カフェモンマルトル

text:高野雲

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フィネス/秋吉敏子

      2017/05/21

FinesseFinesse

すでにパウエル重力圏からは脱出している

最初はパウエルの「もろコピー」から出発した秋吉敏子だが、78年のこの演奏を聴くかぎり、完全にパウエルの重力圏から脱した手ごたえを感じる。

パウエルゆずりの斬れ味の鋭さは少し控えめになり、かわりに、優しく聴き手を包むような柔らかさに溢れている。

もちろん、徹底的にパウエルを研究分析し、練習を重ねた末に生み出されたスピード感、ドライブ感は健在だが、タッチに丸みとふくよかさが加わっている。完全に秋吉ならではのオリジナリティを獲得したピアノだ。

明るく、優美。前向きな波動を感じるピアノは、エレガントですらあり、いつ聴いても心地よい。



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ビッグバンドだけではなく、ピアノトリオも良い

特に、アルバム冒頭を飾るナンバー、《カウント・ユア・ブレッシング》の優しさと力強さの共存したタッチはどうだ。

朝、目覚めたときに窓を開け放った瞬間、新鮮な空気が部屋の中にはいってくるように、この1曲目がかかった途端に、部屋の空気が変わる。

瑞々しさと溌剌さに溢れた優しく芯のあるピアノなのだ。

この1曲で、掴みはバッチリ!
ぐいぐいと敏子ワールドに誘われてしまう。

名手モンティ・バドウィッグの深みのあるベースも彼女を好サポートしていて、地味ながらも彼のベースの聴きどころも多い。

とくに《アメリカン・バラッド》の寡黙なベースソロが渋く、好感が持てる。

聴きこめば聴きこむほど、良さがじわじわと染みてくる一枚だ。

ビッグバンドだけではなく、ピアノトリオを演奏する秋吉敏子も聴いてみたいという方には、まっ先におススメしたいアルバムだ。

album data

FINESSE (Cocord Jazz)
- 秋吉敏子

1.Count Your Blessings
2.American Ballad
3.Love Letters
4.Wouldn't It Be Loverly?
5.Mr. Jelly Lord
6.Warning! Success May Be Hazardous to Your Health
7.You Go to My Head
8.Solvejg's Song (from Peer Gynt Suite)

秋吉敏子 (p)
Monty Budwig (b)
Jake Hanna (ds)

1978年

 - ジャズ ,