カフェモンマルトル

ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

《言い出しかねて》 にはまっている。

      2018/09/17

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定番スタンダードの《言いだしかねて》

ここのところスタンダードの《アイ・キャン・ゲット・イット・スターテッド・ウィズ・ユー》の魅力にはまっている。

邦題、《言い出しかねて》ね。

英語の原題をカタカナ表記するのって長くて大変。
その点、邦題はシンプルでいいね(笑)。

多くのジャズマンが必ずといっていいほど取り上げるこのスタンダード中のスタンダードでもあり、名曲中の名曲ともいえる。

ジャズマンの腕で深さが変わる

聴けば聴くほど、なんて優しい曲なのだろう。

ちょっと前までは、クサいメロディだよなぁと思っていたものだが、クサくするのも、クサくなくするのも、ジャズマンの腕次第。

たとえば、バド・パウエルの演奏なんかは、もうクサさを超えた、未来永劫の愛を信じたくなるほどの深遠さをも有している。
……って、ちょっと大袈裟かな?

『バド・パウエル・イン・パリ』に入っているので、持っている人は聴きなおしてみてね。

私の場合は、リー・コニッツとウォーン・マーシュのアトランティックでの共演で、なんてイイ曲なんだろう、とこの曲の魅力に開眼した。

思い起こせば、ロリンズの『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』の演奏も逞しくていいよね。

うーん、素敵。これぞ男の色気。

女性観も見えてくる?

この曲のようにメロディアスで優しい曲は、ジャズマンが持つ人生観(女性観?)が浮き彫りになるような気がする。

たとえば、ジョン・ルイスの演奏なんかは、まるでキャンドルのともった高級レストランのテーブルに、優しく女性をエスコートするジェントルマンを思い起こさせる。

ソニー・スティットがオルガンとやっているのを聴くと、「ははぁ、こいつはスカした奴だなぁ、ちょっと斜に構えてカッコつけてやんの(笑)」と微笑ましくなる。

同じアルトサックスでも、『ナンシー・ウィルソン&キャノンボール・アダレイ』のキャノンボールの演奏は、真摯。誠実。見かけはイカツイが、絶対に浮気をしなそうな男の誠実さ、真摯さが感じられて好感。

これ聴いた後に、もう一度、スティットの演奏を聴きなおすと、なんっつーか、軽薄だよなぁ、この男(笑)。

意外にも(?)セシル・テイラーとメリー・ルー・ウイリアムスのピアノデュオは、非常にロマンチック。先に紹介したバド・パウエルの演奏に通じる深さを感じる。

エリントンの「言い出しかねて」

そういえば、この曲の料理の面白さといえば、エリントンじゃないかなぁ。
『デューク・エリントン・プレゼンツ』に収録されている演奏は、ヴォーカル入り。

トランペッターのレイ・ナンスのヴォーカル。
後半ではサッチモばりのダミ声も披露してなかなか楽しい。

彼の歌が入る直前のエリントンのピアノが《A列車》でお馴染みの、

♪ピンポロリーン、ピンポロリーン

なのが良いアクセントとなっている。

コキンとインパクトの強いエリントンのピアノも、粒立ちが豊かながらも、さり気なく控えめなバッキング。

唄の後のバイオリンのソロもいいね。このバイオリンもレイ・ナンス。

ヴォーカルの後のヴァイオリンの挿入は、音色的にはいい効果がある。

しかし、バイオリンの演奏内容はというと「?」なんだけれども、いや、ハッキリいってヘッポコなんだけども(笑)、とりあえず、音色的にムードを演出する効果はある。

エリントン流のカラフルな《言い出しかねて》を楽しめるアルバムなのだ。

とにかく、まだまだ他にも様々なジャズマンが取り上げている《言い出しかねて》。

ショップ店頭で、見慣れぬアルバムを手にした際も、収録曲に、この曲が表記されていたら、迷わず買って聴いてみてはいかが?

記:1999/09/14

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