カフェモンマルトル

text:高野雲

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ジプシー’66/ガボール・ザボ

      2017/05/23

ジプシー ’66Gypsy ’66

「とにかく、弾き方が独特なんですよ。音楽に没入している。ずっと俯きながらギターを弾いているんですよ。ときどき痙攣するように身振いしながら。観ようによっては、かなり怪しい。でも、そこがいいんです。是非、ガボール・ザボを聴いてみてください。私も、これぐらい音に存在感のあるギターを弾いてみたいですね。」

……その昔、 高柳昌行にもギターを習っていたことがあるという 飲み屋のマスターは、ガボール・ザボのファンでもあり、 ザボを知らぬ私に、ザボを聴くよう薦めてくれた。

ハンガリー出身、一時期は、チコ・ハミルトンのグループにも在籍していたガボール・ザボ。

試みに、マスターから勧められた翌日に『ジプシー'66』を買い求め聴いてみた。

冒頭は、ビートルズの《イエスタデイ》。

テーマを奏でるフルートが気になり パーソネルを見ると 渡辺貞夫だった。

バークリー音楽院に留学中の録音だそうだが、ナベサダのフルートに絡むザボのギターは、 寡黙ながらも、どこか妖しい香気を放っている。

さらに、ギターソロになると、どこか民族音楽的な匂いも漂い、少ない音数の中にも異様な存在感を放っている。

多くの曲が2~5分とコンパクトにまとめられているが、この少ない尺の中でもザボの異様な個性が浮き立っていることは特筆すべきだろう。

このアルバムは、ビートルズやバカラックの曲をはじめとした親しみやすいポップチューンを ボサ調のリズムで演奏された内容が基調となっているので、聴きやすい内容ではある。

バッキングに回ったときのザボのギターは、オーソドックスなボサ調の伴奏で、とりたてて異色なニュアンスは感じはしない。

ところが、ひとたびソロになると、シングルトーン中心で構成されるギターの微妙によじれた音色とフレーズが耳につく。

ときおり、チョーキング気味に弾いているのだろうか、微妙に音程をズラした単旋律には、妖気すら漂う。

バックの無難かつ爽やかですらあるサウンドに溶け込みつつも そこはかとなく妖しい匂いが香り、いったん気になりだすと、耳がザボのギターばかりを探し求めるようになる。

マスターの言うとおり、こんなギターを終始うつむき加減で、ときおり痙攣するように身を震わせながら弾いているのであれば、それはそれでかなりのインパクトだろうなと思った。

どんなに明るい曲調でも、ダークで沈み込むような味わいが滲み出るザボのギター。

代表作の『ジプシー'66』は、ポップチューン、ヒット曲などの砂糖がまぶされていつつも、後でじわりと苦味がほとばしる、油断ならぬアルバムだ。

記:2009/04/20

album data

GYPSY'66 (Impulse)
- Gabor Szabo

1.Yesterday
2.The Last One To Be Loved
3.The Echo Of Love
4.Gypsy'66
5.Flea Market
6.Walk On By
7.If I Feel
8.Gypsy Jam
9.I'm All Smiles

Gabor Szabo (g)
渡辺貞夫 (fl)
Gary McFarland (marimba)
Barry Galbraith (g)
Sam Brown (g) #4-9
Al Stinson (b) #1-3
Richard Davis (b) #4-9
Grady Tate (ds)
Willie Rodriguez (per) #1-3
Francisco Pozo (per) #4-9

1965年

 - ジャズ , ,