カフェモンマルトル

text:高野雲

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ファースト・マイルス/マイルス・デイヴィス

      2017/05/20

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ファースト・マイルスFirst Miles

サヴォイのパーカーに収録されている音源が重複しているが、マイルスがリーダーの作品なのだという意識でCDをトレイに乗せると、耳のフォーカス先が自然とパーカーを外れてマイルス中心になるから面白い。

とにもかくにも、マイルスの初レコーディングと、初リーダー作。

前半のヴォーカル入りのナンバーは、歌手ラバーレッグズ・ウィリアムスの歌伴としてハービー・フィールズ・クインテットの一員として。

マイルス18歳の時。

後半は、マイルス21歳のときのレコーディングで、こちらが初リーダー録音。

アルトではなくテナーを吹くチャーリー・パーカーがサイドマンで参加しているが、レコード会社(サヴォイ)の本音としては、パーカーをリーダーにしたかったのではないかと思う。

しかし、当時のパーカーは、ダイアル・レコードと契約を交わしていたため、サイドマンで参加という形になったのだろう。

《マイルストーンズ》という曲は、後年レパートリーとなるマイルスのオリジナルナンバーとは同名異曲。

コード進行が極度に単純化された後年の《マイルストーンズ》は、モード曲の代表的ナンバーで、力強く勇壮さをもたたえた曲調だが、若き日のマイルスの作曲による“最初のマイルストーンズ”は、ビ・バップのエッセンスを吸収した内容を、丁寧に五線譜の上に再構築したような曲調だ。

日ごろの学習成果を自分なりにまとめてみましたという感じで、曲のメロディは、複雑ウネウネなビ・バップ特有の旋律が小出しにされ、丁寧にまとめられており、起承転結、メリハリもしっかりとしているが、どこか小ぢんまりとした印象は否めない。

よくまとまってはいるものの、スケールの大きさは感じられず、ましてや「帝王」と称される後年のマイルスの片鱗は微塵も感じられない。

しかし、だからこそ、この「小ぢんまり感」は愛すべきスイートさをたたえており、よく晴れた日の午後に感じるのほほんとしたリラックス気分に近いものを感じることもたしか。

マイルスのトランペットも曲調と同様、やはりスイートに小ぢんまりとしており、この時期のマイルスの音楽性とテクニックは、後年のプレスティッジ時代の録音からするとはるかに劣るものの、身の丈にピタリとあった背伸びをしない表現に好感がもてるのだ。

ビ・バップのようにギラギラとした熱さはなく、かといってトリスターノやコニッツのクール・ジャズのようなシャープさも感じられない。

ビ・バップ=肉、
クール・ジャズ=頭

だとすると、その両方の要素がほどよくブレンドされつつも、まだこれら両要素を使いこなすには、少々の時間と経験が必要とされた時期だったのだろう。

初リーダー作だしね。

気負いは感じられるが、音楽的に突き抜けた部分がまだ出てきていない。

しかし、それは相手がマイルスだからという過剰な期待をこちらが勝手にしてしまうからなのだろう。

いい意味でユルい。

この「ユルさ」も捨てがたい。

何も考えずに音楽につかれば、ほのぼのとした気分にさせてくれるジャズであることには間違いなく、晴れた日の午後のコーヒーブレイクにのんびりと聴きたい愛すべき小粒マイルスも悪くない。

album data

FIRST MILES (Savoy)
- Miles Davis

1.Mile Stone-First Take 1/Master Take 2
2.Mile Stone-Take 3
3.Little Willie Leapes-First Take 1/Alt. Take 2
4.Little Willie Leapes-Master Take 3
5.Half Nelson-Alt. Take 1
6.Half Nelson-Master Take 2
7.Sippin' At Bells-First Take 1/Master Take 2
8.Sippin' At Bells-First Take 3/Alt. Take 4
9.That's The Stuff You Gotta Watch-Alt. Take 1
10.That's The Stuff You Gotta Watch-Alt. Take 2
11.That's THe Stuff You Gotta Watch-Master Take 3
12.Pointless Mama Blues
13.Deep Sea Blues
14.Bring It On Home-First Take 1
15.Bring It On Home-Alt. Take 2
16.Bring It On Home-Master Take 3

#1-14
Miles Davis (tp)
Herbie Fields (ts,cl)
Teddy Barnnon (p)
Leonard Gaskin (b)
Kenny Clark (ds)
Eddie Nicholson (ds)
Rubberlegs Williams (vo)

1945/04/24

#8-15
Miles Davis (tp)
Charlie Parker (ts)
John Lewis (p)
Nelson Boyd (b)
Max Roach (ds)

1947/08/14

記:2012/11/03 

 - ジャズ , ,