カフェモンマルトル

text:高野雲

ジャズを「目で聴く」愉しみ。~コルトレーンとチャーリー・パーカー

      2017/08/11

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音と連動する譜面の動画

先日書いた記事、
>>YouTubeの動画でコルトレーンの凄さを再認識してみよう
の続きです。

お読みになってない方、
まずは、このYou Tubeの動画をご覧になってください。

コルトレーンの《ジャイアント・ステップス》の吹奏に合わせて、譜面がどんどん五線紙に生えてゆく(?)映像を見ると、コルトレーンの音楽を視覚的に楽しむことが出来ると思います。

また、多少楽理をかじっている人が見れば、コルトレーンのアドリブや演奏の発想や、演奏のメカニズムが分かってくるかもしれません。



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たたみかける8分音符の快感

つまるところ、コルトレーンのアドリブの基本は、整然と並んだ8分音符の集積なんですね。

特に、リズムもあのような軽快なアップテンポなので、均等に並ぶ8分音符を耳と目で追いかける快感は、力強い等速直進運動に身をまかせるかのよう。

「時々、高音部で音を伸ばして、ひたすら8分音符」。

ただでさえ、あのテンポで、あのコードチェンジでのアドリブですから、それだけでも大変なことではあるのすが、しかし、音符の並びの全体を俯瞰してみると、やや単調というか、パターンの集積にも見えないことはありません。

だからこそ、それが快感だということもあります。

打ち込みにすると味気ない

人力演奏を聴くかぎりでは、コルトレーンの力強さがいやというほど伝わってくるのですが、この譜面をPCやキーボードに打ち込み、BPMを上げてプレイさせると、まるでゲームミュージックを聴いているような軽やかさとコミカルさも漂ってくる。

参考記事:打ち込みジャイアント・ステップス

演奏の柱が均等な8分音符だからこそ、打ち込みにも親和性の高い構造だといえるのかもしれず、あたかもCPUが高速演算処理をし、次から次へとはじきだしてゆく「解」が音符化されて中空に放り投げられているかのような音の快楽があります。特にテクノ好きにとっては。

チャーリー・パーカーとの違い

一方、チャーリー・パーカーのアドリブはどうでしょう?

私はパーカーの譜面を見るのが大好きです。

コルトレーンの譜面が整然とした規則性を帯びた図形だとすると、パーカーの譜面は、あたかも絵画を見ているかのよう。

パーカーのアドリブを採譜した譜面を見ると、どの譜面も、3連譜や休符、シンコペーションによる小節喰いなど、譜面全体に動きがあり、にぎやかですらあります。

コルトレーンの譜面が直線的・幾何学的だとすると、パーカーは曲線的。

三角定規のコルトレーンに対して、パーカーの場合は雲形定規。

そして、細やかで様々な動きに満ちた譜面も、全体を俯瞰するように見わたすと、それはあたかも1枚の絵画のようですらあります。

じつは、私、本当にパーカーの魅力に目覚めたのは、毎晩大音量でパーカーを浴びるように聴いていたらある日突然天から啓示が降りて来て悟りを開き……、という嘘で(笑)、いや、本当はこのような、受け取りようによっては修行者の「神秘体験」的でもあり、武道家の「悟り体験」的なストーリーを語れたらどんなに説得力があってカッコいいのだろうと内心憧れつつも、私の場合のパーカー開眼体験は案外つまらないもので「譜面を見ながら」だったのですね。

パーカーのオムニブック

チャーリー・パーカー・オムニブックというパーカーの演奏が譜面化された楽譜が、渋谷のヤマハなど輸入モノの楽譜を扱っているところで売っているのですが、学生時代に買ったんですよ。

なぜかというと、ジャコの「ベースでパーカーを弾く」という発想をカッコよく感じたので、自分も他のパーカーの曲でマネしてやろうというネタ探しのため(笑)。

しかし、譜面をベースでなぞりながら、自分のレパートリーを作ろうと最初のページからゆっくりベースで譜面を追いかけていったのですが、どの曲もあまりにも難しくて、結局どれもこれもが中途半端に終わってしまったのですが、オムニブックは、どのページをめくっても、五線に踊る譜面群はまるで絵画のように感じたものです。

だから、ページをパラパラめくり、ボーっと眺めているだけでも、まるで画集を見ているような楽しさがあったんだよね。

でも、ただめくって眺めるだけじゃもったいないので、パーカーの音源を聴きながら、1小節1小節を指でなぞりながら追いかけてみました。

あたかも、コルトレーンの「譜面映像」を人力で行うような楽しさがあるのですが、ほんと、パーカーのアドリブを聴きながら目で譜面を追いかけると、滅茶苦茶楽しいんですよ。

コルトレーンの演奏が等速直線運動だとすると、パーカーの演奏は躍動感に満ちた円運動。

しかも、決して単調さに陥らない運動でもあり、急にスピードがアップしたかと思うと急に元に戻ったり、音を詰め込んだかと思ったら、気持ちのいい空白が現れたりと、本当に音のデザイン・配列のバリエーションが豊かで、こちらを飽きさせません。

しかも、パーカーの「あの音色」でしょ?
「あのスピード感」でしょ?

たまらんわけですよ。

もちろん、オムニブックを買う前からパーカーはたくさん聴いていたし好きではあったんだけど、「とてつもなくスゲーことを、平然とやってらぁ!」と驚き感動したのは、パーカーを聴きながら指で譜面をたどる作業をしたことがキッカケなのです。

指でたどり、目で確認する

指でたどる、といえば、「鉄ちゃん」の気もある私は、中高生の頃、宮脇俊三の鉄道紀行文を愛読していたのですが、著者のマネをして、時刻表片手に電車に乗り、自分が乗っている列車の運行を指で追いかけてみたのですが、これってすごく楽しい作業なのね(笑)。

指でたどり、目で確認するという作業は、電車も音楽も楽しい。

ただじっとすわって鑑賞するのももちろん楽しいものではありますが、指と目で追いかける作業をプラスさせると、能動的に鑑賞している気分になる。つまり、自分も先人の試みに「参加」しているかのような気分になれる。

「その道の達人」からしてみれば邪道な聴き方なのかもしれませんが、私は「譜面おっかけ」も音楽鑑賞の愉しみの一つとして、譜面がある程度わかる人には「どうぞ試してみてください、けっこう面白いですよ」と提唱したいです。

譜面が読めない人でも、昨日のコルトレーンの譜面映像をご覧になれば、なんとなくそのスゴさがビジュアルで確認できたのではないかと思います。譜面を指で追いかける楽しさ&スリリングさは、まさにそれと同等な楽しみなのです。

ジャズを聴きながら曲名を書いたり、ジャズを聴きながら絵を描いたり、ジャズを聴きながら譜面を指でたどったり……。
とにもかくにも、耳だけではなく、指を鑑賞に参加させると、思わぬ発見があったりもします。

指先は脳の大事な出先機関でもあります。

だからかな、指を鑑賞に参加させると、時として脳の歓びも倍増するような気がするんですよ。

だからといって、私はいつも指を動かしながらジャズを聴いているわけでもありませんが……。

記:2009/09/10

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