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ジャズと映画と本の日々:高野雲

限りなきドラム/マックス・ローチ

   

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Drums Unlimited

張りつめた緊張感

いきなりドラムソロから始まる。
放たれる空気は、濃厚かつ緊張感に満ちている。

60年代後半のジャズ喫茶で『限りなきドラム』を聴いたことがあるという方の話によると、当時のジャズ喫茶特有のある種、殺気だった雰囲気と非常にマッチしていたとのこと。

その殺伐とした雰囲気とは、このアルバムが発表される5年前のマックス・ローチの作品、『ウィ・インシスト』のジャケ写のようなムードだったのだろうか?

We Insist!

とにかく、ドラムだけで、いやドラムだけだからこそ?の尋常ならざる張りつめたムードから始まるこのアルバムの世界に一気に引き込まれてしまう。



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お馴染みのドラミング

一曲目のドラムソロのタイトルは《ドラム・オールソー・ワルツ》。

タイトルどおり3拍子のドラミングで、執拗に拍のアタマで踏まれるバスドラムの「ドッ!」、それに続く「チッ!」というハイハットが、嫌が応でも「3」を強調し、明確なリズムの骨格を形成している。

この基本フィギュアの上に、テクニカルなドラミングが上乗せされてゆく構成だが、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』や『クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ』などの名盤を繰り返し聴いている人にとっては、聴き覚えのあるお馴染みのフィルインが続々と登場する。

ローチの特に豪快なフィルインには特有のパターンがあるため、彼が参加している名盤を数枚聴いていれば、「おっ、ココにもアレが出た!」と嬉しい気分になるはず。
そして、そう感じられれば、無伴奏のドラムソロも、退屈することなく隅から隅まで楽しめるはずだ。

3拍子への自信

このアルバムにはドラムだけの演奏が2曲収録されているが、アルバム冒頭に3拍子のリズムを持ってきたところがローチらしい。

というのも、1956年にソニー・ロリンズやケニー・ドーハムとともに演奏した『ジャズ・イン・3/4タイム』で、4分の3拍子、すなわちワルツのリズムのジャズを提示し、本国の評論家からは、

「これらの優れた演奏は、必ずしも4分の4拍子でなくともジャズがスウィングできることを示している」

と称賛されたことからも、ローチは3拍子でスウィングさせることへの絶対的な自信の表れだったのだろう。

参考記事:ジャズ・イン・3/4タイム/マックス・ローチ

そして、多くの人は、このローチのドラムソロを「歌うような」、あるいは「メロディアスな」ドラミングと形容する。

それはローチの卓越したテクニックももちろんあるのだが、それ以上にローチの語り口、つまり「技」を繰り出す「間」や配置の妙、テンションの緩急が巧みなことから、音階のないドラムでも(厳密にいえばあるのだが)音楽的に感じられるからなのだろう。

激しい《セントルイス・ブルース》

ドラムソロ以外の曲、すなわち管楽器やピアノ、ベースが参加した演奏は、個人的には《セントルイス・ブルース》が良い。

こんなに殺気だった《セントルイス・ブルース》は聴いたことがない。
加えて、こんなに高速テンポなバージョンも。

最初はのほほんとしたムードで始まるのだが、中盤を境にヒートアップ。後半になればなるほど、演奏がエキサイティングしてゆく。ラスト近くのシンバルの連打が妙に心地よし。

生き物のようなブラシ音

ドラマーのリーダー作ということもあり、マックス・ローチのドラミングに比重を大きくした録音になっているのだろうが、どの曲のドラムの音も生々しく、特にブラシの音が非常に生々しく立っている。

当時は一曲まるごとドラムソロではじまるアルバムの構成は珍しかったようだが、決してローチは奇をてらっているわけではなかったはずだ。
ドラムだけで表現する音楽的必然性は十分に感じられる。

したがって、アルバム全体を俯瞰して聞いてみると、アルバムの中に配された2曲のドラムソロは、必然だったように思えてしまうのが不思議だ。

遠く離れて全体を俯瞰するように聞くと全体的には刺々しく角ばったドラムソロも、耳をこらしてミクロの目線(耳線)で聞くと、ブラシから繰り出される音の粒が奇妙な円形を描きながら蛇行を繰りかえしている。あたかも生き物のように。

そんな不思議な魅力をもちながらも、平成の21世紀の世に紐解いても、60年代中期の殺伐とした空気が解凍されるかのような、そんな錯覚を覚える作品がマックス・ローチの『限りなきドラム』なのだ。

記:2017/11/20

album data

DRUMUS UNLIMITED (Atlantic)
- Max Roach

1.The Drum Also Waltzes
2.Nommo
3.Drums Unlimited
4.St. Louis Blues
5.For Big Sid
6.In the Red (A Christmas Carol)

Max Roach (ds)
Freddie Hubbard (tp) #2,4,6
Roland Alexander (ss) #4
James Spaulding (as) #2,4,6
Ronnie Mathews (p) #2,4,6
Jymie Merritt (b) #2,4,6

1965/10/14 #1,4
1965/10/20 #2,6
1966/04/25 #3,5

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>>サキソフォン・コロッサス/ソニー・ロリンズ

 - ジャズ

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