カフェモンマルトル

ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

ジャズ喫茶のたしなみ方。《レフト・アローン》ばっかリクエストしてんじゃないよ┐(-。ー;)┌

      2017/05/22

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coffeecup

昨日、神保町にオープンしたジャズ喫茶「BIG BOY」。

私はこのお店の開店1号客に、晴れてなることが出来ました(*`▽´*)v

開店して2時間ほど、カウンターで雑談をした後、私はシゴトに向かいました。

その後も、お客さんが絶え間なくやってきたそうです。

私が配信しているメルマガやカフェ・モンマルトルの読者も何人かいらしていただいたそうです。

ありがとうございます!

私は、先日配信したメルマガで、“明大生や日大生の諸君!「BIG BOY」に行きなさい”みたいなことを書いたのですが、本当に明大の学生が来てくれたそうです。

「なんかね、すごく緊張していたんだけど、前向きで、ひたむきで、とっても可愛かったですヨ」とマスター。

いやぁ、明大のキミ、あんたは偉い!(笑)

夜は夜で、閉店間際にも顔を出しました。

ホントは、もっと早く行きたかったんだけど、打ち合わせが長引いちゃって……。

でも、前向きかつノリノリな打ち合わせだったからイイんだけど。

これで新しいイタズラが閃いた。来年もノリノリにいけそうです(笑)。

あ、イタズラといっても、悪いことや、ワイセツ行為とかのイタズラじゃないですよ。

私は、「楽しいシゴト」「わくわくするシゴト」のことをイタズラと呼んでいるんですよ。

いつまでも成長しない子供のような私ですから、

「ここをこうして、ああして、こういうふうにやると面白そうだよな、ニヒヒヒヒ」と考えることが大好きなのです。

これをイタズラと呼ばずして何と呼ぶ?(笑)

さて、来年のイタズラを考えた後、BIG BOYに行くと、カウンターがうまっていたので、まずまずの入りでしょう。

ちょっぴり頭に来たのは、「ねぇ、『レフト・アローン』かけてよ」とリクエストした客。

いや、リクエストするのはいいんだけどさ、リクエストしたら黙って聴けっての。

べらべらシゴトの話をするでない。

その人にとっては、《レフト・アローン》を聴きたいんではなく、「開店一日目の店で、俺、レフト・アローンをリクエストしてさぁ」というネタ作りのための“個人的イベント”だったのかもしれないけど、聴かされる私の身にもなりなさい(笑)。

嫌いじゃないけど(好きでもないけど)、ワタシ、ジャズ喫茶でバイトしていた時代から、もう数千回も聴いているんですよ、このアルバム。

数千回というのは冗談だけども、何度聴いても不思議に飽きないチャーリー・パーカーのどこまでも抽象的で透明性の高い演奏と違って、演歌の要素の強いこの手の曲は、飽きるのも早いんです。

流行歌といっしょでさ、キャッチーだけれども、そのぶん、聴けば聴くほど懐メロ的に退色しやすいジャズの一つが《レフト・アローン》なのです。

しかも、レフト・アローンという曲は、聴き手にセンチメンタルな気分を強要するところがある。

だから、センチになりたい人には格好の音響小道具かもしれないが、そうでない客にとってはカンベンしてくれ、泣きたきゃ外で泣け、なのであります。

もっともリクエストしたお客さんは、泣きたいわけでもなく、聴きたいわけでもなく、“ただリクエストしたかっただけ”なのだから始末に悪い。

マクリーンのアルトサックスはそこそこイイんだけれども、もっといい演奏をたくさん知ってしまった身には、忍耐を強いられるリクエストでありました。

ジャズ喫茶で《レフト・アローン》をリクエストする行為って、ワタシ的な美学からすると、とっても恥ずかしい行為なので、なるたけやめましょう(笑)。

少なくとも通ぶりたい人は絶対に避けるべきでしょう。

あと、女性には内緒話をしちゃうと、ジャズ喫茶でこの曲リクエストするような男はイケてません(笑)。

センチメンタル気取り。

映画の見すぎ(それも角川映画の「キャバレー」)。

個人的ハードボイルドな、プチナルシストの気がある、自分カワイ子ちゃん(笑)。

あるいは、無言で女性に「いいでしょ、俺って」な雰囲気を空気で主張する(笑)。

そのくせ、相手からは具体的な言葉で褒められたい(笑)。

カッコわる~。

ま、そういう男性がイイって女性もいるでしょうから、あまり多くはいいませんが、「自分カワイ子ちゃん男性」は、最初は優しいけど、慣れてくると、相手の話、あまり聞かなくなります。個人的な主張ばかりが強くなってきます。

なぜ分かるのかというと、このオレがそうだから(爆笑)。

ま、いずれにせよ、《レフト・アローン》をリクエストするのは、店に誰もいないのであればOKかもしれないが、私のようなジャズにうるさいオヤジがいる中では、「そうとうに顰蹙を買う行為になる可能性が高い」ということは、たしなみとして覚えておいたほうが良いでしょう。

マクリーンの、ウォルドロンのプレイじゃななきゃどうしてもイヤだというのなら別として、《レフト・アローン》という“曲”を聴きたいのであれば、ドルフィーがフルートを吹いている《レフト・アローン》をリクエストしてみるのも一興でしょう。

もっとも、そんな私でも、『レフト・アローン』というアルバム(曲じゃない)を聞きたくなることもあります。

Left AloneLeft Alone

そういうときは、「2曲目からかけてよ」っていいます(笑)。

一曲目の《レフト・アローン》という曲はちょっとカンベンしてくれと思う日のほうが多いのですが、2曲目の《キャット・ウォーク》は、なかなか良い演奏なのです。

ひっそりと隠微、かつ淫靡なマイナー調の曲。

しみじみと、極力淡々と、ピアノもベースも音を空間に置くかのように鳴っています。このタメとサビのダイナミクスの対比。

私にとっての、『レフト・アローン』というアルバムは、この曲や、ピアノの重い音が地盤沈下をおこしている《エアジン》を聴くためにあります。

とはいえ、皆さん、さっきと話が矛盾するけど、本当に聴きたければ、べつに『レフト・アローン』をリクエストしてもいいんですよ。

ただし、リクエストした以上はキチンと聴きましょう。
これが最低限のマナーであり、モラルです。

我慢できなくなったら、べつにトイレ行ってもいいけど(笑)、途中で帰ったり、喋ったりする行為は慎みましょうね。

言い方悪いけど、リクエストは「あなたの好み」を店員や周りのお客さんに強要する行為でもあるのです。

「あなたの好み」は、「店の好み」とは限らない。

「あなたの好み」は、「他のお客の好み」とは限らない。

まさか、コドモじゃないんだから、「自分がイイと思ったものは、他人もイイ」とは思ってませんよね?

もちろんセンスの良いリクエストなら店も客も大歓迎だし、あなたの株もあがることでしょう。

だから、どんどんリクエストをするべきなのです。

ただ、忘れてはいけないのは、ジャズ喫茶は選曲が命なところがあります。
良い選曲をすれば、良い客がつき、ヘンな選曲だと「だっせぇ~」と客が遠ざかっていきます。

だから、選曲する人は、コーヒー豆を挽きながらも次にかけるレコードを、あーでもない、こーでもないと頭の片隅では必ず考えているものなのです。

もちろん、ジャズ喫茶のことだから、ヘンなアルバムというのは置いていません。

だから、アルバム単体としては、ほとんどが選りすぐりの良い素材なのですが、問題は、選曲。

つまりかける順番とタイミングなんですよね。

よく、「空気読めよ」といいますが、どんなに素晴らしいアルバムでも、かけるタイミングというものがあります。

華やいだムードで会話が弾んでいる客が何人もいる夜のバーでは、それに相応しいレコードや、このムードをさらにアップさせ、お客さんを楽しませる音源をかけるべきなのです。

《レフト・アローン》がかかれば、せっかく温まってきた空気が、一気に醒めてしまいます。

店の空気を換えるアクセントとしては良いのでしょうけど、それは、会話がいったん中断して、静かモードになったときや、閉店間際など、タイミングを見計らってかけるべきなのです。

名盤と呼ばれるアルバムは、名盤と呼ばれるだけあって、個性の強いものが多いです。

だからこそ、逆に名盤になればなるほど、店の空気を一変させてしまうほどの「音の力」があるので、リクエストって難しいのです。

誰だってダサいファッションしたくないよね?

店の人も、店内をダサい空気にしたくないために、けっこう一生懸命、「空気のコーディネイト」を考えているものなのです。

リクエストをする人は、是非、このことを知り、これらを踏まえた上で、リクエストをしてください。

だからといって、尻込みする必要はありません。

自分の興味、勉強成果を店で試せばいいのです。

“遊び”というのは、本来そういうもの。

“勉強”の伴わない遊びは、底が浅いし、続きません。

昔の「芸者遊び」も、単なる成金の遊びと見る人もいますが、本質は違います。

芸者も旦那も、日々、勉強していて、教養に磨きをかけていたからこそ成り立った高度な“遊び”なのです。

旦那も日々勉強しているからこそ、芸者の踊りや歌を理解る。

だからこそ、そういう教養のある旦那に「お前さん、上達したねぇ」と言われるからこそ、芸者は嬉しいし、稽古にも精が出るのです。

旦那は旦那で贔屓の芸子さんの成長ぶりを見るのが楽しいし、彼女の成長に遅れないよう、彼自身も勉強する。

互いに“磨きあう”世界だったのです。

粋な遊びというのは、そういうもんだと私は思います。

キャバクラ遊びは底が浅くて、すぐ飽きるのは、そこに勉強や教養の要素がほとんどないからです。

あっても、せいぜい「SPA!」のような雑誌に書いてあるような「キャバクラ嬢を落とすテクニック」といったような表層的なテクニックぐらいなもんでしょう。

私は、芸者遊びもキャバクラ遊びもしない真面目一徹な人間ですが(笑)、そんな私だからこそ、ジャズが私にとって大切な“遊び”。

芸者遊びほどお金はかからないし、勉強しようと思えば、いくらでも勉強できるだけの深さがある。

そして、ジャズ喫茶のような自分の勉強成果を試せる“場”もある。

さらに、学んだこと、感じたこと、意見などを酌み交わせる“人”もいる。

これってとても大切なことだし、そういう場や人に恵まれていることに感謝しなければいけないと思っています。

さて、BIG BOYへの行き方。

地下鉄神保町で降ります。

A7の出口を降ります。降りたらすぐに左にまがります。左にまがったら、またすぐ左に曲がります(笑)。

「さぼぉる」「さぼぉる2」という看板が見えます。これらを通り過ぎます。左手に緑色のコーヒーショップがすぐに見えますが、そのまん前です。

気さくなマスターですので、是非声をかけてください。

むしろ、私のようなガチガチなジャズバカを敬遠し、ジャズをあまり知らない人に優しいマスターです。

リクエストしたい人は、まず手始めに「エヴァンスのお勧めをかけていただけませんか?」と言ってみましょう。
喜んでかけてくれるでしょう。

ここのマスターは大のビル・エヴァンス好き。

もっとも、エヴァンスが好きなだけに、あなたがリクエストしたアルバムは、すでにその日に聴いている可能性もある。

エヴァンスが好きなだけに、逆に、今日は聞きたくないなぁというアルバムもあるかもしれない。

だから、選択肢を広めに設けてエヴァンスをリクエストすれば、マスターも腕によりをかけて選曲してくれるでしょうし、これがキッカケで話も弾むことでしょう。

応用編として、

「最近のヨーロッパのピアノトリオのお勧めは?」

「デニー・ザイトリンがピアノを弾いているジェレミー・スタイグのアルバムがあるって聞いたんですけど…」

「アート・ファーマーのお勧めをかけてください」

こう話しかけても、ビッグボーイのマスターは大喜びであなたを迎えいれてくれることでしょう。

記:2006/12/21

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