カフェモンマルトル

text:高野雲

*

至上の愛/ジョン・コルトレーン

      2017/05/20

Pocket

Love SupremeLove Supreme

邦題『至上の愛』。

コルトレーンの代表作の1枚。

コルトレーン以下、エルヴィン、マッコイ、ギャリソン4人による「黄金のカルテット」が理想的な形でまとまり、彼らが繰り出す非常に濃密な演奏は、この時期の彼らでしか生み出しえないサウンドとしてまとまっている。

LPでいえばB面に当たる演奏が、エキサイティングで密度が濃く、いつ聴いても、サウンドそのものの迫力に圧倒されてしまう。特に、エルヴィンのドラムが凄い。

というのが、私の純粋な「音・演奏」に対しての感想。

「承認」「決意」「追求」「賛美」。

これらのタイトルを見ただけで、引いてしまう人もいるかもしれない。
実際、私もそうだった。

『至上の愛』というアルバムは、トレーンの代表作らしいので、聴いておかなきゃと思ってはいたものの、タイトルと、おっかねぇ横顔(笑)のアルバムジャケットで腰が引けてしまい、長い間買うのをためらっていたものだ。

結局買ったのは、ニュージーランドのレコード屋さんで。

店頭で、当時の日本円に換算すると400円ぐらいの『至上の愛』を見つけて、ようやく固い財布の紐を緩めた。

トレーンのドスの効いた低い歌声で、腰が引ける人もいるかもしれない。

私も最初はビックリしたが、慣れるとどうってことはない。

♪ア・ラーヴ・サプリーム、ア・ラーヴ・サプリーム

いいメロディじゃないですか(笑)。

歌に入る前に、このフレーズを何度かテナーで低くリフレインするんだけど、これが来たときは、おっ、そろそろ出て来るぞ~、と期待感でうずうずしてしまうほどだ。

宗教がかっているので、ついていけないという人も多いが、はっきり言って私はコルトレーンがその時なにを想い、なにを考えこのアルバムをレコーディングしたのかは分からないし、あまり興味も無い(タイトルで大体の想像はつくが)。

そういったことを抜きにして、単にサウンドの格好良さ、エグさ、迫力だけでこのアルバムを楽しんでしまっている。

リアルタイムで当時の空気と共にコルトレーンを体験した人はともかく、彼の没後に生まれた私たちの世代は、そのような楽しみ方だってアリだと思うのだが、そんなこと言うと、熱心なコルトレーン・ファンには叱られてしまうのかな?

7月17日はコルトレーンの命日だ。

毎年、この日(時期)になると、コルトレーン特集を組むジャズ喫茶や、ショップなどが出てくる。

たとえば、奄美大島のCDショップ「サウンズパル」の「大コルトレーン祭」のような。

もしかしたら、マイルスの命日にもそのような催すところもあるとは思うが、私の知る限り、命日になると企画やイベントが催されるジャズマンは、コルトレーンぐらいなものだ。

パーカーもドルフィーもモンクもパウエルも、命日になると何かが催されるといったことは無い(少なくとも私の知っている範囲では)。

それだけ、日本人にとっても、コルトレーンは特別な存在だったし、今でもそうなのかな、と思う次第。

しかし、コルトレーンの宗教性や哲学性や精神性といった部分を知らなくても、今の「コルトレーンのことをよく知らない世代」は充分に楽しめる「かっこいい音楽」として位置づけられているようだ。

私のHPの掲示板の、あるCDショップの店主の書き込みを読むと、トランスやサイケの好きな20代前半に、『メディテーションズ』や『エクスプレッション』を聴かせると、「面白い」「カッコいい」という反応が返ってくるのだそうだ。

没後30数年経った今、トレーンの音楽に付着している、音楽以外の余剰物(宗教性、政治性など)無しに、純粋に彼の音楽を聴ける時代になってきているのかもしれない。

その「聴き方の姿勢」に関しては、良いことなのか悪いことなのか、人によって考えの違いはあるだろうが、私は単純に良いことだと思いたい。

だって、普通「政治がどうの、メッセージ性がどうの精神性がどうの」などと言ったり考えたりしながら音楽を聴いたりしますか?

少なくとも私はしない。

この『至上の愛』も、おお、エルヴィンのドラムはいつ聴いても凄いなぁ、とか、コルトレーンのソロがどんどん燃え上がってきているなぁ、とか、そういう単純な「音聴き」で楽しんでいる。

もし、余分な言葉の知識で、このアルバムに手を出すことをためらっている人がいたら、それは勿体無いことだと言いたい。

辛気臭い予備知識など取っ払って、思いっきり迫力のある演奏に浸って欲しいと思う。

album data

A LOVE SUPREME (Impulse)
- John Coltrane

Part 1 : Acknowledgiment
Part 2 : Resolution
Part 3 : Pursuance
Part 4 : Psalm

John Coltrane (ts,vo)
McCoy Tyner (p)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Johns (ds)

1964/12/09

記:2002/07/22

 - ジャズ , ,