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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス/ビル・エヴァンス

      2017/12/20

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モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス+1At The Motreux Jazz Festival

ゴメスの音色が苦手

このアルバムは、俗称「お城のエヴァンス」と呼ばれている。

実は私、このアルバムが長い間苦手で、遠避けていた。

CD棚の肥やしになっていたと言っても過言ではない。

1,イントロのMCが腰砕け。
2,エディ・ゴメスのトレブリーなベースの音が耳に痛い。

という、二つの理由からだった。

ただし、マイルス作曲の《ナルディス》は、テーマのメロディが好きなので、「一曲聴き」をすることもあったが、やっぱりテーマ直後のエディ・ゴメスのカッツン・カッツンしたトレブリーなベースの音に耳がいくと、どうも気になって気になって仕方がなくなり、そのテクニックの凄さは別として、音色的に嫌だなぁと思っていたのだ。

「坊主憎けりゃ、袈裟まで…」ではないが、「ゴメス憎けりゃ、盤まで…」で、私の場合、なかなかこのアルバムを好きになれなかった。

そんなことが長い間続いていたのだが、最近はこのアルバムのことを見なおしている。



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ディジョネット効果

以前、ジャズのライブをやる際に、共演者と私の自宅で演奏する曲の選曲作業を行った際、《ワン・フォー・ヘレン》をやってみようかという話になった。

この曲は、エヴァンスの当時のマネージャー、ヘレン・キーン女史に捧げたナンバーだ。

参考になる演奏として「お城のエヴァンス」を聴いてみようということになり、久々に一曲目を再生してみた。

冒頭のMCは相変わらず腰砕けだったが、《ワン・フォー・ヘレン》を改めて聴き直してみると、その演奏のアグレッシヴさにも腰が砕けてしまった。

ベースがカッツン・カッツンしているのは相変わらずだったが、エヴァンスのピアノって、こんなに攻撃的だったっけ?と思うほど、演奏が熱い。

三者三様、定型リズムを刻んでいるというわけでもないのに、演奏がピッタリと一つの方向にまとまっているのにも驚いた。

うわ、こりゃ凄いや、自分はなんておいしいところを聞き逃していたのだろうと、反省。

そして、ドラムのジャック・ディジョネットの存在を忘れていたことにも反省。

ドラムの録音のバランスが、ピアノとベースよりも少し引っ込んで聴こえることも、なかなかドラムまでに耳が回らなかった一因だが、ジャック・ディジョネットのドラムに耳を傾けると、ドラムを通して、改めてこの演奏の凄さが見えてきたような気がした。

「4つ」を分かりやすく刻まないタイプのドラマーとの共演の多いエヴァンスだが、ジャックも例外ではなく、彼独特のドラムの突っ込んだ感じ、たたみかけるようなエネルギーは、演奏に独特なテンションをもたらしている。

《ワン・フォー・ヘレン》のジャックのドラミング、「まるでメロディを先回りして叩いている」かのようなシンバルの刻み方は、なかなか面白い。

「エネルギッシュ過ぎるドラムに合わせようとするあまり、いつものエヴァンスらしくない」とか、「ちょっと冷静さを欠いたエヴァンスなのではないか?」と指摘する人もいるが、私はバラードのエヴァンスも良いが、過激なエヴァンスはもっと好きなので、いいぞいいぞ、もっと行け!ってな感じだ。

唯一の共演

しかし、エディ・ゴメスのベースの音を不自然に増幅させた音は相変わらず耳に馴染まない。
もちろん、エヴァンスのピアノによく絡み、時に挑発し、それ良い意味で演奏に躍動感をもたらしていることは確かで、これが録音された年(68年)のPA技術、そしてライブ録音だったということも考えれば、いたしかたないことなのかもしれないが……。

ちなみに、このアルバムは、モントゥルー・ジャズ・フェスティバルのアルバム化の第一号でもある。

当時のジャック・ディジョネットは、チャールズ・ロイドのバンドに在籍中だったためということもあり(ロイドのグループのほうがギャラが高かったということもある)、その後の共演はかなわず、エヴァンスとの共演作は、「お城のエヴァンス」での1枚のみ。そういった意味でも貴重な記録だ。

ジャックの参加によって、勢いのついた《いつか王子様が》も聴きもの。
エキサイティングにエヴァンスのピアノを煽るジャックとの共演、もっと聴きたかった。

『ポートレイト・イン・ジャズ』のバージョンと聴き比べてみるのも一興だろう。

記:2002/06/23

album data

AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL (Verve)
- Bill Evans

1.One For Hellen
2.A Sleeping Bee
3.Mother Of Earl
4.Nardis
5.I Loves You Porgy
6.The Touch Of Your Lips
7.Embraceable Of You
8.Someday My Prince Will Come
9.Walkin' Up
10.Quiet Now (Previously unreleased)

Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Jack De Johnette (ds)

1968/06/15 at the Montreux,Switzerland

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>>ポートレイト・イン・ジャズ/ビル・エヴァンス

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