カフェモンマルトル

ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

フォクシー/ボブ・ジェームス

   

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Foxie

高校時代、お姉ちゃんがサントリーで働いている友人がいた。

で、その友人が、私に1本のカセットテープをくれた。

お姉ちゃんがCMで使ってる曲が入っているというカセットだ。

クレジットを見るとボブ・ジェームスの『フォクシー』と書いてあった。

当時の私は、
ジャズのジャの字も、
フュージョンのフュの字も、
ウィル・リーのウィの字も、
ロン・カーターのロの字も、
マーカス・ミラーのマの字も、
スティーヴ・カーンのスの字も、
デヴィッド・サンボーンのサの字も、
そして、ボブ・ジェームスのボの字も知らぬウブなテクノ少年だった。

しばらく学校の行き帰りにそのテープをウォークマンで聴いていたが、「爽やかミュージックだな」くらいの認識しかなかった。

ただ、やはりCMに使われたラストの《マルコ・ポーロ》は、音色にもメロディも、いかにもCMチックなキャッチーさを感じたものの、カッシリとタイトにまとまったリズムには魅了された。

さらに、リズムといえば一曲目《ルードウィッヒ》のスティーヴ・ガッドの畳みかけるリズムにも身を乗り出すだけの勢いを感じられた。

もっとも、当時は、この曲でドラムを叩いているスティーヴ・ガッドのスの字も知らなかったけれど。

で、大学卒業して就職して、新宿か四谷のバーのカウンターでボーっとしているときに、ふと流れてきたのが《マルコ・ポーロ》だった。

久々に聴く「ヒヨヒヨとした」音色と旋律に懐かしさがこみあげ、翌日は秋葉原の石丸電気のレコード売り場で『フォクシー』を探して購入した。

というより、私はこのアルバムは今でもそうだが、ジャズやフュージョンとしてではなく、「しゃかたく」として聴いたため、まさかジャズのコーナーにこのアルバムが売られているとは思わなんだ(店員に説明してようやく見つけてもらうことが出来た)。

「しゃかたく」というのは、言うまでもなくイギリスのイージーリスニングのグループ、シャカタク(Shakatak)のことで、当時流行した『インヴィテーション』が良い例だが、要するに耳に心地のよい音楽とコーラスを提供してくれることは事実だが、それ以上でも以下でもない、いわゆる深みや広がりを感じることが出来ない、私の中では、お行儀の良い坊ちゃん&お嬢ちゃんが聴くセンスの良い流行音楽くらいのイメージでしかなかったのだが、ボブ・ジェームスの『フォクシー』も、シャカタクとまったく同じような位置付けで聴いていたものだった。

しかし、クレジットを見て驚き。

サンボーンやマーカスなど、錚々たるジャズ、およびフュージョンのミュージシャンが参加しているんだよ。

それ以前に、まずは石丸電気の売り場で驚いたことは、いままでカセットテープで親しんできた音楽のジャケットが、ピンクを基調としたジャケットだったこと。

ジャケットに写るボブ・ジェームスっていう人も、スティーヴン・スピルバーグのような笑顔の叔父さんだとは思わなかった。

さらに、ようわからんシチュエーションで、ボブ・ジェームスおじさんが、黒人女性の足の裏をツボ押ししているんすか、みたいなジャケ写にも仰け反った。

たしか、足裏の踵あたりって、生殖器だったり泌尿器だったり、あるいはもう少し前だと仙骨あたりのツボを押しているように見えるのだが、要するにこの一帯のツボは下半身のツボが集中している場所なわけで、ボブ・ジェームスおじさんがスケベなのか、それともこの音楽は「下半身にクる!」という暗示なのかはよくわからないけれども、10年近くジャケットを知らずに聴き続けていた音楽のジャケ写があまりにもイメージとかけ離れていたことに驚いた。

ジャケットのイメージで、これまで聴き続けてきた音の印象が変わったわけではないが、クレジットを見て、参加ミュージシャンの名前を知ったうえで聴きなおすと、それなりに楽しみも広がってくる。

デヴィッド・サンボーンは、《ゼブラ・マン》という曲にソプラノサックスで参加しているが、サンボーンの独特なアルトサックスの音色の特徴を掴んでいると、アルトがソプラノに変わったところで、サンボーンにしか出せない独特な音のカラーはまったく変わらないのだということに気が付く。

また、《ミランダ》とう曲に参加しているロン・カーターのウッドベースも比較的おとなしいサポートでありながらも、ロンらしいアイデアが随所に散りばめられた不定形なアクセント的なベースラインが随所に散りばめられていることにも気が付く。

また、マーカス・ミラーの「主張とサポート」が見事なまでに両立したセンスの良いベースも、このアルバムの目玉曲《マルコ・ポーロ》や《ゼブラ・マン》で楽しむことが出来る。

などなど、ジャズマンのプレイスタイルの特徴を掴んだ耳で聴きなおすと、それなりに新たな発見はあるにはあるのだが、いかんせんシンセサイザーの音色がキャッチーで軽すぎることもあり、どうしてもジャズを聴いている時のような気分では聴くことが出来ず、いまだ私の中では「センスの良いイージーリスニング」という位置づけだ。

記:2018/06/05

album data

FOXIE (Tappan Zee Records)
- Bob James

1.Ludwig
2.Calaban
3.Fireball
4.Zebra Man
5.Miranda
6.Marco Polo

Bob James (key,p)
David Sanborn (ss) #4
Steve Khan (g) #4,6
Hugh McCracken (g) #6
Gary King (el-b) #1
Will Lee (el-b) #2,3
Marcus Miller (el-b) #4,6
Ron Carter (b) #5
Steve Gadd (ds) #1
Peter Erskine (ds) #2,3,5
Yogi Horton (ds) #4,6
Leonard "Doc" Gibbs (per) #3,4,5,6
Rob Zantay (syn) #2

1982年

 - ジャズ