カフェモンマルトル

text:高野雲

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フリー・フォーム/ドナルド・バード

      2017/05/24

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フリー・フォーム+1Free Form

ショーターとハンコック

ウェイン・ショーターと、ハービー・ハンコックの共通点は?

まず、多くの方が真っ先に浮かぶのが「マイルス・クインテット」に所属していたということだろう。

トランぺッター、マイルスの元で腕を磨き、確固たる実力とオリジナリティを確立して巣立っていった彼ら。

しかし、彼らがマイルスの元で研鑽をつむ前は、彼らはトランペッターはトランペッターでも、マイルスではないトランペッターの元で演奏をしていた。

そう、ドナルド・バードだ。

ハンコックは、彼のサイドマンとして2年ほど在籍しており、マイルスの元でピアノの椅子に座る頃には、ジャズマンとしてのキャリア初期のスタイルが確立されていたといっても良い。



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優しい親分、ドナルド・バード

ドナルド・バードというトランペッターは、マイルスほどのインパクトはないにせよ、彼も常に新しい音楽のスタイルを模索しつづけた先鋭的なトランペッターだった。

そして、きっと根が良い人だったに違いない。

バードは常に後輩ハンコックにこう言っていたそうだ。

「マイルスから誘いがあったら断るな。俺のバンドはいつやめてもいいから」

ああ、なんて優しい親分なんだろう。

このアルバム『フリー・フォーム』のハンコックのピアノを聴けばわかるとおり、既に非常に多彩な表現力を獲得している。

特にラストナンバーの《フリー・フォーム》のピアノなどは、一瞬アンドリュー・ヒルのピアノなんじゃないかと錯覚してしまうほど。

新主流派ならではの独特な表現の引き出しと表現の引き出しを既に獲得していたのだ。

この時点ですでにハンコックはバードにとっては有能な片腕だったに違いない。

しかし、そんな有能なメンバーに対しても、さらなる成長をバードは考えていたのだろう。

自分のところでピアノを弾くよりもマイルスの元で修行をしたほうが、さらに才能が伸びる逸材ピアニストだということを考えていたのだろうね。

考えていただけではなく、誘いがあったら自分に対して義理立てして、マイルスからの誘いをハンコックが固辞しないための下地作りをしていたところも、なかなか人間が出来ていますね。

ジャズロック

さて、ジャズロックの走りは、一般的にはリー・モーガンの《ザ・サイドワインダー》だと言われている。

しかし、その《ザ・サイドワインダー》は、リー・モーガンが、ハンコックのリーダー作『テイキン・オフ』に収録された《ウォーター・メロンマン》を聴いて、「ちっきしょー、俺だって、これよりもっとカッコいいものを作ってやるぜ!」と奮い立った結果できたものだという。

では、《ウォーター・メロンマン》がジャズロックのはしりなのかというと、残念ながらこの曲よりも5ヶ月前に録音されたジャズロック風の曲があるんですね。

それが、このアルバム『フリー・フォーム』の一曲目《ペンテコスタル・フィーリング》だ。

おそらくジャズロックの先祖、原型は《ペンテコスタル・フィーリング》なんじゃないだろうか。

《ウォーター・メロンマン》も《ペンテコスタル・フィーリング》も、ピアニストはハンコックだが、個人的には《ペンテコスタル・フィーリング》のほうが勢いが感じられる。

ドナルド・バードのトランペット、ウェイン・ショーターのテナーサックス、そしてラストがハンコックのソロになるが、ハンコックのソロが一番熱い。

煽られてビリー・ヒギンズのドラムのシンバルも力強くエキサイティングになってくるところが面白い。

ジャズロックといえば《サイドワインダー》だと思っている方、そしてまだ《ペンテコスタル・フィーリング》を未聴の方、ぜひぜひ聴いてみてください。

元気が出てくるよ。

そして、2曲目の美しいバラード《ナイト・フラワー》もおすすめ。

ゴキゲンな《ペンテコスタル・フィーリング》の後に続くだけに、ひときわこのナンバーの美しさが際立つのだ。

記:2015/10/13

album data

FREE FORM (Blue Note)
- Donald Byrd

1. Pentecostal Feelin'
2. Night Flower
3. Nai Nai
4. French Spice
5. Free Form
6. Three Wishes

Donald Byrd (tp)
Wayne Shorter (ts)
Herbie Hancock (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)

1961/12/11

 - ジャズ ,

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