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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

哀愁ラッパ、ケニー・ドーハムと「ミルキーはママの味」

   

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暖かく切ないトランペット

最近の不二家ミルキーのCMを見ていると、最後のサウンドロゴ、そう、あの耳に馴染みのある「♪ミルキーはママの味~」のメロディがトランペット一本で吹かれているんですね。

残念ながら、このメロディを吹いているトランペッターは誰だかわからないのですが、その音色と、素朴で暖かなムードから私はケニー・ドーハムを思い出してしまいました。

特に、ケニー・ドーハムの代表作である『静かなるケニー』でしんみりと吹かれている《マイ・アイデアル》や《マック・ザ・ナイフ》のテイストにそっくり。

参考記事:静かなるケニー/ケニー・ドーハム

なんだか、ちょっとさびしいけれども心温まる風情。
夕暮れテイスト、畳敷きの四畳半。
日本人好みのテイストといえば、そのとおりかもしれないけれど、この音の風景は、アメリカやヨーロッパの郊外の風景にも似合うんじゃないかな。



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ロングセラーの懐かしさ

昭和26年(1951年)に発売され、じつに60年以上も販売されているロングセラー商品、ミルキーのこのCMには「懐かしさ」を視聴者に感じさせる要素を盛り込もうという意図が、あのトランペット一本のサウンドロゴにはこめられているのかもしれませんね。

だとすると、やられたね。
哀愁のケニー・ドーハムなテイストは、もう懐かしさと郷愁を感じまくり、かつ心がほっこりとしてきて、思わず懐かしいミルキーを口の中に放り込みたくなってしまう。

昔、横浜に住んでいた頃の私は、風邪を引いたり体調を壊すたびに近所の小児科の病院に連れて行かれたものだが、そのときの大橋巨泉に似た先生からは診察が終わるたびにミルキーを一粒もらっていたものですが、そのときの甘くまろやかな味が口の中に蘇ってくるのです。

ああ、なんてマインド・コントロールされやすい自分(笑)。

『静かなるケニー』もいいけれど

もし、CMのトランペットに魅せられた方は、ケニー・ドーハムの『静かなるケニー』を聴いてみて欲しいと思います。

もちろん私も『静かなるケニー』は好きです。

ただ、ケニー・ドーハムが持つ「切ないテイスト」が好きな私としては、「せつなさ」と「哀愁」が前面に出すぎた『静かなるケニー』よりも、もう少しエキサイティングなアルバムに収録された演奏のほうが好きだったりします。

つまり、『静かなるケニー』というアルバムは、ワンホーン・カルテットで演奏された曲が収録されているんですね。

ワンホーン・カルテットとは、管楽器(ホーン)奏者が一人と、あとはピアノ、ドラム、ベースという4人編成のことです。

ここでいう管楽器奏者はもちろんケニー・ドーハム。

彼のトランペットの持ち味を最大限に引き立てるため、バックのリズム隊(ピアノ、ベース、ドラム)は、比較的落ち着いた演奏に徹しているんですよ。

特に、ピアノは「名脇役」として堅実なサポートで知られたトミー・フラナガンなので、出しゃばることなく、ケニー・ドーハムの持ち味を引き立てくれています。

しかし、純朴な語り口のケニーのトランペット、たしかに心に染みてはくるのですが、それが7曲も8曲も続くとね~、申し訳ないけど、少々飽きてくるんですよ。

だから、私はカフェ・ボヘミア!

もし、ケニー・ドーハムのトランペットが好きになったら、『静かなるケニー』で終わることなく、ぜひ『カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ』にも手を伸ばしてください。

参考記事:アット・ザ・カフェ・ボヘミア vol.1/アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズ

参考記事:アット・ザ・カフェ・ボヘミア vol.2/アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズ

熱いからこそ際立つ哀愁

ライヴ盤の『カフェ・ボヘミア』は、『静かなるケニー』とは違い、エキサイティングです。

管楽器もケニー・ドーハム1人ではなく、ハンク・モブレイのテナーサックスも加わったツー・ホーンのクインテット(5人編成)です。

なにせ、ドラマーが、アート・ブレイキーですからパワフル&エキサイティング。
さらに、ピアニストも「煽り系」のピアノを弾くホレス・シルヴァーですから、『静かなるケニー』的なしんみりとした演奏ではありません。

しかし、不思議なことに私は、こちらのアルバムのほうに、よりいっそう強い哀愁やせつなさを感じるんですね。

『vol.1』の《マイナーズ・ホリデイ》。
『vol.2』の《アヴィラ・アンド・テキーラ》。

両方とも賑やかな演奏です。

しかし、どうしてだろう?

演奏が白熱し、ケニー自身のトランペットもエキサイティングに加熱していくにもかかわらず、演奏が熱くなればなるほど、「熱気の隙間」からほとばしる哀観がたまらないのです。

これは、しんみりとした演奏からは味わえない、演出や計算のない「本音」として表出されたケニー・ドーハムというトランペッターが持つ本質的な部分が垣間見える音なんです。

また、この時期のジャズ・メッセンジャーズの演奏自体も、汗水飛び散る熱気ある演奏でありながらも、どこか「それでも人生ブルーなのよね」と感じざるを得ない「やるせなさ」が潜んでいる。

10年経ってわかる苦い大人の味わい。

ミルキーは似合わないけれども、ビールやバーボン、あるいはウイスキーなどアルコールなしでは聴けない「せちがらさ」も含め、私はケニー・ドーハムの力強いラッパと、切ないラッパの両方を同時に味わいたいときは、ブルーノートの『カフェボヘミア』を聴くことが多いですね。

ミルキーもビールも好きな人は、是非、『カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ』も贔屓にしてやってください。

酸いも甘いも噛み分けた大人だったら、このテイスト、きっと染みてくるはず。

記:2018/03/10

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