break Through
4.The Vamp
5.I See Your Face Before Me
6.Ballin'

Hank Mobley (ts)
Lee Morgan (tp)
Harold Mabern Jr. (p)
Larry Rideley (b)
Billy Higgins (ds)

1965/06/18

 - ジャズ ,