カフェモンマルトル

text:高野雲

*

ジョン・コルトレーンとピート・ラロカのドラミング

   

Live at the Jazz Gallery 1960Live at the Jazz Gallery 1960

text:高良俊礼(Sounds Pal)

一体何者? ピート・ラロカ

ピート・ラロカという、知る人ぞ知るドラマーがいる。

一度聴いてハマッたら、どうにもその魅力から離れられない不思議な磁場を持つドラミングと、どんな状況にもめげずに己を貫く類まれまる肝の太さを持っていて、そのプレイはオーソドックスなスタイルを踏襲しているようでいて、常にどこか「変」。

それが一度気になってしまったら演奏の良し悪しとかはどうでもよくなって、ついついこの人のプレイを繰り返し聴いてしまう。そして「コイツは一体何者なんだろうか?」と、掘り下げてみたくなる。



sponsored link



個性的な脇役

映画やドラマでいえば、絶対的な存在感の主役がいて、その脇を個性的で演技力豊かな脇役がガッチリいるとしたら、その枠とは別に用意された”怪優”の枠で妙な存在感を放つクセのある個性派と言ったらいいだろうか。

ソニー・ロリンズの『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』や、ジャッキー・マクリーンの『ニュー・ソイル』などに参加していて、盛り上がるロリンズのバックで執拗にシンバルを「バシー!バシー!」と叩く狂気のプレイや、マクリーンのバックでは、快調に飛ばす楽曲の流れをぶった切っての「トン・・、ストトン・・・」の静かなドラムソロとかで強烈なインパクトを覚えて一気に好きになった。

どうもこの人には空気を読まずにぶっ込むクセがあるようだが、相手がロリンズだろうがマクリーンだろうが一向に臆せずに「思うドラミング」を貫いてそれを我田引水できる技術と胆力には本当に惚れ惚れしてしまう。

エルヴィン加入前のドラマー

ところでそんなラ・ロカは、実はエルヴィン・ジョーンズが加入する前のコルトレーン・カルテットのドラマーを一瞬だけ務めていた事があった。

本で読んだのは、

「ようやく自分のバンドを結成したコルトレーンは、個性派で知られるピート・ラ・ロカを迎え入れたが、音楽的に合わずすぐにクビにした」

とサラッと書かれている一文だけで、音源は世に出回ってないと言われていたが、2000年代になって1960年「ジャズ・ギャラリー」でのライヴ音源が2枚組でリリースされ、これはコルトレーン者としてもラ・ロカのファンとしても入手しておかねばならないと、勇んで購入した。

まず、結論からいえば悪くない。

プライベート録音のライヴ盤ということで、クリアな音質はもちろん望むべくもないが、このテのアルバムにありがちな「モコモコして何をやってるか分からない」というものではなく、肝心のコルトレーンのテナーとラ・ロカのドラムは、なかなかの迫力で録音されていて、何よりシーツ・オブ・サウンドを極め、更なる音楽的な高みを目指そうと躍起になっているコルトレーンの演奏がアツい。荒削りな録音が熱演に上手い具合に作用して、熱気ムンムンの「転換期前夜」がリアルに記録されている。

執拗なる4ビートマシーン

何と言っても聴きものは、Disc-1冒頭を飾る30分越えの「リベリア」だろう。

ラロカの、かなり鋭く直線的に刻まれる「4」の疾走ビートに乗って「これでもか!」と、持てる力と煌きを総動員して、一心不乱にアドリブに狂うコルトレーン。

後年、Impulse!からは、トレーンのアドリブにどこまでも過激に反応するエルヴィンのドラムと共に長時間の吹きまくりの中で何度も何度も絶頂に達する壮絶なライヴ盤も多く出している「コルトレーン・バンドのサックスとドラムの真剣勝負長時間」の原型が、既にこのライヴで演奏されていることに驚くが、ラ・ロカのアプローチはエルヴィンとは全く違う。

コルトレーンがガンガンに吹きまくって「もっとリズム来い!」と煽るようにフレーズを展開させる。

ここでエルヴィンなら、その煽りに応えてより力強くて立体的なリズムの洪水をぶつけるところだが、ラ・ロカは「そんなん関係あるかい!」とばかりにまるでリズム・マシーンのような定型4ビートを執拗に繰り出している。

コルトレーンが盛り上がれば盛り上がるほど、ラ・ロカはまるでムキになって崩れない「4」を叩いて自分の世界に没入しているように聞こえる。

噛み合ってはいないが面白い

そして!

演奏始まって23分目ぐらいから始まるドラム・ソロ。

これがマクリーンの『ニュー・ソイル』でも聴けたラロカ必殺の

「流れぶった斬り、静寂からのまったく違うビート・ソロ」

バイクで高速とかを気持ち良く走っていて、ギアを上げようと思ったらいきなりスコッと抜けてニュートラルに入ってしまったかのような、まるで昔のカワサキ車のようなオヨヨ感がもうたまんない。

普通のライヴだったら「おいおい流れぶった切るなよ、何だよせっかく盛り上がってたのによぉ」になろうかというところだが、あれあれ? 何か会場の雰囲気盛り下がってない。

むしろ聴衆の意識は、この静寂のドラムソロが終わってからのコルトレーンのテナーが爆発する大展開を期待するかのように、たたずを呑んで「次」を待っている。そんな感じだし、実際ドラム・ソロが終わってからのコルトレーンのキレッぷりで、またかなり盛り上がって良い雰囲気になっている。

コルトレーンは恐らくやりとりがしづらいラロカの定型ミニマル・ビートや、流れを急にぶった切るマイ・ウェイぶりにかなり苛立ってたんだろうなとは思うし、実際噛みあってるかと言われたら全く噛み合ってはいないが、それと演奏内容のアツさ、ライヴの充実度は本人達の意図とは真逆のベクトルで上昇の極みとなっているからジャズは面白い。

ラロカ参加の怒涛の2枚組

ラロカ参加の音源ということでレアだし、とにかくそのドラミングの特異性が印象的なので、珍盤の類ではあるんだろうが、素晴らしいジャズのライヴ盤としてはかなりの出来なので、マニア以外も聴いて楽しめると思う。何よりライヴ熱演2枚組、代表曲どっさりの大判振る舞いは嬉しい。

text by

●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル

記:2017/07/23

関連記事

>>ヴィレッジ・ヴァンガードの夜/ソニー・ロリンズ

>>ニュー・ソイル/ジャッキー・マクリーン

 - ジャズ ,