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ジャズと映画と本の日々:高野雲

フィールズ・ライク・ホーム/ノラ・ジョーンズ

      2017/05/23

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Feels Like HomeFeels Like Home

経験値と相対評価

経験値があがるほど、ある対象の相対価値が自分の中で上がってくるということはよくあることだ。

我々は音楽を聴いているときは、無意識に過去の記憶との比較検証作業を行っているのだ。
たとえ、純粋な気持ちで対峙しているつもりでも。

比較対象が多ければ多いほど、その中の上位にくるものは大したものになるわけだし、逆に最初は凄いと思っても、経験値が増えれば増えるほど、大したことがなくなってしまうこともある。

昔は「すげーっ!」と思っていたもの(人)が、ある日突然色褪せて見えることってあると思うけれども、これって、経験値が増えたことによって、自分の中での相対価値ランキングが下がったことを自覚することに他ならない。

だからこそ、ある対象を極めよう、未知の領域に踏み込もうと思ったら、とにかく、その数・量をこなすということは、単純ながらも真理だし、正しいことだと私は思う。



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ノラ・ジョーンズは良い

昔、ジャズ喫茶のマスターが「100枚聴くまでジャズの好き嫌いは言うな」と本に書いていたが、ある意味、マトを得た表現なんだよ。

言葉の表面の勢いだけで 「体育会系的」と揶揄する人もいるにはいるが、それは、文字面だけを見て、真意を汲み取れなかった人の突っ込みに過ぎないと思う。

そういう人に限って、「ジャズというのは、思っているほど難しくないんだよ。簡単なんだよ」と甘い言辞に一元化しようとする。
ウソではないが、必ずしも本当でもない。

簡単に理解出来ない未知な世界だからこそ、人はジャズに惹かれるということだってあるのだ。そう簡単に、カンタン、やさしい、お手軽 みたいにファーストフード化されても困る。

で、私は何がいいたいのかというと、ノラ・ジョーンズがいいということを言いたいのですね(笑)。

さらりと歌って、やっぱり凄い

もちろん、ファーストアルバムの『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』は、最初は眉唾で聴き始めたものの、じわじわと好きになってきたアルバムではあった。

でも、ちょっと距離を置いていた部分もあって、過剰な思い入れのようなものっていうのは持っていなかった。
しかし、久々に彼女を聴くと、やっぱり、いい~んですわ。

これまでに、プロ、アマチュアを含め、ジャズ、ロック、演歌などジャンルを問わず、様々な女性のヴォーカルを聴いてきた。だから、私の記憶の中にはジャンルを問わずに膨大な量の女性ヴォーカルのメモリーがストックされていると思う。

さっきも書いたとおり、ノラ・ジョーンズの歌を聴いていると、無意識に、過去のデータベースとノラ・ジョーンズの比較検討位置付け作業が検証されるわけなんだけれども、驚くべきことに、彼女の歌は、ベストに入るぐらいの上位に位置されてしまうんだよね。

気張らず、普通に、さらっと歌っているだけなのに、聴き手の感覚に心地よく訴えかけるヴォーカルは、やっぱり凄い。

いや、凄いという言い方は似合わないかもしれないな。

文字化しにくい素晴らしさ

彼女はぜーんぜん頑張ってないし、いつだって自然体。凄いだなんて書くと、力んでいるような印象を与えちゃうからね。

だから、なにがどう素晴らしいのか、これって、ノラ・ジョーンズの場合、非常に書きにくいんだよ。

天才ピアニストのバド・パウエルの凄さについては比較的文字化しやすい。
ピアノトリオの原型を作った、モダンジャズピアノの父、強靭なシングルトーン等々文字化できるトピックスがたくさんあるからね。

しかし、ノラ・ジョーンズの場合は、声が良い、節回しが良い、曲が良い、伴奏が良い、そしてこれらの要素のすべてがバランスよく、トゥー・マッチ過ぎないぐらいしか書きようがないのだ。
たとえば、声が良いといっても、声のどこがどう良いのか? 

今の私には、第三者を納得させるだけの言葉を見つけだすことが出来ないんだよね。
巷では「スモーキー・ヴォイス」と称されているけれども、あなた、スモーキーな声って言われてもどういう声かパッと思い浮かびますか?

おそらく多くのリスナーに分かってないけれども分かった気にさせる、つまり “煙”にまく には便利な言葉かもしれない。

しかし、言語化しにくいもどかしさこそが、ノラ・ジョーンズの魅力なことも確かで、そう簡単に彼女の謎が解けてしまったら、私のほうが面白くない(笑)。

ただ、これだけは自信を持っていえるんだけれども、ジャンルを問わず、私がこれまで聴いてきた歌声の中でも、その中でもかなり抜きんでた素晴らしい表現力を有した歌手だということは間違いないです。

やさしく、じっとりと甘く、それも露骨じゃなくてさり気なく、耳にまとわりつくのです。
それも、彼女はきっと「1」のつもりで、軽くさらっと歌っているのだろうけれども、聴き手のほうは確実に「1.5」や「3」の効果が及ぼされているところも、彼女の実力なのでしょう。

彼女はまだ若い。
これからの成長が楽しみな歌手です、ホント。

というか、ヘタに新しいことにチャレンジするよりかは、ずっとこの調子で一生いてくれても、ぜーんぜん構いません。

彼女のセカンドアルバム『フィールズ・ライク・ホーム』を聴いて、本質的なところはな~んも変わっていないにもかかわらず、相変わらず「頑張らずに聴かせてしむ歌声」を聴くと、そう思ってしまうのも仕方がないんじゃないかな、と。

記:2009/05/28

album data

FEELS LIKE HOME (Blue Note)
- Norah Jones

1.Sunrise
2.What Am I to You?
3.Those Sweet Words
4.Carnival Town
5.In the Morning
6.Be Here to Love Me
7.Creepin' In
8.Toes
9.Humble Me
10.Above Ground
11.The Long Way Home
12.The Prettiest Thing
13.Don't Miss You at All

Norah Jones (vo, p, Wurlitzer electric piano,pump organ)
Daru Oda (fl,backup vocal)
Jesse Harris (g)
Kevin Breit (g,banjolin,foot tapping,backup vocal)
Adam R. Levy (g,backup vocal)
Tony Scherr (el-g)
Rob Burger (pump organ)
Garth Hudson (Hammond organ,accordion)
Lee Alexander (b,el-b,lap steel)
Brian Blade (ds)
Andrew Borger (ds)
Levon Helm (ds)
Arif Mardin (string arrangement)
David Gold (viola)
Jane Scarpantoni (cello)
Dolly Parton (vo) #7

2003-2004

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