カフェモンマルトル

text:高野雲

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ブラントンに捧ぐ/デューク・エリントン&レイ・ブラウン

      2017/05/22

This One's for BlantonThis One's for Blanton

ジミー・ブラントンといえば、モダン・ジャズベースの開祖。

伴奏楽器に甘んじていたウッドベースを、メロディアスに“歌わせた”最初のベーシストとして、ジャズ史を飾るビッグネームの一人だ。

彼は、デューク・エリントン楽団に在籍し、輝かしい功績を残したが、わずか23歳の若さで夭折した。

バンマスのエリントンは、よほどブラントンのことを忘れられなかったのか、いまいちどブラントンのベースに合わせてピアノを弾いてみたくなったのか。

1972年12月に録音された本作は、レイ・ブラウンをジミー・ブラントンに見立てたデュオ作品だ。

ピアノとベースの会話。……なんて生易しいものではない。

会話じゃなくて、口喧嘩? いやいや、音と音のぶつかり合いだ。

濁った音でキン!コキン!と鍵盤を打鍵するエリントン。

対するブラウンは、バチン!とアタックの強い音でエリントンに挑みかかる。

「ゴキン!」とエリントンが棒っきれのような和音を弾けば、ブラウンは、ブルン!とベースのボディ全体を振るわせるほどの太い低音を発する。

スリリングなやり取りではあるが、互いが互いのプレイを引き立てあうことも忘れていない。
両者ともに、思う存分音が活躍できるスペースを与え合っている。ぶつかり合いつつも、譲り合いの精神もあるという、さすがは名手同士のやり取りではある。

それにしても、エリントンのピアノの迫力はどうだ!

鍵盤が割れんばかりのタッチの強さ、音圧。

負けじと弦をかきむしり、ベースの胴体を震わすブラウンのプレイも気迫がこもっている。レイ・ブラウンも、その気になれば、かなり荒っぽく、強烈なベースを奏でる男なのだということが分かる。

猛ったブラウンが繰り出すベースの音圧は、『マネージャングル』でのチャールズ・ミンガスにも匹敵する。

“オーケストラ編成ではないエリントン”といえば、『マネー・ジャングル』が有名だが、同アルバムの殺気立った濃い世界が好きならば、この『ジミー・ブラントンに捧ぐ』も、きっとご満足いただける内容だと思う。

記:2007/08/28

album data

THIS ONE'S FOR BLANTON! (Pablo)
- Duke Ellington & Ray Brown

1.Do Nothin' Till You From Me
2.Pitter Panther Patter
3.Things Ain't What They Say Used To Be
4.Sophisticated Lady
5.See See Rider
6.Fragmentde Suite For Piano And Bass
7.First Movement
8.Second Movement
9.Third Movement
10.Fourth Movement

Duke Ellington (p)
Ray Brown (b)

1972/12/05

 - ジャズ , ,