カフェモンマルトル

text:高野雲

*

マイルス、ふたつの《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》

      2017/06/10

Pocket

ブルーノートorプレスティッジ

50年代中盤のマイルス・デイヴィスといえば、《It Never Entered My Mind》だが、あ、すいません、かなり強引ですが、今日の私の気持ちはそうなんで、そういうことにしといて欲しいんだけど、

どうですか?

皆さん、どちらの、《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》がお好きですか?

ブルーノートのバージョンと、2年後のプレスティッジのバージョン。

マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.2 (紙ジャケット仕様)マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.2

ワーキンワーキン

私は、ブルーノートのほうが断然好きだなぁ。

ブルーノートのピアノはホレス・シルヴァー。
プレスティッジのほうは、レッド・ガーランド。

二人の伴奏は対照的で、両方ともイントロやテーマの伴奏は、アルペジオ(分散和音)なのだが、

シルヴァーは上昇パターンのアルペジオ。
ガーランドは下降パターンのアルペジオ。

どっちも美しいのだが、私はホレス・シルヴァーのピアノのほうが好きだ。



sponsored link



オープン or ミュート

で、肝心のマイルスのトランペットだが、私は、ブルーノートのバージョンのほうが好き。

このたどたどしさがいい。
たどだとしいけれども、愛情とぬくもりが感じられる。

プレスティッジのミュートのプレイは、もう、にくらたらしいほど完璧。

たった2年で、こんなに表現のスケールが大きくなるのかと思うほど、完璧。

泣かせるところ、しんみりさせるところ、盛り上げるところ、じらすところ。

もう、語り口の起伏やメリハリが、リスナーの心理を読みきっているのかと思うほどの構成力を見せている。

技量、それにともなう表現力という点からみれば、完全にプレスティッジのマイルスのプレイのほうが上だと思う。

では、どちらが心を打つかというと、これは個人差も当然あるのだろうが、私の場合は、ブルーノートのほうを取る。

寡黙で純朴な青少年が、ひたむきに未来を語り、訥々と語っている趣きがある。

たとえば、「口説き」でいうと、ブルーノートのほうは、ボソボソと不器用ながらも、そんな不器用さから滲みでるひたむきさが女心を射止める感じ(笑)。

プレスティッジのほうは、遊びに長けたプレイボーイが女心のツボを完全にわきまえたうえで、語り口調に緩急をつけながらやさしく女性をエスコートをする感じ(笑)。

もちろん後者のほうが安心感があるし、そのままマイルスの語り口に誘導されれば、自然に気持ちよく酔える内容にはなっている。

いっぽう、ブルーノートのほうは少々危なっかしく、ションボリとした切なさもあり、そこがいいんだなぁ。

それにしても、たった2年という短い期間で、こんなに雄弁な表現力を身につけてしまったマイルスは、相当に女性修行を重ねたのでしょうか?(笑)

記:2013/10/04

関連記事

>>マイルス・デイヴィス・オールスターズ vol.2
>>ワーキン/マイルス・デイヴィス

 - ジャズ , ,

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。