カフェモンマルトル

text:高野雲

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ダブル・ベース/ニースル・ペデルセン&サム・ジョーンズ

      2017/05/30

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Double BassDouble Bass

個性異なる2人のベーシスト

タイトル通り、2台のベースによるデュオをフィーチャーしたアルバムで、ニールス・ペデルセンとサム・ジョーンズのベースを心行くまで楽しめる内容だ。

サポートするは、アコースティック・ギターとドラム、曲によってはパーカッションというシンプルな編成。
あくまで2人のベーシストの異なる個性を浮かび上がらせようという編成なのだろう。

サム・ジョーンズが、いかに真っ黒でグリージーなベースを弾く男かということが、ペデルセンが饒舌になればなるほど逆説的に浮かび上がってくるアルバムでもある。



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重く深く味わい

《リトル・トレイン》のベース・ソロ合戦。

まさに「弾きまくる」という言葉がピッタリのペデルセン。
彼の鮮やかなテクニックには、ただただ唖然とするばかりだ。

しみじみとした美旋律の《ノーション》でテーマを伸びやかに奏でるペデルセンも、うっとりするほど素晴らしいメロディの歌い方をしている。

それに比べて、鮮やかでも伸びやかでもないサム・ジョーンズのベースといったら、ガタピシ、ガリゴリと、なんだかオンボロで巨大な古道具や旧式の家具を100年ぶりに物置きから引っ張り出したような音だ。

パッと聴きには、ペデルセンの圧倒的なテクニックと比べると、サム・ジョーンズのベースは、なんて無骨で、オンボロなベースなんだろうと感じることは仕方のないことだと思う。

実際、「ダブル・ベース?ああ、あのアルバムはサム・ジョーンズが可哀想過ぎるよなぁ、だって相手がペデルセンだよ?ペデルセン。ちょっとサム・ジョーンズにとっては酷な相手だよなぁ」と言っていたジャズ喫茶のお客さんもいたぐらいだ。

この感覚は半分は正しいと思う。演奏の趣旨を「バトル」と捉えれば。

しかし、「バトル」としてよりも、異なるスタイルのベーシストの個性を浮き彫りにする演奏と捉えれば、これほど面白い組合せもないと思う。

いぶし銀!サム・ジョーンズ

最初はペデルセンの圧倒的な技量に魅了され、サム・ジョーンズは単なる引き立て役だと思っていた私も、5回ぐらい目からは、サム・ジョーンズの魅力に開眼し、10回目からはサム・ジョーンズのベースばかりに耳が吸い寄せられ、50回目にはサム・ジョーンズのベースを聴くため“だけ”のアルバムという極端な認識を持つにいたっている(うん、きっとこのアルバムはそれぐらいの回数は聴いているな)。

たとえば、完全にベース2台だけのデュオによる《イエスタデイズ》。
終始、ベースでリードをとるのはサム・ジョーンズだ。
一音一音、力強く旋律を奏でるサム・ジョーンズのベースの重い音色はどうだ。

深く深く沈降してゆくフレーズ。
まるで、指板を引っ掻くように弦を鳴らしているんじゃないかと思うほどの、アタックの強い音と、指板に弦が当たるガシッ!というリアルで心地よい音。

低音の底力も凄く、ベースのボディから、まるで湯気のように立ち上ってくる音に頭がクラクラ。

アルバム冒頭の《恋に恋して》。

まさに、このストイックな雰囲気が終始漂うアルバムのオープニングを飾るに相応しい演奏だが、この脳に神経がピーン!と張り詰める緊張感溢れる雰囲気を作り出しているのは、明らかにサム・ジョーンズのベースだ。

サム・ジョーンズのベースに親しんでいるうちに、ペデルセンのベースがなんだかとても軽くて饒舌に感じてしまう。

もちろん、大好きなペデルセンのベースを悪し様に言うつもりはこれっぽっちも無いんだけど、それだけ寡黙な男サム・ジョーンズの発する一言は、重くて深くて味わいがあるということだ。

ベース界の高倉健?(笑)

記:2003/09/26

album data

DOUBLE BASS (Steeple Chase)
- Niels-Henning φrsted Pedersen & Sam Jones

1.Falling Love With Love
2.A Notion
3.Giant Steps
4.I Fall In Love Too Easily
5.Miss Morgan
6.Au Privave
7.Yesterdays
8.Little Train
9.Blues Inn
10.A Notion -take 1
11.Miss Morgan -take 2

Niels-Henning φrsted Pedersen (b)
Sam Jones (b)
Philip Catherne (g)
Billy Higgins (ds)
Albert "Tootie" Heath (per)

1976/02/15 & 16

 - ジャズ ,