ウィ・クッド・ビー・フライング/カーリン・クロッグ

      2017/05/22

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We Could Be FlyingWe Could Be Flying

エレクトリックベースを弾くスティーヴ・スワロウの隠れファンは、特にベーシストの間に多いように感じる。

ベースを弾くジャズ&フュージョン好きにとっては、ジャコ・パストリアスやアンソニー・ジャクソンとともに、そのユニークな個性と音楽性の高さから無視できない存在の1人だからだ。

なにせ、ジャズ&フュージョンフィールドのベーシストで、指弾きではなく、すべての演奏をピック弾きでこなすということだけでも、スワロウはかなり特異な存在。

もちろん、アンソニー・ジャクソンも曲によってはピックを用いるが、スワロウは4ビート、8ビート、メロディックなソロと、その表現内容を問わず、すべての演奏に対して、徹底してピック奏法にて臨む希有なベーシストなのだ。

そんなスワロウのベースを思いきり堪能できるアルバムが、ノルウェー出身のシンガー、カーリン・クローグが1974年に録音したアルバム『ウィ・クッド・ビー・フライング』だ。

このアルバムほど、スワロウのアグレッシヴに前に出てくるベースを楽しめる音源はないのではないだろうか?

しかも、ヴォーカルがリーダーのアルバムでありながら、ベースのバランスもかなり高めにミキシングされている。

そのため、ブツッ!グツッ!とアタック強く、エッジの際立ったスワロウのベースの音色がタフにアンサンブルを構築していることがよく分かる。

たとえば、カーラ・ブレイとの共演などの作品を聴くと、スワロウのベースは滑らかな肌触りに聴こえるが、この作品でのスワロウのベースは相当にゴツゴツしており、さらに全曲にわたって“よく動く“ベースラインを奏でていることもスワロウ好きにとっては嬉しい。

特に《シング・ミー・ソフトリー・オブ・ザ・ブルース》や《レインドロップス・レインドロップス》の“動くライン”からは、スワロウのセンスと実力をイヤというほど味わえるに違いない。

スワロウの他にカーリンのバックを務める演奏者は、エレピのスティーヴ・キューンと、ドラムのヨン・クリステンセン。

スワロウとトリオで活動を共にしていたスティーヴ・キューンは、エレピ(フェンダー・ローズ)を弾いているのだが、アコースティックのみならず、彼の風変わりな耽美的感覚とエレピの音色がピタリとマッチしている。

骨太なエレクトリックベースと、ヒンヤリと空間に蕩けるエレピの合間から、清涼感溢れる、北欧エキゾティカなカーリンのヴォーカルが響き渡る。

アメリカ的ロックやフュージョンとはかなり感触を異にする、透き通るようなノスタルジー。切ない気分になると同時に、聴き進めるうちに静かな、やがて激しい内的興奮に襲われることだろう。

ジャズ&フュージョン好きのみならず、むしろロック好きにもお薦めしたい1枚だ。

記:2010/03/21

album data

WE COULD BE FLYINGS (P-Vine)
- Karin Krog

1.We Could Be Flying
2.Meaning Of Love
3.Sometime Ago
4.All I Want
5.Sing Me Softly Of The Blues
6.Raindrops, Raindrops
7.Lament
8.Hold Out Your Hand
9.Time To Go

Karin Krog (vo)
Steve Kuhn (el-p)
Steve Swallow (el-b)
Jon Christensen (ds,per)

1974/07/30-31

 - ジャズ , ,

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